1. EPA介護福祉士候補者受け入れ制度とは

EPA(Economic Partnership Agreement:経済連携協定)に基づく介護福祉士候補者受け入れ制度は、日本とインドネシア、フィリピン、ベトナムとの間で締結された経済連携協定の一環として実施されている公的な人材受け入れプログラムです。

この制度は、単なる労働力の確保ではなく、各国との経済的・文化的な相互交流を深めることを目的としています。候補者は日本の介護施設で働きながら、4年間の在留期間中に介護福祉士の国家資格取得を目指します。

2008年のインドネシアとの協定開始以来、これまでに計8,809人もの候補者が来日しており、日本の介護現場で重要な役割を果たしています。内訳はインドネシア3,781人、フィリピン3,304人、ベトナム1,724人となっています。

人口減少と高齢化が進む日本において、介護人材の確保は喫緊の課題です。厚生労働省の推計によれば、2025年度には約32万人の介護人材が不足するとされており、EPA制度は持続可能な介護サービス提供体制を支える重要な施策の一つと位置づけられています。

2. 2027年度募集の概要とスケジュール

国際厚生事業団は、2027年度のEPA介護福祉士候補者受け入れ機関の募集を2026年3月5日から開始します。募集期間は約1カ月間で、4月8日までとなっています。

【主なスケジュール】
・2026年3月5日:募集開始、オンライン説明会開催(13時~)
・2027年4月8日:募集締切
・その後:現地での合同説明会、面接、マッチング実施
・フィリピン:2027年12月上旬就労開始予定
・インドネシア:2027年12月中旬就労開始予定
・ベトナム:2027年8月上旬~中旬就労開始予定

候補者は来日前に母国で日本語研修を受け、来日後もさらに研修を実施した上で、各施設での就労を開始します。この二段階の研修体制により、候補者が日本での生活と業務にスムーズに適応できるよう配慮されています。

3月5日午後1時からは、国際厚生事業団による無料のオンライン説明会が開催されます。EPA制度のポイント、受け入れ事例、受け入れ準備について詳しい説明が予定されており、初めて受け入れを検討する施設にとって貴重な情報収集の機会となります。

3. 受け入れにかかる費用と補助制度

EPA候補者の受け入れには、一定の費用が必要です。しかし、国による補助制度も整備されており、施設の負担を軽減する仕組みが用意されています。

【初期費用】
候補者1人あたり約60万円が必要です。この費用には、マッチング支援、来日前・来日後の日本語研修、渡航費用などが含まれます。

【継続費用】
就労2年度目以降は、候補者1人あたり年間2万円の費用がかかります。

【補助制度】
受け入れ施設に対しては、以下の補助が用意されています:
・日本語講師費用:候補者1人あたり年間15万円
・喀痰吸引等研修受講費用:候補者1人あたり年間7.5万円
・研修担当者手当等:1施設あたり年間6万円を上限に補助

これらの補助制度を活用することで、実質的な負担を大幅に軽減することが可能です。特に日本語学習支援は候補者の資格取得に直結する重要な要素であり、補助金を効果的に活用することが推奨されます。

また、自治体によっては独自の補助制度を設けている場合もあります。受け入れを検討される際は、所在地の自治体に問い合わせてみることをお勧めします。

4. EPA制度のメリット:介護施設にとっての価値

EPA制度による候補者受け入れは、介護施設にとって多くのメリットをもたらします。

【安定的な人材確保】
公的な制度に基づいた受け入れであるため、手続きが明確で安心です。国際厚生事業団のサポートがあり、初めての受け入れでも安心して取り組めます。

【質の高い人材】
候補者は母国で一定の教育を受けており、看護学校卒業者や介護関連の学習経験者が多く含まれます。また、日本での就労と資格取得に強い意欲を持っているため、真摯に業務に取り組む姿勢が期待できます。

【組織の多様性向上】
異なる文化背景を持つスタッフの存在は、職場に新しい視点と活力をもたらします。多様性のある職場環境は、日本人スタッフにとっても刺激となり、組織全体の成長につながります。

【利用者への良い影響】
外国人スタッフと利用者との交流は、利用者に新しい刺激を与え、生活の質向上につながるケースが多く報告されています。言葉や文化の違いを越えた温かい関係性が生まれることも少なくありません。

