1.はじめに:ベトナム人留学生の不法滞在事件から考える

2024年1月、兵庫県神戸市でベトナム国籍の男性が不法残留の疑いで逮捕される事件が発生しました。この男性は2017年に「留学」を目的として日本に入国し、在留期限が2022年10月であったにも関わらず、それを超えて3年以上も滞在を続けていたとされています。逮捕時は無職で、中央区内のアパートにベトナム人女性と共に暮らしていた形跡もあり、「不法滞在の外国人がいる」との通報がきっかけとなり、警察が調査・逮捕に至りました。

https://news.yahoo.co.jp/articles/793938ee09e0aebe97e2471b53c082ce662c3bb5

このニュースは、外国人の「留学ビザ」が有効期限切れとなった後、本人の意思で滞在を続けたという点で大きな示唆を与える事件です。しかし同時に、企業にとっても無関係とは言えません。もしこのような人物が、何らかの形で企業に雇用されていた場合、その企業は「不法就労助長罪」に問われる可能性すらあるのです。

本記事では、この事件を出発点に、外国人留学生に多く見られる不法滞在の背景と、企業がとるべき在留管理の具体的な対策について、行政書士の視点から詳しく解説します。


2. 留学ビザの仕組みと企業にとってのリスク

まず「留学ビザ(在留資格:留学)」とは、日本の学校に在籍し、勉学に励むことを目的とした在留資格です。ビザの期間は在籍する教育機関によって異なり、多くは1年または2年単位での更新が必要です。進学や卒業後は、他の在留資格(例:就労ビザ)に変更しなければ、日本に滞在し続けることはできません。

しかし実際には、さまざまな理由でこのプロセスを完了できず、在留期限切れのまま滞在を続けてしまうケースが後を絶ちません。たとえば、大学や専門学校を中途退学した場合、原則として在留資格は消滅します。しかし中には、そのまま在留カードだけを持ち続け、働いたり生活を続けたりする外国人も存在します。

企業がここで陥りがちなのが「在留カードを提示されたから安心」という思い込みです。在留カードに記載された期限が過ぎていたり、カードそのものが偽造されていたりしても、表面的に確認するだけでは見抜けません。

結果として、不法滞在者を雇用してしまった場合、企業には「知らなかった」では済まされない重い責任が課せられることになります。これは単なるコンプライアンスの問題ではなく、企業の信用と存続を脅かすリスクでもあります。


3. なぜ不法残留が起こるのか?その背景と構造

不法残留に至る背景には、個人的な事情だけでなく、日本社会や制度に起因する構造的な課題も多く含まれています。

たとえば、留学生が学校を中退すると、原則として在留資格は失われますが、それが即時に可視化・検知される仕組みは不完全です。また、生活費を稼ぐためにアルバイトに比重を置きすぎ、学業が疎かになり、出席率が足りずに在留資格の更新が認められないケースもあります。

さらに、外国人を対象にした「偽装留学」ビジネスも存在しており、最初から学業ではなく労働目的で入国するような事例もあります。こうした人たちは最初から適正な在留活動を行う意志がなく、結果的に不法残留者となるリスクが高いのです。

言葉の壁や文化の違いにより、行政手続きに必要な情報にアクセスできないまま在留期限を迎える人も少なくありません。特に、地方の中小企業では人材不足から外国人に依存している現場も多く、採用時のチェック体制が甘くなる傾向があります。

このように、不法残留は単なる「本人の責任」ではなく、制度や受け入れ側にも課題があるのです。企業としては、単に「雇わない」という選択肢ではなく、「適切に管理する」という姿勢が求められています。


4. 不法就労助長罪のリスク:企業に課せられる責任

企業が最も注意しなければならないのが「不法就労助長罪」です。これは、不法滞在者や適法な在留資格を持たない外国人を雇用、または雇用をあっせんした場合に適用される罰則です。たとえ企業側に「故意」がなくても、結果的に不法就労を助長したと判断されれば処罰対象になります。

この罪に問われると、個人であれば3年以下の懲役または300万円以下の罰金、法人であれば1億円以下の罰金という非常に重い刑罰が科せられる可能性があります。さらに、刑事罰にとどまらず、社会的な信用失墜、メディア報道、取引先からの契約解除など、企業経営全体に大きな影響を及ぼすことも珍しくありません。

また、ハローワークなどの公的支援の停止や、入管による企業実地調査の対象となる可能性も出てきます。このような調査が入ると、他の外国人従業員にまで波及し、社内の混乱を引き起こすリスクもあります。

「知らなかった」「本人が有効な在留カードを持っていた」という言い訳は、通用しません。企業には在留資格を正確に把握し、就労の適法性を確認する「責任」があると法律上明確に規定されているのです。

5. 入管法違反による企業側の罰則と reputational risk

入管法違反による企業のリスクは、単なる罰金や行政処分だけではありません。昨今は、メディアやSNSを通じた情報拡散が極めて迅速であり、不法就労に関する報道がなされれば、一気に企業の評判は地に落ちる可能性があります。

