1. はじめに:外国人介護人材が9万人を突破した今
近年、日本の介護業界では、外国人材の活躍が急速に広がっています。最新の統計によると、すでに約9万1,600人の外国人が介護現場で働いており、これは2008年に外国人受け入れが本格化してからわずか15年余りでの達成です。まさに「急増」と言える状況です。
特に、特別養護老人ホームなどの大規模施設では、外国人職員の割合が高まっており、中には職員の7割が外国人という施設も存在しています。現場では、インドネシアやベトナムなどアジア諸国出身のスタッフが、日本人職員と協力しながら入居者のケアに当たっています。彼らの真摯な姿勢や丁寧なケアは、多くの入居者やその家族からも信頼を得ています。
しかし、課題も見えてきています。外国人材を「確保」する段階では成功しているものの、「定着」や「戦力化」に至っていないケースも多く見受けられます。特に、日本語の壁や文化的ギャップ、生活面での不安などが要因となり、せっかく採用した人材が短期間で離職してしまうことも少なくありません。
https://news.yahoo.co.jp/articles/3d45897308700f9a8ea1a2be636beb94b053df9b
これからの介護業界にとって重要なのは、単に外国人材を「雇う」だけでなく、長期的に「育てて戦力化」する体制をいかに構築するかという視点です。本記事では、外国人介護人材の採用から定着までを成功に導くために必要な知識と、行政書士として私たちが支援できるポイントについて、詳しく解説していきます。
2. なぜ外国人材が必要なのか?〜2040年の介護職不足予測
日本の少子高齢化は、かつてないスピードで進んでいます。厚生労働省の推計によれば、2040年には要介護者数が現在の1.5倍に増加し、それに伴って介護職員も272万人必要になるとされています。
しかし、現在のペースで国内の人材を確保し続けても、そのうち57万人が不足する見込みです。これは単なる人手不足ではなく、社会保障制度そのものの根幹を揺るがす深刻な問題です。
介護職は、肉体的・精神的負担が大きい職種であり、国内の若年層には敬遠されがちです。そのため、これまで女性や高齢者の再雇用、ICTの導入などで対策が講じられてきましたが、限界が見えてきました。
こうした背景から、外国人材への期待が一層高まっているのです。特に東南アジア諸国では、人口が若く、介護分野に意欲的な人材が多く存在します。現地では日本の介護技術や制度に関心を持つ人も増えており、「日本で介護を学びたい」「技術を身につけてキャリアアップしたい」と考える志望者も少なくありません。
つまり、外国人材の活用は「穴埋め」ではなく、将来を見据えた戦略的な人材育成と位置づけるべきです。外国人介護人材の採用・定着は、今後の介護業界を支える大きな柱となるでしょう。
3. 外国人が介護業界で働く4つのルートとは
日本で外国人が介護職として働くには、以下の4つの在留資格ルートが存在します。
- 経済連携協定(EPA):インドネシア、フィリピン、ベトナムと結ばれた政府間協定に基づき、現地の看護学校卒業者を介護福祉士候補生として受け入れる制度。質の高い人材が多いが、各国ごとに年間受け入れ上限があり、人数が限られる。
- 介護福祉士養成施設の修了:日本国内の専門学校や大学などの養成施設で2年以上学び、卒業後に介護福祉士の資格を取得して働くルート。高い日本語能力と専門性が求められる。
- 技能実習制度:本来は「技能移転」を目的とした制度だが、介護分野にも拡大。就労期間に制限があり、転職や長期定着には向かないとの指摘も多い。
- 特定技能制度:2019年に導入された新しい在留資格。介護分野は「特定技能1号」に該当し、日本語と介護技術に関する試験に合格することで5年間の就労が可能。さらに介護福祉士の国家資格に合格すれば、永続的な就労や家族帯同も認められる。
