1. はじめに:外国人家庭に衝撃走る制度改正
2026年度から導入予定の新しい高校授業料無償化制度が、在日外国人の家庭に大きな衝撃を与えています。
これまで日本国内に住む子どもであれば、国籍を問わず支援が受けられてきた無償化制度が、「定住性」や「学校の種類」によって線引きされることが検討されているからです。
https://news.yahoo.co.jp/articles/177a6db220dd651e2b4ae46ebe27245277f1f408
新制度では、定住が見込まれない外国人の子どもや、外国人学校に通う生徒、留学生などが支援対象から除外される方針が示されています。
これにより、たとえ日本国内で生まれ育った外国籍の子どもであっても、親の在留資格や家庭の事情によって、支援の対象外となる可能性が出てくるのです。
例えば、両親が就労系の在留資格で働いている場合、家族滞在で暮らしている子どもたちは、原則として「定住が見込まれる」とは評価されにくく、支援を受けられないケースが多発するでしょう。
教育はすべての子どもに等しく保障されるべきものです。しかし、新制度はその原則に疑問を投げかける内容となっています。
教育の公平性を損なうだけでなく、将来の人材育成や外国人の定着支援という観点から見ても、長期的な社会的リスクを内包していると言わざるを得ません。
この問題は、単に外国人家庭の課題にとどまらず、企業や自治体、そして社会全体が向き合うべき重要なテーマです。
外国人雇用を進める企業にとっても、この制度変更は決して「無関係な教育制度の話」ではありません。
2. 制度のポイント:国籍や定住性で線引き
今回の高校授業料無償化制度の改正において、最大の注目点は「誰が支援を受けられるのか」という支援対象の線引きです。
この線引きは、単に所得だけでなく「国籍」や「定住の見込み」といった要素に基づいて判断されることになります。
具体的には、以下のようなルールが検討されています。
- 所得制限を撤廃し、支援の上限額を引き上げ(私立全日制で最大45万7,000円)
- 日本国籍の生徒と「定住が見込まれる外国人」のみが満額の支援を受けられる
- 留学生および外国人学校に通う生徒は制度の対象外
- 「定住が見込まれない」外国人の生徒は支援額が大幅に削減される(日本人より最大約34万円少ない)
問題は、「定住性」の判断が非常に曖昧かつ主観的であるという点です。
文部科学省や与党関係者の発言によれば、面談や生活実態調査などを通じて「日本での将来の生活意志」や「家庭の就労状況」などを確認するとのことですが、これらの判断は担当者の裁量に委ねられる可能性が高いといえます。
また、支援の有無が家庭の在留資格に左右されるため、同じ学校の教室で学ぶ生徒同士でも支援額に大きな差が生まれるという事態が起こり得ます。
これは教育現場に混乱をもたらすだけでなく、差別やいじめの温床になりかねません。
本来、教育支援制度は子ども本人の学習意欲や将来性に基づいて設計されるべきです。
しかし、今回の制度改正では、子ども自身ではどうすることもできない「親の在留資格」や「国籍」が支援の可否を左右してしまう――まさに不条理な制度といえるでしょう。
3. 専門家の懸念:排外主義の助長
この制度改正をめぐっては、教育関係者や移民政策の専門家から、強い批判と懸念の声が相次いでいます。
最も多く聞かれるのは、「制度によって日本社会の排外主義を助長することになるのではないか」という指摘です。
国士舘大学の鈴木江理子教授(移民政策)は「今回の改正は、『日本人と外国人は対等ではない』というメッセージを政府が公式に発信しているようなものだ」と厳しく批判しています。
また、白梅学園大学の小玉重夫教授(教育学)は、「外国人を制度的に除外することで、排外的な世論に迎合したと受け取られても仕方がない」と語ります。
これまで日本は、国際人権規約や子どもの権利条約に基づき、外国人であっても日本国内に居住する子どもに対して、教育の機会を国籍に関係なく保障してきました。
その歩みを止め、国籍や定住性で差を設けるような今回の制度は、これまでの教育政策や国際的な人権理念とも矛盾しています。
また、現場で子どもたちを支援している教育NPOや外国人支援団体からも、「制度によって学びの選択肢が奪われる」「家庭の事情で差別されるのは不公平」といった声が上がっており、現実的な支援体制の見直しを求める動きが強まっています。
制度改正によって教育格差が拡大し、外国籍の子どもたちが社会的に孤立するリスクは非常に高まっています。
