目次
  1. はじめに:外国人材が地方から東京へ移動する現実
  2. 1. 外国人材の東京圏集中はなぜ起きているのか?
    1. 1-1. 統計が示す「過去最大の転入超過」
    2. 1-2. 特定技能制度の影響
    3. 1-3. 2027年「育成就労制度」で何が変わるのか?
  3. 2. 地方で外国人材が「なくてはならない存在」になっている現場
    1. 2-1. 広島の介護施設:中核人材として活躍する外国人職員
    2. 2-2. 施設の取り組み:給与以外の「働きやすさ」で勝負
    3. 2-3. 転職は止めない―「どこでも通用する人材」に育てる
  4. 3. 山梨県の先駆的な取り組み:医療保険補助制度
    1. 3-1. 外国人労働者の「家族」を支援する発想
    2. 3-2. 課題:制度の普及と公平性
  5. 4. 外国人材の定着に必要な「異文化理解」とは?
    1. 4-1. 宗教・食事・服装への配慮
    2. 4-2. 採用前の丁寧なすり合わせが離職防止のカギ
  6. 5. 在留資格の選択が「定着率」を左右する
    1. 5-1. 技能実習・特定技能・専門資格―何が違う?
    2. 5-2. 家族帯同が「定着の決め手」になる
    3. 5-3. 行政書士の役割:最適な在留資格の設計
  7. 6. 世界的な課題:外国人材の都市集中
    1. 6-1. 日本だけではない現象
    2. 6-2. 日本における是正策の必要性
  8. 7. 地方企業がとるべき戦略:賃金以外の「選ばれる理由」を作る
    1. 7-1. 給与だけでは勝負できない現実
    2. 7-2. 「働きやすさ」「成長機会」「地域のつながり」で差別化
    3. 7-3. 在留資格の設計も戦略の一部
  9. 8. 在日外国人の皆さんへ:自分らしく働ける場所を見つけるために
    1. 8-1. 給与だけで職場を選ばない
    2. 8-2. 地方で働くメリット
    3. 8-3. 在留資格の選択で人生が変わる
  10. 9. 企業の人事担当者・経営者の皆さんへ
    1. 9-1. 外国人材は「一時的な労働力」ではない
    2. 9-2. 採用前の丁寧なすり合わせが重要
    3. 9-3. 在留資格の設計を戦略的に
  11. 10. まとめ:外国人材と「共生」する未来へ

はじめに:外国人材が地方から東京へ移動する現実

2024年、東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)に転入した外国人が、転出者を1万6千人以上も上回りました。この数字は過去最大であり、地方から都市部への外国人材の流出が加速していることを示しています。

背景にあるのは、東京と地方の「賃金格差」です。特に若い世代の外国人材は、SNSを通じて情報交換し、より高い給与や充実した生活環境を求めて東京圏へ移動しています。

そして2027年、これまで転職制限の厳しかった「技能実習制度」が廃止され、本人の意向で職場変更がしやすい「育成就労制度」へと移行します。この制度変更により、外国人材の流動性はさらに高まることが予想されます。

人手不足が深刻な地方では、外国人材が「なくてはならない存在」となっています。しかし、いかに定着してもらうかが大きな課題です。

本記事では、Yahoo!ニュースで報じられた外国人材の地域間移動の実態と、地方企業・施設が取り組む定着戦略を、行政書士・ビザ申請の専門家の視点から詳しく解説します。


1. 外国人材の東京圏集中はなぜ起きているのか?

1-1. 統計が示す「過去最大の転入超過」

総務省の「人口移動報告」によると、2024年の東京圏への外国人転入超過数は、新型コロナウイルス禍だった2021年の13倍超に達しました。

都道府県別にみると、転入超過数の最多は東京の8,722人。次いで埼玉7,720人、神奈川7,494人と、東京圏が上位を独占しています。

一方、群馬1,816人、栃木943人、山梨576人と、地方でも転入超過の地域はありますが、その多くは東京圏に隣接する県です。

1-2. 特定技能制度の影響

国立社会保障・人口問題研究所の是川夕国際関係部長は、「年齢的にも働き手となる若者が、地方から都市部へ賃金を理由に移っている。人手不足の中、即戦力人材で転職が認められる特定技能制度での受け入れが増えていることが大きな要因だ」と指摘しています。

特定技能制度は2019年に創設され、農業や建設など16の産業分野を対象に最長5年働ける1号と、熟練技能を要し事実上永住も可能な2号があります。

特に1号は家族の帯同が認められず単身のため、身軽に移動できるという特徴があります。SNSを通じて横のつながりができると、親戚や友達、交際相手を頼って都市部へ移るケースが多いのです。

1-3. 2027年「育成就労制度」で何が変わるのか?

