はじめに:介護分野の在留資格制度に重要な変更

2026年1月21日、厚生労働省が介護分野で働く特定技能1号外国人の在留期間延長に関する重要な条件を発表しました。これは、介護施設で外国人材を雇用する企業、そして日本で介護職として働く外国人の皆さんにとって、キャリア形成に直結する極めて重要な制度変更です。

私は行政書士として、介護分野を含む多くの外国人材の在留資格申請をサポートしてきました。その経験から言えるのは、「在留期間の延長」は単なる手続きではなく、外国人材の人生設計そのものに関わる重大事項だということです。

この記事では、今回発表された延長条件の詳細、背景にある制度の仕組み、そして施設・外国人材それぞれが取るべき具体的なアクションについて、専門家の視点から徹底解説します。

特定技能1号とは?介護分野における位置づけ

特定技能制度の基本

特定技能制度は、2019年4月に創設された在留資格です。人材不足が深刻な分野(介護、ビルクリーニング、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、自動車運送業、鉄道など)で外国人材を受け入れることができます。

特定技能1号の特徴

  • 在留期間:通算で最長5年
  • 家族の帯同:原則不可
  • 技能水準:各分野の試験に合格、または技能実習2号を修了
  • 日本語能力:日本語能力試験N4レベル以上

特定技能2号の特徴

  • 在留期間:上限なし(3年ごとの更新)
  • 家族の帯同:配偶者・子の帯同が可能
  • 技能水準:より高度な試験に合格
  • 対象分野:建設、造船・舶用工業など限定的

介護分野の特殊性:特定技能2号が存在しない

ここで重要なのは、介護分野には特定技能2号が設定されていないという点です。

その理由は、介護分野には既に「介護」という在留資格が存在するためです。介護福祉士の国家資格を取得すれば、在留資格「介護」に変更でき、在留期間の上限がなくなります。

つまり、介護分野で働く外国人のキャリアパスは以下のようになります:

パターン1:技能実習からのルート
技能実習1号(1年)→ 技能実習2号(2年)→ 技能実習3号(2年)→ 特定技能1号(5年)→ 介護福祉士資格取得 → 在留資格「介護」(期限なし)

パターン2:特定技能から直接のルート
特定技能1号(5年)→ 介護福祉士資格取得 → 在留資格「介護」(期限なし)

2025年9月の制度変更:他分野との整合性の問題

特定技能2号試験不合格でも6年まで延長可能に

2025年9月、出入国在留管理庁は重要な運用変更を発表しました。特定技能2号の試験に不合格になった場合でも、一定の要件を満たせば通算在留期間を6年まで認めるという内容です。

この変更の背景には、以下のような事情があります:

  • 特定技能2号試験の難易度が高い
  • 5年で必ず合格できるとは限らない
  • 優秀な人材を失うことは企業・日本経済にとって損失
  • もう1年のチャンスを与えることで人材の定着を図る

介護分野の課題:特定技能2号がないのに不公平?

他の分野では6年目のチャンスが与えられるのに、介護分野は5年で打ち切りでは不公平です。また、介護現場の人材不足は他分野以上に深刻であり、優秀な外国人材を5年で手放すことは大きな損失です。

そこで厚生労働省は、介護分野独自の6年目延長条件を設定することになったのです。

6年目延長の具体的条件:詳細解説

外国人本人に求められる条件

厚生労働省が1月21日の社会・援護局長通知で示した条件は以下の通りです。

1. 介護福祉士国家試験の全パート受験
通算在留期間の最終年度(5年目)に、介護福祉士国家試験を全パート受験しなければなりません。

介護福祉士国家試験は以下の4パートで構成されています:

  • 人間と社会(16問)
  • こころとからだのしくみ(40問)
  • 医療的ケア(5問)
  • 総合問題(12問)
    合計:125問(試験時間:220分)

全パートを受験することが条件なので、一部だけ受験して欠席することは認められません。

2. 1パート以上で合格
4パート中、少なくとも1パートで合格点を取る必要があります。

2026年度の介護福祉士国家試験から、「パート合格制度」が導入されました。これは全体では不合格でも、個別パートで一定の点数を取れば「パート合格」として認定され、次年度はそのパートが免除される制度です。