教育は社会の未来をつくる基盤であり、そこに国家的な差別構造を持ち込むべきではありません。
4. 在日外国人の進学率の現実
制度改正の問題点をより深く理解するには、現在の在日外国人の子どもたちの進学状況を把握することが欠かせません。
文部科学省の調査や専門家による推計によると、日本人の高校進学率がほぼ100%に達するのに対し、在日外国人の高校進学率は54〜69%にとどまっています。
これは単なる「文化の違い」や「家庭の事情」だけでは説明できない構造的な問題を示しています。
その背景には、日本語の壁、情報不足、経済的困窮、そして進学に対する理解の欠如など、複数の要因が複雑に絡み合っています。
特に経済面でのハードルは高く、学費や教材費、受験費用をまかなえずに進学を諦める家庭も少なくありません。
そうした現状の中で、今回の制度改正により支援が削減、あるいは受けられないとなれば、進学率がさらに低下することは避けられないでしょう。
高校進学ができなければ、その後の進路にも大きな影響を与え、結果として社会的孤立や非正規雇用の固定化を招くことにもつながります。
また、教育格差が固定化されることで、日本社会における「見えない階層化」が進行し、多文化共生社会の実現から遠のく危険性があります。
外国人の子どもたちが日本社会で活躍するためには、高校進学というスタートラインに立てることが何よりも重要です。
行政・教育機関・企業が一体となり、子どもたちの進学を「自己責任」ではなく「社会全体の課題」として受け止める姿勢が求められています。
5. 企業にとっても「他人事」ではない
今回の高校授業料無償化制度の見直しは、表面上は「教育制度の改正」に見えるかもしれません。
しかし、外国人雇用を行っている、あるいは今後導入を検討している企業にとっては、実は非常に深刻な経営課題につながり得る問題です。
企業が外国人材を採用する際に、重要な判断材料となるのが「日本で安心して家族と暮らせる環境が整っているかどうか」です。
特に、家族帯同が可能な在留資格を持つ外国人労働者にとって、子どもの教育環境は極めて重要な要素です。
教育制度が不透明で、しかも支援が得られないとなれば、そもそも日本での就労そのものを敬遠されるリスクが高まります。
また、すでに外国人社員を雇用している企業にとっても、今回の制度変更は「社員の家族の将来」に直結する話であり、企業の福利厚生や支援体制の見直しを迫られる可能性があります。
日本語が十分に話せない子どもにとって、高校進学は非常に大きな壁になります。その壁を乗り越えるには、学費の支援だけでなく、学習支援、日本語教育支援など、多方面からのサポートが不可欠です。
企業が人材を確保するには、給与や労働環境だけでなく、「家族全体で安心して生活できる環境」が求められる時代です。
この制度改正を「教育だけの問題」と見なすのではなく、「外国人社員の離職リスク」や「採用の難化」といった経営課題として捉える視点が必要です。
いま、企業は従業員本人だけでなく「その家族にも選ばれる職場」であることが求められているのです。
6. 人材確保の観点からの危機
日本は現在、深刻な労働力不足に直面しており、外国人材の受け入れは避けて通れない国家戦略となっています。
高度人材の獲得、特定技能制度の拡大、外国人留学生の受け入れ促進、インバウンドの回復――こうした多様な政策が並行して進められています。
しかし、今回の高校無償化制度の見直しにより、「子どもの教育支援はしません」「定住性がなければ除外します」というメッセージが制度上示されることになれば、日本が「外国人に冷たい国」と見られる可能性があります。
実際、教育支援の不足は、外国人労働者の日本離れを招きかねない要因の一つです。
特に東南アジアをはじめとした外国人材の競争市場では、日本は既に他国に比べて「生活コストが高い」「手続きが煩雑」「支援が少ない」といった印象を持たれがちです。
そこに今回の制度改正が重なれば、優秀な外国人材はより手厚い支援を用意するカナダやドイツ、オーストラリアなどの国へ流れてしまうことは十分にあり得ます。
日本に来て、家族を呼び寄せて、子どもを育てていく――そのライフプランが描けない国には、もはや人材は集まりません。
教育制度に「選別」が入り、支援に不平等が生まれた時点で、その国の魅力は確実に失われていきます。
人材確保という経営課題を解決したいと考えるならば、企業もまた、今回の制度変更に敏感であるべきです。
制度が人材獲得にどんな影響を与えるのか、今から真剣に見つめ直す必要があります。
7. 実務への影響:人事・労務部門が対応すべきこと