2027年には、これまでの技能実習制度に代わり、「育成就労制度」がスタートします。

技能実習制度では、原則として転職が認められておらず、外国人材は同じ職場で働き続けることが求められていました。しかし、育成就労制度では本人の意向による転職がより柔軟に認められるようになります。

この制度変更により、外国人材は自らのキャリアや生活環境を考慮し、より自由に職場を選べるようになります。つまり、賃金や待遇の良い都市部への移動が、さらに加速する可能性が高いのです。


2. 地方で外国人材が「なくてはならない存在」になっている現場

2-1. 広島の介護施設:中核人材として活躍する外国人職員

Yahoo!ニュースで紹介された広島県呉市の介護老人保健施設「パナケイア」では、外国人職員が職場の中核として活躍しています。

中国人の呉玲さん(40歳)は、2019年に技能実習生として来日し、いったん帰国後、特定技能制度で再来日。2025年に介護福祉士の国家試験に合格し、在留資格が変わって家族の帯同が認められました。

呉さんは中国に残してきた高校生と小学生の子ども2人を呼び寄せ、広島で再び一緒に暮らし始めました。

「給料はもうちょっと上がったらいいけど、ここはみんな優しいのが一番。教育や文化は中国と違うけど、子どもは広い世界の考えを学べる」

都市部に比べて生活費が抑えられ、のびのびと子育てできる地方暮らしに魅力を感じているといいます。

また、ベトナム人のチャン・ティ・ホアン・アンさん(29歳)も、当初は留学生として2018年に来日。介護福祉士に加え、2025年には准看護師の資格にも合格し、食事や排せつ、入浴などの介助に加えて医療行為にも仕事の幅を広げています。

広島弁を上手に操り、職場の上司も「努力して一目置かれている」と評価。夜間は日本人職員とペアとなって、先輩格の職員として働いています。

2-2. 施設の取り組み:給与以外の「働きやすさ」で勝負

この施設を運営する医療法人社団「和恒会」では、2025年10月時点で職員約410人のうち25人が外国人職員です。

給与では東京圏と競うのは難しいと認識しつつ、以下のような取り組みで外国人材の定着を図っています。

  • 資格手当を出して取得を促す:介護福祉士や准看護師など、専門資格の取得を支援し、取得後は手当を支給。
  • 寮を整備する:住環境を整え、安心して暮らせる基盤を提供。
  • 休暇を取りやすくする:柔軟な勤務体制により、ワークライフバランスを重視。
  • 異文化への理解を深める:宗教や食事、生活習慣の違いに配慮。

和恒会の石川英俊外国人介護人材部長は、「一生懸命仕事をしてくれる外国人は、将来的には指導者にもなる」と期待を寄せています。

2-3. 転職は止めない―「どこでも通用する人材」に育てる

過去には、外国人職員が東京圏に転職したケースも複数ありました。石川部長は、母国に多くの仕送りをしたいと思えば短期間でもより賃金の高い職場を求めたり、首都圏での生活を楽しみたいと考えたりするのは自然だと理解を示します。

それでも本人の事情は尊重したいとして、「転職先で『こんなことも教えてもらってないの?』と言われないよう、どこでも通用するようにしたい」と話します。

この姿勢こそが、長期的に外国人材から信頼され、結果的に定着率を高めることにつながっていると言えるでしょう。


3. 山梨県の先駆的な取り組み:医療保険補助制度

3-1. 外国人労働者の「家族」を支援する発想

東京や神奈川に隣接し、外国人材の流出を懸念する山梨県は、2024年に先駆的な施策を打ち出しました。

それが、ベトナム人労働者の家族が母国で医療を受けるための保険料を、勤務先を通じて補助する制度です。

甲府ビルサービスで働く技能実習生のチャン・マイさん(29歳)は、「体調の気になるお母さんの世話を直接できないので保険に加入した。保障は充実していて喜んでくれた」と歓迎しています。