この中でも、特定技能制度は現在最も注目されている制度です。試験は海外13か国でも実施されており、ミャンマーやネパール、タイ、ベトナムなどからの応募者が増加しています。受け入れ数に制限がないため、多くの企業がこの制度を活用しており、今後の主流となることは間違いありません。
それぞれの制度にはメリット・デメリットがあり、採用の目的や人材の定着意向によって選択すべきルートも異なります。その選定や手続きは非常に煩雑であり、行政書士のサポートが重要となる場面です。
4. 注目される「特定技能」と「介護」の在留資格
外国人介護人材が長期的に日本で活躍するためには、「特定技能1号」と「介護」という2つの在留資格を理解し、上手に活用することが不可欠です。この2つは、外国人が日本で安定的に働き、生活していく上での重要なステップとなります。
「特定技能1号」は、2019年に導入された新しい在留資格で、介護分野でも多くの人材がこの資格をもとに就労しています。取得には、日本語能力試験(N4以上)と介護技能評価試験への合格が必要です。これにより、最長5年間、日本の介護施設などでフルタイムの労働が可能になります。ただし、この在留資格はあくまで一時的なものであり、5年の期間終了後に帰国しなければならないという制約があります。
しかし、ここで注目すべきなのが「介護福祉士」へのキャリアアップです。特定技能1号の在留期間中に、国家資格である「介護福祉士」に合格することで、在留資格を「介護」に変更することが可能になります。この「介護」資格を取得すれば、就労期間に制限がなくなり、家族の帯同も認められるようになるのです。つまり、外国人にとっては日本で腰を据えて働き、生活の基盤を築くチャンスとなります。
企業側にとっても、これは大きなメリットです。一時的な労働力ではなく、育てた人材が長期的に定着し、職場の中核として活躍してくれる可能性があるからです。そのためには、ただ採用するだけでなく、「介護福祉士の資格取得までを見据えた支援」が必要です。
その支援とは、日本語教育、国家試験対策の講座提供、生活面でのサポートなど多岐にわたります。こうした取り組みによって、外国人材のモチベーションは高まり、職場に対する忠誠心や信頼感も深まります。結果として、離職率の低下やサービスの質向上にもつながるのです。
在留資格の変更手続きや制度運用においては、行政書士の役割も非常に重要です。複雑な申請書類の作成や手続きの代行など、法的な側面から企業の取り組みを強力にサポートします。介護人材の採用を「短期」から「長期戦略」に転換する際には、ぜひ専門家の支援を取り入れていただきたいと考えています。
5. 日本が選ばれなくなっている?競争激化するグローバル市場
外国人介護人材の受け入れは、日本だけでなく、アジアを中心に多くの国で進められています。特に台湾、香港、シンガポール、ドイツなども、質の高い介護人材を求めて積極的な取り組みを展開しており、いまやグローバルな人材獲得競争が激化しています。
実際に、国が実施した調査によると、インドネシアにおける就労希望先として「日本」を選ぶ人はわずか2.9%。一方で、台湾や香港を選んだ人はそれぞれ30%を超えており、日本の競争力が著しく低下している現実が明らかになっています。ベトナムでは日本を選ぶ人が約50%と高い水準を維持しているものの、他国では1割未満という国も多く、今後の傾向に不安が残ります。
なぜ、日本の魅力が薄れてきているのでしょうか?一因として挙げられるのは、賃金水準の低さと、在留資格制度の煩雑さです。他国と比べて手続きが複雑で、来日前・来日後のサポート体制にバラつきがあることも問題視されています。また、外国人が日本で働いた後もキャリアアップや永住への道筋が見えにくいと感じている点も大きな要因です。
これに対して、香港や台湾などは、待遇面の優位性に加え、英語や中国語という言語的な障壁の低さ、就労後のビザ更新の柔軟さなどが評価されており、多くの若者が安心して働ける環境を整えています。
では、日本がこの競争に勝つためには何が必要でしょうか?