【国際貢献と企業イメージ向上】
EPA制度への参加は、国際協力・社会貢献の一環としても位置づけられます。地域社会や求職者に対して、グローバルで開かれた組織であることをアピールできます。

【長期的な戦略的価値】
資格取得後は、介護福祉士として長期的に働いてもらえる可能性があります。育成投資が将来の組織の中核人材につながる可能性を持っています。

5. 受け入れの流れ:マッチングから就労開始まで

EPA候補者の受け入れは、以下のステップで進められます。

【ステップ1:求人登録申請】
まず、受け入れを希望する施設が国際厚生事業団に求人登録申請を行います。募集期間は3月5日から4月8日までです。施設の概要、求人条件、受け入れ体制などを申請書に記載します。

【ステップ2:現地での合同説明会】
国際厚生事業団が各国で合同説明会を開催します。候補者は複数の施設の情報を得て、希望する受け入れ先を検討します。

【ステップ3:面接・マッチング】
施設と候補者との面接が実施されます。近年はオンライン面接も活用されています。双方の希望を踏まえてマッチングが行われます。

【ステップ4:来日前研修】
マッチングが成立した候補者は、母国で日本語研修を受けます。研修期間は国によって異なりますが、基礎的な日本語能力と日本文化の理解を深めます。

【ステップ5:来日・来日後研修】
来日後、さらに集合研修が実施されます。より実践的な日本語と介護の基礎知識を学びます。

【ステップ6:就労開始】
研修修了後、各施設での就労が開始されます。フィリピンは12月上旬、インドネシアは12月中旬、ベトナムは8月上旬~中旬が予定されています。

【ステップ7:継続的な支援】
就労開始後も、日本語学習支援、介護福祉士国家試験対策、生活面でのサポートなど、継続的な支援が必要です。

6. ビザ申請と在留資格「特定活動」の実務

EPA候補者が日本で就労するためには、在留資格「特定活動」の取得が必要です。行政書士の視点から、この手続きの重要ポイントを解説します。

【在留資格「特定活動」とは】
EPA介護福祉士候補者には、在留資格「特定活動」(EPA に基づく介護福祉士候補者)が付与されます。在留期間は最長4年間で、この期間中に介護福祉士国家試験に合格し、資格を取得することが期待されます。

【申請の流れ】

  1. 在留資格認定証明書交付申請:候補者が来日前に、受け入れ施設が地方入国管理局に申請
  2. 証明書の送付:交付された証明書を候補者に送付
  3. ビザ申請:候補者が自国の日本大使館・領事館でビザ申請
  4. 来日・在留カード受領:空港で在留カードを受領

【必要書類】
・在留資格認定証明書交付申請書
・受入れ機関の概要を明らかにする資料(登記簿謄本、事業所の案内等)
・雇用契約書または雇用条件書
・候補者の学歴・職歴を証明する資料
・国際厚生事業団が発行する受入れ証明書
・その他入管が求める資料

【注意点】
・申請から証明書交付まで1~3カ月程度かかる場合があります
・書類の不備があると審査が長引くため、正確な準備が重要です
・在留期間の更新手続きも必要になる場合があります

【資格取得後の在留資格変更】
介護福祉士国家試験に合格し資格を取得した場合、在留資格を「介護」に変更することができます。この在留資格では在留期間の更新が可能で、長期的な就労が可能になります。

【専門家のサポートの重要性】
ビザ申請は複雑で、書類の不備や手続きミスがあると受け入れスケジュールに大きな影響が出ます。行政書士などの専門家に依頼することで、正確かつスムーズな手続きが可能になります。

7. 受け入れ成功のための準備とポイント

EPA候補者の受け入れを成功させるためには、組織としての十分な準備が不可欠です。

【受け入れ体制の整備】
・受け入れ担当者の選任:窓口となる担当者を明確にする
・メンター制度の構築:候補者をサポートする先輩職員を配置
・職員への事前説明:現場スタッフに制度や候補者について理解を深めてもらう

【日本語学習支援】
・日本語講師の確保:補助金を活用して外部講師を招く、または内部で教える体制を作る
・学習教材の準備:介護の専門用語を含む教材を用意
・学習時間の確保:業務の中で学習時間を確保できるシフト調整

【資格取得支援】
・試験対策講座の実施:過去問題を使った学習会の開催
・模擬試験の実施:本番を想定した練習機会の提供
・先輩候補者との交流:合格者から学べる機会を作る

