はじめに:外国人雇用の常識が変わるかもしれません

今、日本の外国人政策が大きな転換点を迎えようとしています。

2025年12月、「永住者」と「技術・人文知識・国際業務(通称:技人国)」の在留資格について、在留管理の厳格化を進める方向で検討していることが報道されました。
これは単なる制度の見直しにとどまらず、外国人を雇用する企業にとって、実務対応・採用戦略そのものの見直しを迫る重要な動きです。

https://news.yahoo.co.jp/articles/f44c49793729905f0f7df474ae75ea892b1c5c57

背景にあるのは、年々増加する在留外国人の数と、それに伴う社会的課題です。
2015年末に約223万人だった在留外国人は、2025年には約395万人と、10年で約1.7倍に増加しています。
国全体の人口が減少し続ける中、外国人の存在は今や日本経済や地域社会を支える重要な存在となっています。

一方で、国民健康保険や年金の未納問題、不正就労、医療費の不払いなど、外国人制度を巡る様々な課題も浮き彫りになってきました。
これらの問題に対応するため、政府は外国人の在留管理をより厳しく、そして精密に見直す必要があると判断したのです。

今回の見直しのポイントは、大きく分けて以下の3点です。

  • 永住資格の取得要件を厳格化(日本語能力や収入条件などの追加)
  • 技人国ビザの不適切な利用(特に単純労働)に対する監視強化
  • 社会保障制度(国保・年金など)との連携による資格審査の見直し

これらはいずれも、在日外国人本人だけでなく、外国人を雇用する企業にとっても極めて重要な問題です。

特に、日常業務に追われる中小企業や、専門的な法務対応に不慣れな企業にとっては、
「知らないうちにルール違反になっていた」「従業員の在留資格が更新できなくなった」
といったリスクが現実味を帯びてきます。

たとえば、これまで「永住者だから更新は必要ない」「技人国であれば一定期間働ける」と安心していた企業も、
今後は就労内容と在留資格の適合性、国保や年金の支払状況、本人の語学力や経済状況など、
より多面的かつ継続的な管理が求められることになるでしょう。

ニセコビザ申請サポートセンターでは、これまでも多数の外国人の在留資格手続き、永住申請、企業からの相談対応を行ってまいりました。
現場での実感としても、「審査が厳しくなってきている」「これまで問題にならなかったことが不許可の理由になる」
といったケースが明らかに増えています。

つまり、今回の制度見直しはまだ「検討段階」ではあるものの、運用レベルではすでに水面下で始まっているのです。

本記事では、行政書士としての経験をもとに、

  • なぜ永住者・技人国が見直し対象となったのか
  • 改正によって何が変わるのか
  • 企業がどのような対応をすべきか

といった点について、できるだけわかりやすく、かつ実務に役立つ形で解説していきます。

外国人雇用は、単なる労働力の補充ではなく、企業の未来を左右する重要な経営資源です。
今後の制度変更に振り回されないためにも、正しい情報をもとに、早め早めの対応を検討していきましょう。


永住者・技人国ビザとは?企業にとってなぜ重要か

では、今回の見直しで焦点となっている「永住者」と「技術・人文知識・国際業務(技人国)」の在留資格とは、
一体どのようなものでしょうか?ここで改めて整理しておきましょう。

■ 永住者ビザとは?

永住者は、文字通り「永住が認められた外国人」のことを指し、在留期間は無期限です。
また、就労に関する制限がないため、業種・職種を問わず幅広い業務に従事することができます。

取得には以下のような条件があります:

  • 素行が善良であること(犯罪歴や交通違反なども審査対象)
  • 独立した生計を営めること(安定した収入・生活基盤があるか)
  • 原則として10年以上日本に継続して在留していること(うち5年以上は就労や納税の実績が必要)

企業にとって永住者を雇用する最大のメリットは、在留資格の更新が不要な点にあります。
就労ビザのように「期間ごとに在留資格更新の手続きが必要」といった煩雑さがなく、安定した雇用が可能です。

しかし、今回の見直しでは、「収入基準」や「日本語能力」などの追加要件が検討されており、
将来的には永住許可の取得難易度が上がることが予想されます。


■ 技人国ビザとは?

一方、技人国ビザは、正式名称を「技術・人文知識・国際業務」といい、
大学卒業や一定の実務経験を前提に、高度な知識・技能を活かした業務に従事する外国人向けの在留資格です。

たとえば以下のような職種が該当します:

  • ITエンジニア、プログラマー、Webデザイナー
  • 通訳・翻訳、語学教師
  • 経理・マーケティングなどの国際業務担当
  • 建築設計、製品開発などの技術系職種

2025年時点での保有者数は約45万人とされており、在留外国人の約11%を占めています。

企業にとって技人国ビザを持つ外国人を採用することは、即戦力となる人材を確保する手段として非常に有効です。
特にITや設計、貿易関連など、専門性の高い業務では、日本人よりも高いスキルを持つ人材も少なくありません。

ただし、技人国ビザには「職務内容が高度専門職に該当しているか」が常に問われます。
単純労働や本来の資格内容と異なる業務を行わせた場合、資格外活動となり、企業側も処分対象になり得ます。

今回の見直しでは、こうした「名ばかり技人国」雇用への監視がより強まる方向で進んでおり、
適切な職務設計と記録管理が一層重要になってくるでしょう。


このように、「永住者」と「技人国」は、日本における外国人雇用の根幹を成す在留資格であり、
企業にとっても非常に利便性の高い制度です。

しかしその一方で、制度の柔軟さが不正利用を招きやすい側面もあり、
今後は「誰を、どの資格で、どのような業務に従事させるか」について、企業が明確な責任を持つ時代に移行していくと考えられます。

次章では、今回の制度見直しの具体的な中身と、実際に企業が受ける影響について詳しく解説していきます。

厳格化の中身:永住者には日本語能力や収入基準が追加?