特に中小企業にとっては、地域での信頼や口コミが生命線です。地域社会との関係性を損なえば、人材の確保や取引先との関係維持にも大きな悪影響を及ぼします。また、一度イメージが損なわれると、回復には長い時間とコストがかかります。

加えて、行政からの監視が強化されることで、外国人雇用のハードルが上がり、採用や在留手続きの煩雑化が進みます。社内での混乱を招くだけでなく、結果として「もう外国人は採用しない」という消極的な姿勢に追い込まれる企業も少なくありません。

これは非常にもったいないことです。優秀な外国人材を適切に雇用し、戦力として育成していくことは、企業の成長戦略において非常に有効です。それを実現するためにも、法令順守とリスク管理体制の整備は欠かせません。


6. 在留カードの確認だけでは不十分!管理体制の盲点

企業が外国人を雇用する際、「在留カードを提示してもらったから大丈夫」と考えてしまうケースは非常に多く見られます。しかし実際には、在留カードの「見た目」だけでは適法性を完全に確認することはできません。

在留カードの確認時には、まずカードの有効期限が切れていないか、在留資格の種類が業務内容に適合しているかを確認する必要があります。たとえば「留学」や「技能実習」の資格で、一般的なアルバイトや正社員としての雇用は認められていません。

また、近年では精巧な偽造カードも出回っており、外見では真贋の判断が困難なものも存在します。ICチップの読み取りや、入管システムによるリアルタイムでの確認が望まれますが、それを行っていない企業が多いのが現実です。

さらに、就労期間中の在留期限管理も重要です。入社時にカードを確認しても、その後に期限が切れてしまえば不法就労状態に陥るリスクがあります。したがって、定期的なモニタリングと、期限前のリマインド体制を整えておく必要があります。


7. 行政書士が勧める「外国人雇用チェックリスト」

外国人を雇用する企業にとって、最低限確認しておきたい項目を以下に整理しました。このチェックリストを活用することで、基本的なリスクはかなりの確率で回避できます。

  • 有効な在留カードの原本確認(コピー不可)
  • 在留資格の種類と業務内容の整合性確認
  • 在留期限とスケジュールの記録・管理
  • 在留資格更新に関する支援体制の構築
  • 資格外活動許可の有無と制限内容の把握
  • 本人とのコミュニケーション体制(言語・文化への配慮)

これらを自社内だけで対応するのが難しい場合は、外部の専門家と連携することが有効です。


8. 外国人雇用に強い社労士・行政書士との連携の重要性

企業単独で外国人雇用を適切に管理するには限界があります。在留資格の内容や法改正は頻繁に行われており、専門知識がなければ適切な判断ができないケースも少なくありません。

そのため、外国人雇用に強い社労士や行政書士と連携することで、リスクを最小限に抑えつつ、安心して採用活動を行うことが可能となります。とくに行政書士は、在留資格取得・変更・更新に関する手続きを代行できる国家資格者であり、法令にもとづいた適正な対応ができます。

また、外国人本人とのコミュニケーション支援や、文化・言語の違いによるトラブル予防、企業内の受け入れ体制づくりまで、一貫したサポートが可能です。

「雇って終わり」ではなく「継続的に活躍してもらう」ための基盤づくりを、専門家と一緒に進めることが成功のカギと言えるでしょう。


9. 【当事務所のご案内】在留資格手続き・更新管理代行サービスについて

当事務所では、外国人雇用に関する以下の業務をワンストップでサポートしております。

  • 在留資格取得・更新・変更に関する書類作成および申請代行
  • 外国人雇用者の在留資格スケジュール管理とリマインド体制の構築
  • 偽造カードの見抜き方、在留管理体制のチェックなどのリスクマネジメント
  • 企業向けの外国人雇用研修・セミナーの実施

「うちもそろそろ体制を整えないと…」と感じておられる経営者・人事担当者の皆さま、ぜひ一度ご相談ください。

初回のご相談は無料です。お気軽にお問い合わせいただければ、現在の体制のチェックや改善案のご提案をさせていただきます。


10. まとめ:安心・安全な外国人雇用のために

外国人材は、日本の労働市場において今後ますます重要な存在となります。 しかし同時に、在留資格の管理や適正な雇用体制の整備が求められる時代でもあります。

本記事でご紹介したような不法滞在のリスクは、正しい知識と対策を講じれば、防ぐことができます。

大切なのは、「知らなかった」で済まされないという認識を持ち、企業として主体的に管理体制を整えることです。

そして、困ったときには専門家に頼る選択肢を持っておくこと。

ニセコビザ申請サポートセンターでは、外国人雇用に関する法的支援を通じて、企業が安心して採用・育成を行えるよう全力でサポートいたします。

まずはご相談から。貴社の成長に貢献できることを、心より願っております。