はじめに:偽造書類事件が示す深刻な問題
2026年1月21日、大阪府警はベトナム人女性4人を、偽造した日本語試験合格証で在留資格「特定技能」を不正取得した疑いで書類送検しました。この事件は、外国人材を雇用する企業と、日本で働く外国人の双方にとって、重要な教訓を含んでいます。
本記事では、申請取次行政書士の視点から、この事件の詳細、リスク、そして企業と外国人材が取るべき正しい対応について解説します。
1. 事件の全容:組織的な在留資格不正取得の実態
偽造書類による特定技能取得の手口
今回の事件では、以下の役割分担による組織的な犯行が行われました:
調達役(1名)
ベトナムにいる人物とSNSで連絡を取り、偽造された日本語試験合格証のデータを入手。スマホを通じてデジタルデータで受け取っていました。
仲介役(1名・36歳女性)
調達役から偽造データを受け取り、依頼者に渡す橋渡し役。依頼者とは以前からの知り合いでした。この女性自身も、別の事件で偽造書類を使用して逮捕・起訴され、現在公判中です。
依頼者(2名)
技能実習生として日本に滞在していたが、より高収入で滞在期間も長い「特定技能」への移行を希望。調達役・仲介役と共謀し、偽造書類を使用しました。
偽造された書類の内容
偽造されたのは「介護日本語評価試験」などの合格証です。特定技能(介護)の在留資格を取得するには、この試験に合格する必要があります。
2024年8月、東京と広島の出入国在留管理局に偽造合格証を提出し、不正に在留資格を取得しました。
犯行の動機:収入増加と滞在期間延長
技能実習生の平均年収は、特定技能と比べて低い傾向にあります。また、滞在期間にも制限があります。より良い収入と長期滞在を求めて、不正な手段に手を染めたとみられています。
2. 偽造書類使用の法的リスクと重大な結果
刑事罰:入管難民法違反と偽造有印公文書行使
今回、4人は以下の罪で書類送検されました:
入管難民法違反(虚偽申請)
虚偽の書類を提出して在留資格を取得する行為は、入管難民法に違反します。
偽造有印公文書行使
公的機関が発行したように見せかけた偽造書類を使用する行為は、刑法上の重罪です。
強制送還と再入国禁止
在留資格が取り消されると、強制送還となります。さらに、再入国が長期間(場合によっては永久に)禁止される可能性があります。
家族への影響
配偶者や子どもが日本にいる場合、家族の在留資格にも影響が及ぶ可能性があります。
キャリアと人生設計の崩壊
積み上げてきた日本でのキャリア、人間関係、生活基盤がすべて失われます。
3. 企業が直面するリスク:知らなかったでは済まされない
雇用主の法的責任
偽造書類で取得した在留資格を持つ外国人を雇用した場合、企業も法的責任を問われる可能性があります。
不法就労助長罪
在留資格のない外国人や、就労が認められていない外国人を雇用すると、企業は不法就労助長罪に問われます。罰則は「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」です。
企業イメージの毀損
外国人の不正雇用が発覚すると、企業の社会的信用が大きく損なわれます。取引先や顧客からの信頼喪失につながります。
行政処分のリスク
外国人雇用に関する行政処分を受ける可能性があり、今後の外国人雇用が困難になる場合もあります。
4. 企業が実施すべき偽造書類対策
採用時の厳格な確認
在留カードの確認
在留カードの真偽を確認します。出入国在留管理庁の「在留カード等番号失効情報照会」で、カード番号の有効性を確認できます。
資格証明書の確認
特定技能の場合、技能試験と日本語試験の合格証が必要です。発行機関に直接確認することをお勧めします。
本人確認の徹底
パスポートと在留カードの情報が一致しているか確認します。
定期的なモニタリング
在留期限の管理
雇用する外国人材の在留期限を一覧表で管理し、期限前に更新手続きを促します。
就労可能範囲の確認
在留資格で認められている業務の範囲を定期的に確認し、範囲外の業務をさせないよう注意します。
専門家との連携
申請取次行政書士の活用
採用時や在留資格更新時に、専門家による書類審査を依頼することで、リスクを最小化できます。
社内研修の実施
人事担当者向けに、外国人雇用に関する法令研修を定期的に実施します。
5. 外国人材が知るべき正しい在留資格取得の道
技能実習から特定技能へのステップアップ
技能実習生が特定技能に移行するには、以下の要件を満たす必要があります:
技能試験の合格
特定技能で働く分野の技能試験に合格する必要があります。ただし、技能実習2号を修了した場合は免除される場合があります。
日本語試験の合格
日本語能力試験(JLPT)N4以上、または国際交流基金日本語基礎テストに合格する必要があります。介護分野の場合は「介護日本語評価試験」も必要です。
これらの試験は正当に勉強すれば合格可能
決して不可能な試験ではありません。適切な学習支援を受ければ、多くの方が合格しています。
「簡単に資格が取れる」甘い言葉に注意
SNSでの勧誘
「すぐに特定技能が取れる」「試験に合格しなくても大丈夫」といった言葉で近づいてくる人物に注意してください。
高額な費用の要求
正規の申請手続きで必要な費用は決まっています。不当に高額な費用を請求する業者は疑ってください。
「絶対に合格できる」という約束
合格証を偽造して渡す可能性があります。
正しい相談先
申請取次行政書士
在留資格申請の専門家です。適正な費用で、正しい手続きをサポートします。