【生活面でのサポート】
・住居の確保:候補者が安心して住める住居の手配
・生活オリエンテーション:銀行口座開設、携帯電話契約などのサポート
・相談窓口の設置:困ったときに相談できる体制

【文化的配慮】
・宗教への配慮:礼拝の時間や場所、食事(ハラル食等)への配慮
・文化交流の機会:日本文化を体験できるイベントや、母国の文化を紹介する機会

【コミュニケーション環境】
・やさしい日本語の使用:わかりやすい言葉で話す習慣づけ
・視覚的な資料の活用:イラストや写真を使った業務マニュアル
・定期的な面談:候補者の悩みや要望を聞く機会を設ける

【長期的視点】
EPA候補者の受け入れは、4年間という長期的な取り組みです。目先の人手不足解消だけでなく、組織の国際化、多様性の推進、将来の中核人材育成という視点で取り組むことが重要です。

8. よくある質問(FAQ)

Q1:候補者の日本語能力はどの程度ですか?
A:来日時点で日本語能力試験N3~N4程度を目指す研修を受けています。ただし、個人差があるため、来日後も継続的な学習支援が必要です。

Q2:介護福祉士試験に合格できなかった場合はどうなりますか?
A:4年間の在留期間中に合格できなかった場合、原則として帰国となります。ただし、一定の要件を満たせば在留期間の延長が認められる場合もあります。

Q3:候補者が途中で帰国してしまうリスクはありますか?
A:絶対にないとは言えませんが、EPA候補者は日本での就労と資格取得に強い意欲を持っています。適切なサポート体制があれば、高い定着率が期待できます。

Q4:小規模な施設でも受け入れは可能ですか?
A:はい、可能です。ただし、候補者への適切な指導体制や日本語学習支援が提供できることが重要です。

Q5:受け入れ実績がない施設でも応募できますか?
A:はい、初めての施設でも応募可能です。国際厚生事業団のサポートがありますので、説明会に参加して情報収集することをお勧めします。

Q6:技能実習や特定技能との違いは何ですか?
A:EPAは二国間の経済連携協定に基づく制度で、候補者は国家資格である介護福祉士の取得を目指します。技能実習や特定技能とは制度の目的や位置づけが異なります。

Q7:ビザ申請は自分たちでできますか?
A:可能ですが、書類の不備があると受け入れスケジュールに影響が出る可能性があります。初めての受け入れの場合は、行政書士などの専門家に相談することをお勧めします。

9. まとめ:計画的な受け入れで組織の未来を築く

2027年度EPA介護福祉士候補者の受け入れ募集が、いよいよ3月5日から始まります。人材不足が深刻化する介護業界において、この制度は貴重な選択肢の一つです。

しかし、受け入れを成功させるためには、制度の正しい理解、十分な準備、そして長期的な視点が不可欠です。候補者は、遠い異国の地で新しい人生に挑戦する勇気ある人材です。彼らが安心して働き、成長できる環境を整えることは、受け入れ施設の責任であり、同時に組織の未来への投資でもあります。

【今すぐできること】
・3月5日午後1時からのオンライン説明会に参加する
・組織内で受け入れの可能性について検討を始める
・ビザ申請や受け入れ体制について専門家に相談する

EPA制度を通じた国際的な人材交流は、単に人手を確保するだけでなく、組織に多様性をもたらし、職員の視野を広げ、利用者に新しい刺激を与えます。そして何より、日本と相手国との相互理解と友好関係を深める、意義深い取り組みです。

私たちニセコビザ申請サポートセンターは行政書士として、ビザ申請・在留資格手続きの専門家として、外国人労働者の受け入れをサポートしています。書類作成から入管対応まで、一貫してサポートいたしますので、お気軽にご相談ください。

募集期間は4月8日までと限られています。この機会に、貴施設でもEPA候補者の受け入れを検討されてはいかがでしょうか。一緒に、多様な人材が活躍できる、持続可能な介護の未来を築いていきましょう。

【参考情報】
・国際厚生事業団 : https://jicwels.or.jp/
・厚生労働省 EPA介護福祉士候補者受入れパンフレット

📰 元記事:
https://news.yahoo.co.jp/articles/89035102fbbd7329ab6ed213537918426b3343ad