■ はじめに

2026年3月6日、衆議院予算委員会において、小野田紀美外国人政策担当大臣が外国人留学生のアルバイト時間規制に関する重要な政策を発表しました。2027年(令和9年)から、マイナンバー制度を活用した所得情報に基づく厳格な審査体制が導入されることになります。

この政策は、在日外国人留学生の皆様、そして外国人留学生を雇用する企業の経営者・人事担当者の皆様にとって、非常に重要な転換点となります。本記事では、ビザ・在留資格申請を専門とする行政書士の視点から、この政策の背景、具体的な内容、そして今後の対応策について詳しく解説いたします。

■ 留学生の資格外活動とは?基本ルールのおさらい

資格外活動許可制度の概要

日本に留学している外国人は、原則として「留学」という在留資格で滞在しています。この在留資格は「本邦の大学、高等専門学校、高等学校等において教育を受ける活動」を目的としたものであり、就労活動は認められていません。

しかし、学費や生活費を補うため、一定の条件下でアルバイトを行うことが認められています。これが「資格外活動許可」制度です。

週28時間ルールの詳細

資格外活動許可を得た留学生は、以下の制限の下でアルバイトが可能です:

・原則として週28時間以内
・学則で定められた長期休業期間中(夏休み・冬休み等)は1日8時間以内
・風俗営業関連の業務は禁止

この「週28時間」という制限は、あくまで「学業を阻害しない範囲」という趣旨で設定されています。留学ビザの本来の目的は「教育を受けること」であり、就労はあくまで副次的なものという位置づけです。

■ 現状の課題:週28時間超過問題の実態

複数アルバイト先での掛け持ち問題

近年、外国人留学生の中には、複数のアルバイト先を掛け持ちして、合計で週28時間を大幅に超えて働いているケースが増加しています。

例えば:
・コンビニAで週15時間
・飲食店Bで週20時間
・合計35時間(7時間オーバー)

各アルバイト先では個別に28時間以内であっても、合算すると違反になってしまうケースです。従来の管理体制では、こうした複数事業所での就労実態を正確に把握することが困難でした。

なぜ超過してしまうのか?

留学生が週28時間を超えて働いてしまう背景には、いくつかの要因があります:

  1. 高額な学費負担:日本の大学や専門学校の学費は、外国人留学生にとって大きな負担です。
  2. 生活費の高騰:近年の物価上昇、特に食費や光熱費の値上がりは、留学生の生活を直撃しています。
  3. 円安の影響:母国への仕送りの実質的価値が目減りしています。
  4. ルールの認識不足:各アルバイト先での労働時間を合算しなければならないことを理解していない留学生もいます。
  5. 雇用側の管理不足:企業側も、留学生が他でどれだけ働いているかを把握していないケースがあります。

■ 小野田大臣の発表内容:2027年からの新制度

マイナンバー制度を活用した所得情報の照合

小野田紀美大臣は、予算委員会で以下のように述べました:

「令和9年からマイナンバーによる情報連携に基づいて留学生の所得情報を活用することで、資格外活動に係る厳格な調査および審査を行うこととしております」

これは、留学生のマイナンバーに紐づいた所得情報を出入国在留管理庁が参照できるようにし、複数のアルバイト先での収入を合算して、実際の労働時間を推計・確認する仕組みです。

教育機関との連携強化

新制度では、以下の取り組みも並行して実施されます:

・複数の勤務先で資格外活動を行っている留学生の実態把握
・教育機関(大学・専門学校等)と連携した指導の実施
・違反が疑われる留学生への個別調査

在留資格審査への反映

資格外活動違反が確認された場合、以下のような措置が取られる可能性があります:

・在留期間更新許可申請の不許可
・在留資格変更許可申請の不許可
・最悪の場合、在留資格の取消し

これらは留学生にとって非常に重大な結果をもたらします。

■ 企業が注意すべきポイント:外国人留学生雇用のコンプライアンス

雇用時の確認事項

外国人留学生をアルバイトとして雇用する際、企業は以下の点を必ず確認してください:

  1. 在留カードの確認
  • 在留資格が「留学」であること
  • 在留期限が有効であること
  • 裏面に「資格外活動許可」のスタンプがあること
  1. 他のアルバイト先の有無と労働時間
  • 他でアルバイトをしているか
  • 他のアルバイト先での週あたりの労働時間
  • 合計で週28時間を超えないかの確認
  1. シフト管理の徹底
  • 週単位での労働時間管理
  • 長期休業期間中の取り扱い確認

企業側のリスク

留学生の資格外活動違反を見過ごした場合、企業側にも以下のようなリスクがあります:

・不法就労助長罪(入管法73条の2)

  • 3年以下の懲役または300万円以下の罰金

・企業イメージの毀損
・今後の外国人雇用における審査への悪影響

推奨される対応策

  1. 雇用契約書に「他のアルバイト先での勤務状況を定期的に報告する義務」を明記
  2. 毎月または四半期ごとに、他のアルバイト先での勤務状況を確認
  3. 社内に外国人雇用管理の担当者を配置
  4. 定期的に行政書士等の専門家による研修を実施