今回の制度改正は、外国人社員を雇用している企業の人事・労務部門にとっても、具体的な対応が求められる重要なテーマです。
特に、社員本人だけでなく、その家族に関わる制度であることから、福利厚生や就業規則、社内制度の見直しに直結します。
まず必要なのは、教育支援制度に関する正確な情報の収集と共有です。
「定住が見込まれる外国人」がどのように判断されるのか、子どもが支援対象となる条件は何か、最新の制度動向を把握し、社員に適切に案内する体制を整えることが不可欠です。
さらに、企業として学費補助や教育支援を福利厚生の一部に組み込むことも検討すべきです。
企業独自の教育手当制度を設けることで、社員の家族の不安を和らげ、企業への信頼感を高めることができます。
そして最も重要なのは、在留資格や定住性の判断において、行政書士などの専門家との連携を強化することです。
「定住が見込まれる」とされるかどうかは、在留資格の種類、滞在年数、日本での就労・生活の意思など、複雑な要素が絡むため、専門的なアドバイスがなければ誤った判断を招きかねません。
人事担当者が適切に制度に対応できる体制を整えることで、企業全体のリスク管理にもつながります。
外国人材を「採用して終わり」ではなく、「育成・定着」まで視野に入れた経営が、今後の企業競争力を左右すると言えるでしょう。
8. 私たちの考え:排除ではなく共生へ
今回の高校授業料無償化制度の見直しは、「誰に教育の機会を与えるのか」という根本的な問いを突きつけています。
そして、その答えが「国籍」や「定住の見込み」といった線引きによって左右されるとしたら、それは果たして私たちが目指すべき社会の姿なのでしょうか。
教育は、子どもたちの将来をつくる最も重要な基盤であり、本来であれば出自や家庭の事情に関係なく、すべての子どもに等しく開かれているべきです。
私たちは、行政書士として法制度に向き合う立場でありながらも、この制度のあり方に疑問を感じざるを得ません。
今や企業がグローバルに人材を確保する時代において、「日本は外国人にとって働きやすい国なのか」「家族が安心して暮らせる環境があるのか」という視点が極めて重要になっています。
制度が排除の方向へ舵を切ることで、「日本で働きたい」というモチベーションを持つ外国人が減り、結果として人材不足に拍車がかかるという悪循環に陥ることも懸念されます。
企業経営者や人事担当者の皆様には、今回の制度変更を「教育の話」として片付けるのではなく、自社の人材戦略、採用力、さらには企業価値に影響する「経営課題」として捉えていただきたいのです。
これからの時代に求められるのは、「排除」ではなく「共生」です。
外国籍であることが不利益にならない社会、すべての子どもが安心して学べる社会を、私たち一人ひとりが支えていく必要があります。
その第一歩として、今回の制度変更をきっかけに、外国人社員とその家族への支援体制を見直すことが、企業にとっても社会にとっても極めて重要な選択となるのです。
9. おわりに:まずはご相談ください
外国人を雇用する企業にとって、「教育支援」や「定住性の判断」は、避けて通れない重要な課題です。
しかし、その制度は複雑で、しかも頻繁に改正されるため、企業単独で正確な対応を行うのは非常に困難です。
特に今回のように、「定住が見込まれるかどうか」という曖昧な判断基準が制度の支援対象を左右する場合、適切な判断を下すには法的な知識と実務経験が不可欠です。
万が一、誤った判断をしてしまえば、社員本人だけでなくその家族にも不利益が及び、企業としての信頼を損なうリスクもあります。
私たちニセコビザ申請サポートセンターは行政書士として、外国人の在留資格や家族滞在の実務、さらには教育・生活支援制度に関する最新情報まで一貫して対応しています。
「制度が変わったけれど、うちの社員は対象になるのか?」「学費支援は受けられるのか?」「定住性ってどう判断するのか?」――こうした疑問に対し、実務的かつスピーディにお答えします。
外国人材を活用していく中で、企業が直面する法務・人事・生活支援の課題は、今後ますます複雑化していきます。
だからこそ、早い段階での専門家の関与が重要です。
私たちは、制度に対応するためだけでなく、外国人社員とそのご家族が安心して長く日本で働き、暮らしていけるための「未来を見据えた支援体制づくり」をご一緒に進めていきたいと考えています。
まずは一度、貴社の現状やお困りごとをお聞かせください。
初回相談は無料で承っております。制度の理解と実務対応の一歩を、私たちと共に踏み出しましょう。