それは、日本の「強み」を徹底的に磨き、発信していくことです。たとえば、介護技術の高さ、職場での丁寧な指導、生活支援の充実度など、日本ならではの良さを積極的に伝え、「日本で働く価値」を再定義していく必要があります。
さらに、海外現地との連携強化も重要です。送り出し機関や職業訓練校とのパートナーシップを通じて、就労前の教育・研修を日本と連携して行う仕組みを整えれば、日本への信頼と志望度を高めることができるでしょう。
今後、外国人材から「選ばれる国」としての日本の立場を取り戻すには、制度の見直しと共に、企業と行政が一体となった環境整備が急務です。
6. 外国人材が求める「日本の魅力」とは
前章で述べた通り、現在の日本は外国人材にとって必ずしも「第一選択肢」ではありません。しかしながら、日本の介護現場には、他国にはない大きな魅力が存在します。実際に来日した多くの外国人介護人材から、日本で働くことの「良さ」として挙げられるのは、次の3点です。
まず第一に、丁寧な技術指導です。日本の介護は、単に身体的なケアを行うだけでなく、利用者の尊厳を守る「心のケア」や、安全性を重視した専門的な技術が求められます。こうした考え方は、海外ではあまり一般的ではなく、日本独自の介護観として高く評価されています。新人職員へのOJT体制やマニュアルの整備、ケース会議など、学びの多い現場環境が外国人材の成長を後押ししています。
第二に、日本語教育の充実です。多くの受け入れ事業者では、就労前・就労後に日本語学習の機会を提供しており、施設内でも日本語サポートを行う体制が整えられています。特に「介護福祉士」を目指すには、日本語能力試験(N3以上)や国家試験に対応できる語学力が求められますが、その支援を手厚く行うことで、外国人材の安心感と意欲を高めることができます。
第三に、生活支援のきめ細かさです。住居の手配や生活用品のサポート、銀行口座の開設、病院の付き添い、日本でのマナーやルールの指導など、日常生活における丁寧なフォロー体制があることで、外国人材は安心して新しい生活をスタートできます。特に家族帯同が可能な場合、配偶者や子どもへの支援も求められるため、包括的な支援体制の構築が大切です。
これら3つの要素は、日本がグローバル人材市場で競争力を取り戻すための強みであり、積極的に発信・強化していくべき分野です。「選ばれる国」となるためには、給与や制度面だけでなく、「人として大切にされる職場環境」が重要であることを、外国人材は敏感に感じ取っています。
7. 採用で失敗しないための3つのポイント
外国人介護人材を受け入れるにあたり、企業が特に注意すべき点は「制度・語学・生活支援」の3本柱です。これらが欠けてしまうと、いくら採用活動がうまくいっても、定着せず早期離職につながる可能性が高まります。
1つ目は、制度理解と運用の正確さです。在留資格は一見すると似たものが多く、それぞれに要件や更新手続きのタイミング、対象職種などが細かく定められています。間違った申請や不備があると、最悪の場合は不許可や在留取り消しにつながるリスクがあります。そのため、法令や最新の制度変更を常に把握し、正確に対応できる体制が求められます。ここで行政書士の活用が非常に有効です。
2つ目は、語学支援体制の整備です。介護現場では、利用者との円滑なコミュニケーションが非常に重要です。言葉の壁があると、ミスや事故にもつながりかねません。N4レベルの日本語力で就労が可能な在留資格もありますが、実務ではN3以上の語彙力が求められる場面も多く、定期的な研修や外部講師の招致、日本語学校との提携が効果的です。
3つ目は、生活サポートです。外国人材は、仕事だけでなく生活そのものが未知の連続です。住まいの手配、地域とのつながりづくり、公共手続きの同行など、企業が生活面でも伴走することで、孤立を防ぎ、安心して働ける環境を提供できます。生活に不安があると、どれだけ良い職場であっても早期離職のリスクは高まります。
この3つの要素は、単なる福利厚生の一環ではなく、「外国人材を迎える覚悟」の表れとして位置づけられるべきです。中長期的な視点で体制を整備することで、採用の成功率は格段に高まります。
8. 定着・戦力化のカギは「技術指導」と「生活支援」
外国人介護人材の定着と戦力化を実現するには、働く環境と生活環境の両面でのサポートが不可欠です。特に重要なのは「技術指導」と「生活支援」の2本柱であり、この両輪がバランス良く機能してこそ、外国人材は安心して日本でキャリアを積んでいけます。
まず、技術指導においては、単に現場での実務を教えるだけでは不十分です。介護の理念や倫理、利用者への接し方、報告・連絡・相談の重要性など、基本となる価値観の共有が欠かせません。また、外国人材にとっては文化の違いから戸惑う場面も多く、丁寧な背景説明が重要です。マニュアルの翻訳や図解の活用、定期的なフォローアップ面談など、多様な工夫が求められます。
