2026年3月10日、政府は外国人の出入国管理の厳格化を目指す入管法改正案を閣議決定しました。この改正案には、在留資格に関する手数料の大幅引き上げと、電子渡航認証制度「JESTA」の創設が含まれており、在日外国人や外国人を雇用する企業にとって無視できない内容となっています。
本記事では、行政書士の視点から、今回の入管法改正のポイント、背景、影響、そして今後の対応策について詳しく解説します。
1. 入管法改正案の概要―何が変わるのか?
今回の入管法改正案には、大きく分けて2つの柱があります。
(1)在留資格手数料の上限引き上げ
在留資格の変更・更新、および永住許可にかかる手数料の上限が大幅に引き上げられます。
| 項目 | 現行 | 改正後(上限) |
|---|---|---|
| 在留資格の変更・更新※ | 6,000円 | 100,000円 |
| 永住許可 | 10,000円 | 300,000円 |
※は窓口申請の場合。
この引き上げは1981年以来、実に40年以上ぶりのことであり、外国人にとっても雇用企業にとっても大きな負担増となる可能性があります。
(2)電子渡航認証制度「JESTA」の創設
ビザ免除対象の74カ国・地域からの短期滞在者を対象に、入国前にオンラインで必要な情報の提供を求める「JESTA(Japan Electronic System for Travel Authorization)」が創設されます。
これはアメリカの「ESTA」やオーストラリアの「ETA」に相当する制度で、事前認証によって不法残留リスクを低減し、入国審査の円滑化を図ることが目的です。
2028年度中の施行を目指し、手数料も徴収される予定です。
2. なぜ今、手数料引き上げなのか?―背景を読み解く
(1)在留外国人の急増
日本に住む外国人は年々増加しており、2024年には過去最高を記録しました。観光目的などで入国した短期滞在者も約3,846万人に達し、そのうち約8割がビザ免除国からの入国者です。
(2)行政コストの増大
外国人の増加に伴い、入管行政にかかるコストも増大しています。具体的には、以下のような支援・整備が必要となっています。
- 在留審査のDX化(デジタルトランスフォーメーション)
- 多言語対応の相談窓口の設置
- オンライン申請システムの拡充
- 不法滞在者の取り締まり強化
こうした体制整備には膨大な予算が必要であり、今回の手数料引き上げは、その財源確保が目的とされています。
(3)国際的な水準との比較
日本の在留資格手数料は、国際的に見ても非常に低額でした。他の先進国では、同様の手続きに数万円から数十万円の手数料が設定されているケースも多く、今回の引き上げは国際水準への調整という側面もあります。
3. 改正がもたらす影響―誰にどんな影響があるのか?
(1)在日外国人への影響
在留資格の更新や変更を控えている外国人にとって、手数料の大幅引き上げは家計への直接的な負担増となります。
特に以下のような方々は注意が必要です。
- 留学生:卒業後に就労ビザへ変更する際のコスト増
- 技能実習生・特定技能労働者:在留期間更新時の負担増
- 永住権取得を検討している方:申請費用が最大30万円に
施行前に手続きを済ませるか、施行後に対応するかで、数万円から数十万円の差が生じる可能性があります。
(2)外国人雇用企業への影響
外国人スタッフを雇用している企業にとっても、今回の改正は無視できません。
- 人事コストの増加:手数料を企業が負担している場合、大幅なコスト増
- 採用計画の見直し:外国人材の採用・定着戦略の再検討が必要
- 社内規程の改定:福利厚生制度や支援体制の見直し
特に中小企業では、1人あたり数万円のコスト増が経営に与える影響は小さくありません。
(3)行政書士などの専門家への影響
私たち行政書士にとっては、クライアントからの相談件数の増加が予想されます。また、制度の複雑化に伴い、より高度な専門知識とタイムリーな情報提供が求められるようになります。
4. JESTAとは何か?―電子渡航認証制度の詳細
(1)JESTAの仕組み
JESTAは、ビザ免除国からの短期滞在者が入国前にオンラインで以下の情報を提供する制度です。
- 氏名、生年月日、国籍
- パスポート情報