6年目延長の条件として、この「パート合格」を少なくとも1つ取得することが求められます。

3. 合格基準点の8割以上を取得
総得点に対する合格基準点の8割以上の得点を取らなければなりません。

例えば、合格基準点が75点(125点満点)だった場合、その8割は60点です。つまり、全体で60点以上取る必要があります。

これは「ある程度の実力がある」ことを証明するための基準です。1パート合格していても、全体の点数があまりにも低ければ延長は認められません。

4. 誓約事項
以下の内容を誓約する必要があります:

  • 6年目に介護福祉士国家試験に合格した場合、在留資格「介護」への変更申請を行う
  • 不合格の場合は速やかに帰国する

この誓約は、6年目が「最後のチャンス」であることを明確にするためのものです。

受け入れ施設に求められる対応

外国人材を雇用する介護施設にも、具体的な義務が課せられます。

1. 学習計画の作成
翌年度(6年目)の国家試験合格を目指すための具体的な学習計画を作成しなければなりません。

学習計画には以下のような内容を含める必要があります:

  • 学習スケジュール(週何時間、いつ勉強するか)
  • 使用する教材
  • 指導担当者
  • 模擬試験の実施計画
  • 日本語能力向上のための取り組み
  • 進捗確認の方法

2. 厚生労働省への書類提出
以下の書類を厚労省に提出する必要があります:

  • 確認依頼書
  • 学習計画書

厚労省は提出された書類の様式も提示しており、形式的な対応では不十分であることを示しています。

3. 学習支援の実施
計画を作るだけでなく、実際に支援を実施する責任があります。

  • 勤務時間内に学習時間を確保する
  • 外部の試験対策講座の費用を負担する
  • 日本人職員による指導体制を整える
  • 模擬試験の受験機会を提供する

介護福祉士国家試験:合格への道筋

試験の難易度と合格率

介護福祉士国家試験は決して容易な試験ではありません。

近年の合格率

  • 2023年:84.3%
  • 2024年:82.8%
  • 2025年:83.1%(予想)

一見高い合格率に見えますが、これは養成施設卒業生や実務経験者など、しっかり準備した人が受験しているためです。

外国人受験者の合格率は公表されていませんが、一般的には日本人よりも低いと言われています。主な理由は:

  • 日本語の専門用語の理解
  • 問題文の読解力
  • 文化的背景の違い

外国人が直面する課題

1. 日本語の壁
介護福祉士試験は、高度な日本語能力を要求します。

難しい専門用語の例:

  • 褥瘡(じょくそう)
  • 誤嚥(ごえん)
  • 拘縮(こうしゅく)
  • 失禁(しっきん)

これらの言葉は日常会話では使わず、漢字も複雑です。

2. 法律・制度の理解
日本の社会保障制度、介護保険制度などの知識が必要です。

  • 介護保険法
  • 障害者総合支援法
  • 高齢者虐待防止法

これらは外国人にとって、母国にない制度であることが多く、理解が難しいです。

3. 文化的背景
日本独特の介護文化や価値観を理解する必要があります。

  • 高齢者への敬意の示し方
  • プライバシーの考え方
  • 家族関係の捉え方

合格のための具体的な対策

1. 日本語能力の向上
N2〜N1レベルの日本語能力が理想的です。

取り組むべきこと:

  • 毎日30分以上の読解練習
  • 介護専門用語の暗記(フラッシュカード活用)
  • 日本人との会話機会を増やす
  • ニュースや新聞を読む習慣

2. 計画的な学習
最低でも6ヶ月前から準備を開始すべきです。

学習スケジュール例:

  • 6ヶ月前〜:基礎知識の習得
  • 3ヶ月前〜:過去問演習
  • 1ヶ月前〜:模擬試験と弱点克服

3. 外部リソースの活用

  • 外国人向け試験対策講座
  • オンライン学習教材
  • 過去問題集(日本語・母国語対訳版)
  • スタディグループへの参加

4. 施設のサポート

  • 先輩介護福祉士による指導
  • 勉強会の開催
  • 学習時間の確保
  • 費用補助

受け入れ施設が取るべき戦略的アプローチ

なぜ施設が本気で支援すべきなのか?