同社の坂本哲司会長は、「仕事はまじめで積極的に取り組む。いなくなれば仕事が回らない」と外国人従業員を頼りにしており、人材定着にプラスになると判断して制度を利用しました。

3-2. 課題:制度の普及と公平性

ただし、県内のベトナム人労働者3,624人のうち、2024年度の利用はわずか4人にとどまっています。

坂本会長は、「制度が広がらないのは、企業によってはお金をかけずに安い労働力として使うだけでいいという考えもある。地元の経営者に制度の理解をしてもらう活動が必要だ」と指摘します。

また、山梨県はベトナム人以外の外国人との公平性から利用しにくいとの意見が企業にあるとし、対象外国人の拡大を検討課題としています。

それでも担当者は、「自治体が外国人を雇用する企業を応援していることが伝わった」と意義を強調しています。


4. 外国人材の定着に必要な「異文化理解」とは?

4-1. 宗教・食事・服装への配慮

外国人がいる職場では、文化や宗教が異なるため、日本人では起きないようなトラブルが時々起こりえます。

イスラム教の豚肉など、タブーとされる食材の取り扱いがその代表例です。ラマダン(断食月)などの宗教行事や、女性が頭に巻くヒジャブ(スカーフ)といった服装にも配慮が求められます。

外国人材を紹介する「ジンザイベース」の中村大介代表取締役は、「イスラム教徒が禁忌とする豚肉や酒の対応には個人差がある。採用前に宗教面での意思確認が不十分だと『聞いた話と違う』と離職につながりかねない。受け入れ側が異なる文化への理解を深め、リスク要因について互いに確認することが大事だ」と話します。

4-2. 採用前の丁寧なすり合わせが離職防止のカギ

広島県内で介護分野の外国人受け入れを支援する広島県外国人介護人材協議会の坂本尚己会長も、求める外国人材の人数だけでなく、国籍や性別、宗教など人材像の明確化が離職防止につながるとしています。

「海外にも一度は足を運んだりして、日本人の採用とは異なる努力をしないといけない」

こうした丁寧な取り組みが、長期的な信頼関係を築き、定着率向上につながるのです。


5. 在留資格の選択が「定着率」を左右する

5-1. 技能実習・特定技能・専門資格―何が違う?

外国人材の在留資格には、いくつかの種類があり、それぞれ滞在期間や家族帯同の可否が異なります。

  • 技能実習:原則転職不可。家族帯同不可。最長5年。
  • 特定技能1号:転職可能(同一分野内)。家族帯同不可。最長5年。
  • 特定技能2号:転職可能。家族帯同可能。更新回数制限なし(事実上の永住可能)。
  • 介護(在留資格):介護福祉士資格を持つ者。家族帯同可能。更新回数制限なし。

5-2. 家族帯同が「定着の決め手」になる

呉玲さんのように、介護福祉士の資格を取得して在留資格が変わることで、家族の帯同が認められるケースがあります。

家族と一緒に暮らせるようになると、「この街で生活基盤を築こう」という意識が強まり、定着率が大きく向上します。

逆に、技能実習や特定技能1号のように家族帯同が認められない場合、単身で働き続けることへの精神的負担が大きく、より良い条件の職場や、家族と暮らせる母国への帰国を選択する傾向が強まります。

5-3. 行政書士の役割:最適な在留資格の設計

私たち行政書士は、企業と外国人材の双方にとって最適な在留資格を提案し、ビザ申請や在留資格変更の手続きをサポートします。

例えば:

  • 技能実習から特定技能への切り替え
  • 介護福祉士取得後の在留資格「介護」への変更
  • 家族の呼び寄せ(家族滞在ビザ)の手続き
  • 特定技能2号への移行支援

在留資格の選択と手続きは、外国人材の定着戦略において極めて重要な要素です。


6. 世界的な課題:外国人材の都市集中

6-1. 日本だけではない現象

明治大の山脇啓造教授(多文化共生論)は、カナダやオーストラリア、韓国でも外国人が都市部に集中しているとして、「各国が頭を悩ます世界的な現象だ」と説明します。

一部の国では、農村部で働く場合に滞在期間を延長するなど、政策的に誘導しているケースもあります。

6-2. 日本における是正策の必要性

山脇教授は、「外国人の東京圏集中は仕事や進学が主な理由で、集中は日本人以上に進んでいる。東京圏は企業や大学、日本語学校が集中しており、国の是正策がない限り今後も続くとみられる」と指摘します。