- 渡航目的、滞在先
- 過去の犯罪歴、入国拒否歴など
事前に審査を行うことで、不法残留や犯罪リスクのある人物の入国を未然に防ぎます。
(2)他国の事例
- アメリカ:ESTA(14ドル)
- オーストラリア:ETA(20豪ドル)
- カナダ:eTA(7カナダドル)
日本のJESTAも、同様の手数料体系になると予想されます。
(3)JESTAの狙い
- セキュリティ強化:不法滞在・犯罪リスクの低減
- 入国審査の効率化:空港での待ち時間短縮
- 観光立国推進:安全でスムーズな入国体験の提供
2028年度中の施行を目指しており、観光業界や航空業界にも影響を与えそうです。
5. 今後のスケジュールと施行時期
在留資格手数料の引き上げ
- 施行予定:来年度中(2026年度中)
- 具体的な手数料額:他国の事例を参考に今後決定
JESTA
- 施行予定:2028年度中
- 対象国・地域:ビザ免除74カ国・地域
- 手数料:今後決定
いずれも国会審議を経て正式に決定されますが、現時点でのスケジュールとしては上記の通りです。
6. 企業が今すぐ取るべき対応策
(1)現状の把握
- 自社の外国人スタッフの在留資格状況を確認
- 更新・変更時期が近いスタッフのリストアップ
(2)コスト試算
- 手数料引き上げによる年間コスト増を試算
- 予算計画への反映
(3)社内規程の見直し
- 手数料負担に関する社内ルールの明確化
- 福利厚生制度の見直し
(4)外国人スタッフへの情報共有
- 改正内容のわかりやすい説明
- 個別相談窓口の設置
(5)専門家との連携
- 行政書士などの専門家と連携し、最新情報を入手
- 申請タイミングの最適化
7. 在日外国人が今すぐ取るべき対応策
(1)自分の在留資格を確認
- 在留期限の確認
- 更新・変更予定の把握
(2)手続きタイミングの検討
- 施行前に手続きを済ませるか、施行後に対応するかを判断
- 専門家に相談して最適なタイミングを見極める
(3)費用の準備
- 手数料引き上げに備えた貯蓄計画
- 勤務先の支援制度の確認
(4)最新情報の入手
- 入管庁の公式サイトをチェック
- 行政書士などの専門家のSNSやブログをフォロー
8. よくある質問(FAQ)
Q1. 手数料はいつから引き上げられますか?
A. 来年度中(2026年度中)に施行予定ですが、具体的な日時は今後の国会審議で決まります。
Q2. 施行前に申請すれば現行の手数料で済みますか?
A. はい。施行日前に申請を完了すれば、現行の手数料が適用されます。
Q3. 手数料は必ず上限額になりますか?
A. いいえ。上限が10万円や30万円に引き上げられますが、具体的な額は他国の事例を参考に今後決定されます。
Q4. 企業が負担する義務はありますか?
A. 法律上の義務はありませんが、企業によっては福利厚生の一環として負担しているケースもあります。
Q5. JESTAは日本人にも影響しますか?
A. JESTAは外国人の入国管理制度なので、日本人の出入国には直接影響しません。
9. 行政書士に相談するメリット
在留資格の手続きは複雑で、法改正も頻繁に行われます。行政書士に相談することで、以下のようなメリットがあります。
- 最新情報に基づいた正確なアドバイス
- 申請書類の作成・チェック
- 申請タイミングの最適化
- 不許可リスクの低減
- 時間と労力の節約
特に今回のような大規模な法改正時には、専門家のサポートが不可欠です。
10. まとめ―今こそ準備を始めるとき
今回の入管法改正は、在日外国人と外国人雇用企業にとって、大きな転換点となります。
手数料の大幅引き上げは家計や企業経営に直接影響を与えますし、JESTAの創設は日本の入国管理体制の近代化を象徴する動きです。
大切なのは、正確な情報を早めに入手し、計画的に対応することです。
私たち行政書士は、皆様が安心して日本での生活や事業を続けられるよう、常に最新情報をキャッチアップし、最適なサポートを提供しています。
ご不明な点やご相談があれば、どうぞお気軽にお問い合わせください。
【元記事】
https://news.yahoo.co.jp/articles/7edd84aaedda4551c395c2148c90d675a803a198