■ 留学生が知っておくべきこと:在留資格を守るために

週28時間超過のリスク

週28時間を超えて働いてしまった場合、以下のようなリスクがあります:

  1. 在留期間更新不許可
    留学ビザの更新が認められず、帰国を余儀なくされる可能性があります。
  2. 就労ビザへの変更不許可
    卒業後に日本で働きたいと思っても、就労ビザへの変更が認められない可能性があります。
  3. 在留資格取消し
    悪質なケースでは、在留資格そのものが取り消されることもあります。

もし超過してしまった場合

すでに週28時間を超えて働いてしまっている場合は、以下の対応を推奨します:

  1. すぐに労働時間を調整する
    一部のアルバイト先でシフトを減らすか、辞める
  2. 専門家に相談する
    行政書士などのビザ専門家に相談し、今後の対応策を検討する
  3. 教育機関に相談する
    大学・専門学校の留学生担当部署に相談する

正しい働き方

留学生として日本で適切に生活するためには:

・複数のアルバイト先がある場合は、必ず合計時間を管理する
・週28時間に余裕を持たせる(例:週25時間までにする)
・長期休業期間中の上限(1日8時間)も守る
・定期的に労働時間を記録・確認する

■ 就労ビザへの切り替えを検討すべきケース

「働くこと」が主目的になっている場合

もし以下のような状況にあるなら、留学ビザから就労ビザへの切り替えを検討すべきです:

・学業よりもアルバイトに多くの時間を費やしている
・授業への出席率が低い
・卒業後も日本で働きたいと考えている
・実質的に「働くため」に日本に滞在している

就労可能な在留資格の種類

留学ビザから切り替え可能な主な就労ビザ:

  1. 技術・人文知識・国際業務
    大学等で学んだ知識を活かした業務(エンジニア、通訳、貿易業務等)
  2. 特定技能
    特定の産業分野での技能を持つ外国人向け(介護、飲食、製造等)
  3. 技能
    特殊な技能を要する業務(調理師、スポーツ指導者等)

■ 2027年以降の在留資格審査はどう変わるか

データに基づく客観的審査

これまでの在留資格審査は、申請書類や面接を中心に行われてきましたが、2027年以降は:

・マイナンバーに紐づいた所得情報
・複数の雇用先からの源泉徴収データ
・実際の労働時間の推計

といった客観的データに基づいた審査が行われるようになります。

「バレないだろう」は通用しない

従来は、複数のアルバイト先を掛け持ちしていても、各事業所が個別に管理していたため、合算での超過が見つかりにくい状況がありました。

しかし、マイナンバー制度を活用した新しい管理体制では、所得情報が一元的に把握されるため、「バレないだろう」という考えは完全に通用しなくなります。

早めの対応が重要

2027年の制度開始までに、以下の対応を進めることが重要です:

・現在の労働時間が適正かどうかの確認
・超過している場合は早急に是正
・就労ビザへの切り替えが必要な場合は計画的に準備

■ 行政書士ができるサポート

ビザ・在留資格申請を専門とするニセコビザ申請サポートセンターは、行政書士として、以下のようなサポートを提供しています:

在留資格に関する相談
・現在の在留状況の確認
・資格外活動の適正性チェック
・今後の在留計画のアドバイス

在留期間更新・変更申請のサポート
・必要書類の準備支援
・申請書類の作成代行
・出入国在留管理局への申請代行

就労ビザへの切り替え支援
・就労可能な在留資格の選定
・雇用先企業との調整
・申請書類の作成と申請代行

企業向けコンサルティング
・外国人雇用のコンプライアンス研修
・雇用管理体制の構築支援
・トラブル発生時の対応支援

■ まとめ:ルールを守ることが未来を守る

2027年から実施される留学生の資格外活動に関する厳格化は、決して留学生を排除するためのものではありません。

この制度の目的は:
・「学びに来ている人」と「働きに来ている人」を適切に区別すること
・留学ビザ本来の趣旨(教育)を守ること
・適切な在留資格で日本に滞在してもらうこと

にあります。

留学生の皆様にとって、日本での生活は経済的にも精神的にも大変なことが多いと思います。しかし、在留資格のルールを守ることが、結果的に皆様の将来のキャリアと日本での生活を守ることにつながります。

企業の皆様も、外国人留学生を貴重な人材として雇用される際には、適切な管理体制を整え、コンプライアンスを徹底していただくことが重要です。

もし不安なことやご不明な点がございましたら、ビザ・在留資格の専門家である当事務所に、お気軽にご相談ください。皆様が安心して日本で学び、働くことができるよう、全力でサポートいたします。

参考記事: https://news.yahoo.co.jp/articles/d2198bdefd72c8b3b263cd0a4ba01d35fa9f91ae