出入国在留管理局
無料で相談できる窓口があります。
自治体の外国人相談窓口
多言語対応の相談窓口を設置している自治体が増えています。
6. 介護日本語評価試験とは:正しい準備方法
試験の概要
介護日本語評価試験は、外国人が日本の介護現場で働くために必要な日本語能力を測る試験です。
試験内容
- 介護のことば
- 介護の会話・声かけ
- 介護の文書
合格するための学習方法
公式教材の活用
国際交流基金などが提供する公式教材や練習問題を活用しましょう。
オンライン学習
無料・有料のオンライン学習サイトが多数あります。
日本語学校や支援団体
地域の日本語学校や外国人支援団体が試験対策講座を開催している場合があります。
雇用企業のサポート
多くの企業が外国人材の試験合格をサポートするため、学習時間の確保や教材提供を行っています。
不合格でも諦めない
一度不合格でも、繰り返し受験できます。多くの方が2回目、3回目で合格しています。
7. 仲介役も逮捕・起訴:連鎖する犯罪の恐ろしさ
仲介役女性の別事件
今回書類送検された仲介役の女性(36歳)は、昨年10月に別のベトナム人男性とともに、自ら偽造合格証を使用したとして入管難民法違反容疑で逮捕されていました。
2024年8月に飲食料品製造業の技能試験の偽造合格証を提出し、特定技能を不正取得。昨年11月に起訴され、現在公判中です。
犯罪の連鎖
自身が偽造書類を使用して逮捕されたにもかかわらず、さらに他の人に偽造書類を提供する仲介役として関与していたことになります。犯罪が連鎖し、多くの人生を巻き込んでいく恐ろしさを示しています。
8. 真面目な外国人材への影響:偏見との戦い
一部の不正が全体のイメージを損なう
このような不正事件が報道されるたび、真面目に働いている多くの外国人の方々まで、偏見の目で見られる危険があります。
制度厳格化への影響
不正事件が増えると、制度全体が厳格化され、正当に申請する方にも影響が及びます。審査期間が長くなったり、提出書類が増えたりする可能性があります。
私たちができること
企業側
真面目に働く外国人材を正当に評価し、偏見なく接することが大切です。
外国人コミュニティ
不正な勧誘を見つけたら、警察や入管に通報しましょう。コミュニティ全体の信頼を守るためです。
専門家
正しい情報を提供し、適正な費用でサポートすることで、不正業者の介入を防ぎます。
9. よくある質問(FAQ)
Q1: 偽造書類を使った人を雇用してしまった場合、企業はどうなりますか?
A: 企業が偽造と知らずに雇用した場合でも、確認義務違反として指導を受ける可能性があります。故意に雇用した場合は不法就労助長罪で刑事罰の対象となります。
Q2: 知人から「簡単に資格が取れる」と言われました。どう判断すればいいですか?
A: 在留資格取得には正当な要件と手続きがあります。「簡単」「すぐ」といった言葉は危険信号です。必ず申請取次行政書士や入管に相談してください。
Q3: 技能実習から特定技能への移行は本当に難しいのですか?
A: 決して不可能ではありません。適切な学習支援を受け、試験に合格すれば正当に移行できます。多くの方が成功しています。
Q4: 在留カードの真偽はどうやって確認できますか?
A: 出入国在留管理庁の「在留カード等番号失効情報照会」で確認できます。また、専門家に依頼することもできます。
Q5: 偽造書類の勧誘を受けたらどうすればいいですか?
A: 絶対に関わらず、警察または出入国在留管理局に通報してください。あなた自身と、他の多くの外国人を守ることにつながります。
10. まとめ:正しい道こそが最も確実な道
この事件から学ぶべきこと
今回の偽造書類事件は、以下の重要な教訓を示しています:
外国人材へ
- 「簡単」「すぐ」という甘い言葉に騙されない
- 正しい手続きこそが確実で安全な道
- 困ったときは専門家に相談
企業へ
- 採用時の確認を徹底する
- 定期的なモニタリング体制を整える
- 専門家と連携してリスクを最小化
社会全体へ
- 一部の不正が全体のイメージを損なう
- 真面目な外国人材を正当に評価する
- 不正を見つけたら通報する
正しい道を歩むためのサポート
申請取次行政書士として、私は正しい手続きで夢を実現したい外国人材と、コンプライアンスを重視する企業を全力でサポートします。
技能実習から特定技能への移行、試験対策の情報提供、在留資格更新のサポート―正当な方法で、確実に目標を達成できるようお手伝いします。
時間はかかるかもしれません。努力が必要かもしれません。でも、正しい道を歩めば、安心して長く日本で働き、家族を呼び寄せ、将来は永住権を取得する…そんな未来が確実に開けます。
困ったとき、わからないことがあるとき、甘い言葉に誘われて迷ったとき―どうぞ専門家に相談してください。一緒に正しい道を歩んでいきましょう。
参考記事
「偽造した日本語試験合格証で在留資格取得した疑い、ベトナム人の女4人を書類送検…大阪府警」
https://news.yahoo.co.jp/articles/ab62a32d79f500c6cd3be114609229c46ee4344b
【この記事を書いた行政書士として】
申請取次行政書士として、在留資格申請支援、ビザ申請手続き、在日外国人支援を専門に活動しています。企業の外国人雇用管理から、個人の在留資格相談まで、幅広くサポートしております。「正しい道」を一緒に歩むお手伝いをさせてください。ご相談はお気軽にどうぞ。