1. 人材確保のコスト削減
新たに外国人材を採用する場合、以下のコストがかかります:

  • 募集費用:50〜100万円
  • 受け入れ準備費用:20〜50万円
  • 教育訓練費用:30〜50万円
  • 在留資格申請費用:10〜30万円

合計:110〜230万円

一方、既存の職員を6年目まで雇用し、介護福祉士資格を取得させる支援費用は:

  • 試験対策講座:10〜30万円
  • 教材費:3〜5万円
  • 学習時間の人件費:20〜40万円

合計:33〜75万円

コスト面でも、既存職員の支援の方が圧倒的に有利です。

2. 即戦力の維持
5年間働いた職員は、すでに施設の業務に精通しています。

  • 利用者との信頼関係ができている
  • 業務フローを理解している
  • 他の職員との連携が取れている

新しい職員を一から育てるよりも、既存職員を維持する方が効率的です。

3. 職場の士気向上
「施設が自分たちのキャリアを真剣に考えてくれている」と感じれば、外国人職員だけでなく日本人職員のモチベーションも上がります。

具体的な支援プログラムの構築

Step 1: 現状把握

  • 現在雇用している特定技能1号外国人の人数と在留期限を確認
  • 各人の日本語能力と専門知識のレベルを評価
  • 学習意欲と将来のキャリア希望を聞き取り

Step 2: 個別学習計画の作成

  • 本人の現状と目標に基づいた計画
  • 無理のないスケジュール
  • 定期的な進捗確認の仕組み

Step 3: 学習環境の整備

  • 施設内に学習スペースを確保
  • 参考書・問題集の提供
  • eラーニングシステムの導入

Step 4: 指導体制の確立

  • 介護福祉士資格を持つ日本人職員を指導担当に任命
  • 週1回の勉強会開催
  • 月1回の模擬試験実施

Step 5: 外部資源の活用

  • 外国人向け試験対策講座への参加
  • 行政書士などの専門家との連携
  • 地域の国際交流協会との協力

学習計画書の作成ポイント

厚労省に提出する学習計画書は、形式的なものではいけません。実効性のある計画を作成しましょう。

記載すべき項目

  1. 学習目標
  • 6年目の試験で全パート合格を目指す
  • 各パートの目標点数
  1. 現状分析
  • 現在の日本語能力(JLPT級)
  • 模擬試験の結果
  • 苦手分野の特定
  1. 学習スケジュール
  • 週あたりの学習時間
  • 各月の学習内容
  • マイルストーン設定
  1. 使用教材
  • テキスト名
  • 問題集
  • オンライン教材
  1. 指導体制
  • 指導担当者名と資格
  • 指導方法と頻度
  1. 評価方法
  • 月次模擬試験
  • 進捗レポート
  • 面談による確認
  1. サポート体制
  • 勤務シフトの配慮
  • 費用補助
  • 相談窓口

在留資格「介護」への変更:最終ゴール

在留資格「介護」のメリット

介護福祉士国家試験に合格し、在留資格「介護」を取得すれば、以下のメリットがあります。

1. 在留期間の上限がなくなる
特定技能1号は最長6年ですが、在留資格「介護」は3年または5年ごとの更新で、理論上は永続的に日本で働けます。

2. 家族の帯同が可能
配偶者と子どもを日本に呼び寄せることができます(在留資格「家族滞在」)。

3. 転職の自由度が高い
特定技能1号は分野と雇用主が限定されますが、在留資格「介護」は介護福祉士資格を活かせる職場であれば自由に転職できます。

4. 永住権申請の道
在留資格「介護」で10年以上日本に滞在すれば、永住権の申請要件を満たします。

5. 社会的信用度の向上
住宅ローンやクレジットカードの審査が通りやすくなります。

在留資格変更申請の手続き

介護福祉士国家試験に合格したら、速やかに在留資格変更申請を行います。

必要書類

  • 在留資格変更許可申請書
  • 写真(4cm×3cm)
  • パスポートと在留カード
  • 介護福祉士登録証の写し
  • 雇用契約書
  • 勤務先の会社概要資料
  • 住民税の課税証明書・納税証明書