そのうえで、「定着を促すためには生活環境の改善や外国人コミュニティーへの支援が有効になるだろう」と提言しています。


7. 地方企業がとるべき戦略:賃金以外の「選ばれる理由」を作る

7-1. 給与だけでは勝負できない現実

地方企業が東京圏の企業と給与面で競うのは、現実的に困難です。

しかし、外国人材が職場を選ぶ基準は給与だけではありません。

7-2. 「働きやすさ」「成長機会」「地域のつながり」で差別化

広島の事例が示すように、以下の要素が定着率向上のカギとなります。

  • 資格取得支援:専門資格の取得を促し、手当を出すことでキャリアアップを支援。
  • 住環境の整備:寮の提供など、安心して暮らせる基盤を整える。
  • 柔軟な勤務体制:休暇を取りやすくし、ワークライフバランスを重視。
  • 異文化への理解:宗教や食事、生活習慣の違いに配慮し、尊重する姿勢を示す。
  • 外国人コミュニティーの形成:同じ国籍の仲間がいることで、孤立感を軽減。
  • 地域全体での受け入れ:職場だけでなく、地域社会が温かく迎え入れる雰囲気を作る。

7-3. 在留資格の設計も戦略の一部

技能実習→特定技能→専門資格(介護福祉士など)→在留資格変更→家族帯同、というキャリアパスを明確に示すことで、外国人材は長期的な展望を持って働くことができます。

行政書士と連携し、最適な在留資格を設計することも、定着戦略の重要な一部です。


8. 在日外国人の皆さんへ:自分らしく働ける場所を見つけるために

8-1. 給与だけで職場を選ばない

確かに、東京圏は給与水準が高く、魅力的に見えるかもしれません。

しかし、生活費も高く、通勤時間が長く、人間関係が希薄になりがちという側面もあります。

8-2. 地方で働くメリット

地方では:

  • 生活費が抑えられる
  • 通勤時間が短い
  • 自然豊かな環境でのびのび暮らせる
  • 地域のつながりが温かい
  • 子育て環境が整っている

8-3. 在留資格の選択で人生が変わる

在留資格によって、日本での働き方や家族との暮らし方が大きく変わります。

  • 技能実習は転職制限があり、家族帯同も不可
  • 特定技能1号は転職可能だが、家族帯同は不可
  • 介護福祉士など専門資格を持つ在留資格なら、家族帯同も可能

どの在留資格が自分に合っているか、どうすれば資格を変更できるか、わからないことがあれば、ぜひ行政書士に相談してください。


9. 企業の人事担当者・経営者の皆さんへ

9-1. 外国人材は「一時的な労働力」ではない

外国人材を単に「人手不足を補う安い労働力」として扱う時代は終わりました。

これからは、「ともに地域を支える仲間」として、長期的に育成し、定着してもらう視点が必要です。

9-2. 採用前の丁寧なすり合わせが重要

宗教、食事、生活習慣、家族の状況など、採用前に丁寧に確認し、互いに理解し合うことが離職防止の第一歩です。

9-3. 在留資格の設計を戦略的に

外国人材のキャリアパスを明確に示し、資格取得支援や在留資格変更のサポートを行うことで、長期的な定着が実現します。

行政書士は、こうした在留資格の設計と手続きをサポートする専門家です。ぜひご相談ください。


10. まとめ:外国人材と「共生」する未来へ

2027年の育成就労制度スタートにより、外国人材の流動性はさらに高まります。

地方企業にとっては厳しい状況ですが、同時に「選ばれる職場」になるチャンスでもあります。

賃金だけでなく、働きやすさ、成長機会、地域のつながり、そして在留資格の設計を含めた総合的な戦略が求められています。

外国人材が日本社会で安心して働き、暮らし、家族と過ごせる環境を整えることは、企業だけでなく、地域社会全体の責任です。

私たちニセコビザ申請サポートセンターは、ビザ申請や在留資格変更を通じて、外国人材と企業、そして地域をつなぐ「架け橋」として、皆さまをサポートしてまいります。

何かお困りのことがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。


【参考記事】
外国人材、転職しやすい制度で東京圏への移動加速か(Yahoo!ニュース)
https://news.yahoo.co.jp/articles/7490477de4d74a67d40359411cbcd8df1aa22b7d

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