一方で、生活支援も定着には欠かせない要素です。住居の確保や引越しサポート、銀行口座や携帯電話の契約、行政手続きへの同行、日本語が通じない場面でのサポート体制など、業務外での支援も企業の責任として取り組む姿勢が問われます。特に配属後の数ヶ月は、生活の不安が離職に直結するリスクが高いため、寄り添い型のサポートが必要です。
また、外国人材の中には「日本で長く働き、介護福祉士を目指したい」という意欲を持つ人も多くいます。そのため、資格取得支援やキャリアアップの道筋を明確に提示することで、彼らのモチベーションを高め、職場に対する帰属意識を育むことができます。
このように、外国人材を単なる労働力と捉えるのではなく、「共に成長するパートナー」として育てていく姿勢が、介護事業者に求められています。制度を理解し、現場に即した具体的な支援策を講じることで、外国人材の力を最大限に引き出すことができるのです。
9. 介護事業者がいま検討すべき採用戦略と行政書士の役割
外国人介護人材の採用・定着を成功させるには、現場での受け入れ体制だけでなく、法的手続きや制度の理解といった“見えにくい部分”にも十分な準備が必要です。とくに在留資格の選定、ビザ申請、在留期間の管理や更新などには、専門的な知識と実務経験が求められます。
このような場面で強力なパートナーとなるのが、私たち行政書士です。外国人材の採用において、行政書士が果たせる役割は以下のように多岐にわたります。
- 在留資格の選定と取得サポート:技能実習、特定技能、介護福祉士など、どの資格が適しているのかを企業の実情に応じて判断し、的確なアドバイスを提供。
- 申請書類の整備と提出代行:ビザ申請に必要な書類の作成、翻訳、添付資料の確認を行い、煩雑な手続きを企業に代わって迅速かつ正確に対応。
- 受け入れ後のフォローアップ支援:就労中の在留資格更新、家族帯同の手続き、永住許可へのステップアップなど、継続的なサポート体制の構築。
介護現場の事業者様からは、「制度が複雑で何から始めていいかわからない」「過去に申請でトラブルがあった」「今後は計画的に外国人材を受け入れたい」といったご相談を多くいただきます。こうした悩みに対して、単なる“書類の代行”にとどまらず、採用計画段階から寄り添ったサポートを提供できるのが、行政書士の強みです。
ニセコビザ申請サポートセンターでは、これまで多数の事業者様と連携し、実務経験に基づいたアドバイスと確実な手続きをご提供してまいりました。外国人材の採用を単なる「人手不足解消策」としてではなく、「未来への投資」と捉える企業様には、私たちのような専門家の伴走支援が大きな力になると自負しています。
「外国人材の受け入れを検討しているが、制度に不安がある」「すでに採用しているが更新や変更手続きが不安」と感じている方は、ぜひ一度ご相談ください。初歩的なご質問からでも丁寧に対応いたします。
10. まとめ:外国人材を“雇う”から“育てる”へ
ここまで述べてきたように、介護業界における外国人材の受け入れは、もはや一時的な対策ではなく、構造的な人材不足に対処するための“本質的な戦略”となりつつあります。
採用のフェーズにおいては、特定技能制度や介護福祉士資格といった在留資格の仕組みを正しく理解し、適切に活用することが不可欠です。そして、受け入れ後の定着を図るには、技術指導、語学教育、生活支援という3つの柱をバランスよく提供することが求められます。
とくに、外国人材にとって日本は「働くだけの国」ではなく、「暮らす場所」でもあります。職場での教育体制だけでなく、生活面においても安心して過ごせる環境づくりが、長期的な雇用関係につながる最大のカギとなります。
介護の現場は、人と人との信頼によって成り立っています。外国人材であっても、その関係性の中で「必要とされている」と実感できることが、何よりも働くモチベーションにつながります。だからこそ、制度を“使う”だけでなく、人材を“育てる”という視点が重要なのです。
そしてそのスタートラインに立つためには、制度理解から手続き支援、育成計画のアドバイスまでを一貫してサポートできる専門家の力が不可欠です。ニセコビザ申請サポートセンターは、その役割を担うプロフェッショナルとして、介護事業者様のパートナーであり続けたいと考えています。
外国人介護人材の採用・育成に本気で取り組む事業者の皆様へ。当事務所は、制度の迷路を一緒に抜け、信頼と成長を重ねる道のりをサポートいたします。今こそ、“雇う”から“育てる”への転換を、共に実現していきましょう。