審査期間
通常1〜3ヶ月

注意点

  • 試験合格後、速やかに介護福祉士登録を行う
  • 在留期限の3ヶ月前には申請する
  • 必要書類は漏れなく準備する

この手続きは専門的な知識が必要なため、行政書士などの専門家に依頼することをお勧めします。

外国人材へのメッセージ:6年目は「最後のチャンス」

5年目の試験が極めて重要

特定技能1号で働く皆さんにとって、5年目の介護福祉士国家試験は人生の分岐点です。

合格した場合
→ 在留資格「介護」に変更
→ 日本で長く働ける
→ 家族を呼び寄せられる
→ 安定した生活

1パート以上合格+基準点の8割以上の場合
→ 6年目のチャンスがもらえる
→ もう1年準備できる
→ 翌年の試験で全パート合格を目指す

上記の条件を満たせない場合
→ 在留期間延長不可
→ 5年で帰国

この現実を直視し、真剣に試験対策に取り組んでください。

今すぐ始めるべきこと

1. 日本語能力を高める
日本語能力試験N2レベル以上を目指しましょう。

  • 毎日30分の読解練習
  • 専門用語の暗記
  • 日本人との会話

2. 早めに試験対策を始める
最低でも試験の6ヶ月前から本格的な勉強を開始してください。

  • 過去問を解く
  • 苦手分野を特定
  • 計画的な学習

3. 施設のサポートを活用
勤務先が提供する学習支援を積極的に活用しましょう。

  • 勉強会への参加
  • 指導担当者への質問
  • 学習時間の確保

4. 仲間と協力する
同じ立場の外国人仲間とスタディグループを作りましょう。

  • 情報交換
  • お互いに教え合う
  • モチベーション維持

5. 専門家に相談する
在留資格の手続きや将来のキャリアについて、行政書士などの専門家に相談してください。

  • 在留資格変更の準備
  • 学習計画のアドバイス
  • 不安や疑問の解消

諦めないことが大切

介護福祉士試験は難しいですが、合格は十分可能です。

多くの外国人が合格しています。彼らも最初は日本語が苦手でしたが、努力を重ねて資格を取得しました。

成功した人の共通点

  • 早めに準備を始めた
  • コツコツと継続した
  • 周囲のサポートを活用した
  • 諦めずに挑戦し続けた

皆さんも必ず合格できます。信じて努力を続けてください。

行政書士ができるサポート

在留資格の専門家として

私たちニセコビザ申請サポートセンターは、外国人の在留資格に関する専門家です。今回の制度変更への対応も含め、以下のようなサポートを提供しています。

施設向けサポート

  • 制度変更の説明と対応アドバイス
  • 学習計画書の作成支援
  • 厚労省への提出書類チェック
  • 在留資格手続きの代行
  • 外国人雇用に関するコンサルティング

外国人材向けサポート

  • 在留資格の更新手続き
  • 在留資格変更申請(特定技能→介護)
  • キャリアプランの相談
  • 家族の呼び寄せ手続き
  • 生活相談

共通サポート

  • 最新制度情報の提供
  • トラブル発生時の対応
  • 関係機関との調整
  • 多言語対応

早めの相談が成功の鍵

在留資格の手続きは、タイミングが非常に重要です。

  • 在留期限ギリギリでは間に合わない可能性
  • 準備期間が必要
  • 書類の不備があると再提出

5年目を迎える前、できれば4年目のうちに一度相談されることをお勧めします。

まとめ:計画的な準備が成功への道

今回の制度変更のポイント再確認

外国人本人
✓ 5年目に介護福祉士国家試験を全パート受験
✓ 1パート以上合格
✓ 合格基準点の8割以上取得
✓ 合格したら在留資格「介護」へ変更、不合格なら帰国を誓約

受け入れ施設
✓ 具体的な学習計画を作成
✓ 厚労省に確認依頼書と学習計画を提出
✓ 実効性のある学習支援を実施

6年目は「最後のチャンス」

この制度は、真剣に介護福祉士資格取得を目指す外国人材と施設にとって、貴重な機会です。

しかし、形式的な対応では意味がありません。本気で合格を目指す覚悟と、それを支える施設の本気の支援が必要です。

介護現場の未来のために

日本の介護現場は深刻な人材不足に直面しています。外国人材の活躍なくして、この危機を乗り越えることはできません。

優秀な外国人材が日本で長く働き続けられる環境を整えることは、利用者、施設、外国人本人、そして日本社会全体にとってプラスになります。

今回の制度変更を機に、介護分野における外国人材のキャリア形成支援を、より一層充実させていきましょう。

私たちと一緒に

ニセコビザ申請サポートセンターは、介護分野の外国人雇用を専門的にサポートしています。

  • 在留資格の申請・更新
  • 制度変更への対応
  • 学習計画作成支援
  • 介護福祉士資格取得後の手続き
  • 外国人雇用全般のコンサルティング

どんな小さなことでも構いません。お気軽にご相談ください。

外国人材が安心して働き、施設が安定した人材を確保できる。そんな環境作りを、私たちと一緒に進めていきましょう。

ニュース元:https://news.yahoo.co.jp/articles/9901f4d6b68d413066794a2e8f0c7142cc70d4ad

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