今回、政府が打ち出した在留管理厳格化の方針には、外国人本人だけでなく、その外国人を雇用する企業にも実質的な責任を求める内容が含まれています。

今後、永住者および技人国の在留資格において検討されている主な見直し項目は、以下の通りです。


1. 永住許可に「日本語能力」の新要件が加わる?

これまで、永住許可の申請には「日本語能力」の明確な基準は設けられていませんでした。
しかし今回、政府は新たに一定レベル以上の日本語能力を条件とすることを検討しています。

これにより、「日本社会での適応力」や「日常生活での自立」が、法的な要件として位置づけられることになります。

具体的には、日本語能力試験(JLPT)のN2相当以上を求める案などが報道されています。
これは、ニュースを読み取る、ビジネスの場で意思疎通ができるレベルとされており、
特に日本語が苦手な外国人にとっては永住取得の大きなハードルとなるでしょう。

企業側も、永住を目指す従業員に対し、語学学習の支援体制を整えるなどの取り組みが求められる可能性があります。


2. 独立生計(収入)の基準が引き上げに?

永住許可には、「安定した収入があり、自立した生活を営んでいること」が要件として定められています。
ただしこれまでは、具体的な年収金額などについては明文化されておらず、
生活保護を受けていないことや、継続的な雇用があることなどが実務上の判断材料とされていました。

今後は、これをより数値化し、年収の目安を引き上げる方向で検討が進められています。

例えば、過去3年間にわたり300万円以上の年収を安定して得ているかどうか、
扶養家族がいる場合はそれに応じた加算基準を設ける、などです。

これにより、非正規雇用や短時間労働者にとっては永住取得が困難になり、
企業としても従業員の雇用形態や報酬設計の見直しが求められる場面が出てくるでしょう。


3. 社会保険・国保・年金未納者の更新・変更が不可に?

特に注目すべきなのが、社会保険や年金の支払い状況が在留資格の審査に反映されるようになる、という点です。

現在でも、「納税義務の履行」は在留資格の更新審査において重要なポイントですが、
今後はさらに一歩進んで、「国民健康保険や国民年金の未納」がある場合に、在留資格の更新や変更を認めない制度設計が検討されています。

具体的には、デジタル庁のシステムを活用し、各自治体が保有する外国人の未納情報を、出入国在留管理庁がリアルタイムで参照できるようにする仕組みが進められています。
この全国的な情報連携は、2027年6月の本格運用を目指して準備中です。

これは言い換えれば、外国人本人が保険料や年金を支払っていないことで、
企業が採用している人材の就労継続ができなくなる可能性を意味します。

企業が把握しづらい個人の支払い状況が在留資格の鍵を握る以上、日頃から従業員との信頼関係やコミュニケーションが極めて重要になります。


4. 技人国ビザでの単純労働排除が本格化?

技人国ビザは本来、高度な知識・技術を要する業務に就く外国人のための資格です。
しかし現実には、形式上は技人国で雇用しながら、実際には倉庫作業や工場ラインなどの単純労働に従事させているケースも散見されます。

こうした「実質的な資格外活動」が入管の監視強化対象となり、
企業側にも厳しい指導や改善命令が下される事例が増えてきました。

今後は、在留資格と業務内容の整合性が一層厳格にチェックされるようになるでしょう。
雇用契約書、職務内容書、勤怠管理記録などの書類も、更新や変更の審査で求められることが予想されます。

「ちょっと人手が足りないから雑務を頼む」といった曖昧な運用が、
企業にとって大きな法的リスクになる時代に突入したと言っても過言ではありません。


5. 医療費の不払い情報も在留審査へ

現在、医療機関での医療費不払いが20万円を超える場合、入管に情報が共有される制度があります。
これについても、不払い額の基準を1万円に引き下げる方向で調整が進んでいます。

訪日客や短期滞在者による不払いが問題視されていますが、
今後は中長期在留者にも対象が拡大される可能性があり、
在留資格の更新や再入国の審査に影響を与えることが想定されます。

企業としても、就業中の外国人が医療費の支払い義務を果たしているかをチェックする体制や、
福利厚生制度の見直しが求められる場面も出てくるかもしれません。


雇用企業が背負う“新たな責任”

以上のように、今回の制度見直しは単に「外国人本人の義務が増える」というだけでなく、
雇用している企業にも法的・実務的な責任が重くのしかかる内容であることがわかります。

  • 永住申請を支援するには、語学力や収入を満たせるような職場環境を整える
  • 技人国での採用にあたっては、業務内容が要件に合致しているかを丁寧に設計する
  • 社会保険や医療費に関する従業員への周知やサポート体制を構築する

これらは、いずれも「企業の努力義務」ではなく、事実上の義務化が進む方向であると見て差し支えありません。

中小企業にとっては負担に感じられるかもしれませんが、
逆に言えば、こうした点をしっかり押さえている企業は、
今後も安定的に外国人材を確保できる「選ばれる職場」となっていくことでしょう。

次章では、こうした制度見直しの背景にある、日本全体の外国人政策の方向性について、もう少し深く掘り下げてみたいと思います。

行政書士としての現場実感:すでに「水面下の厳格化」は始まっている

今回の政府による在留資格制度の見直しは、2026年以降の法整備や運用開始を視野に入れた中長期的な対応とされています。
しかし、私たち行政書士が日々の業務の現場で対応していると、すでに制度の“運用”のレベルでは厳格化が始まっていることを肌で感じています。

特に「技術・人文知識・国際業務(技人国)」ビザに関しては、以前に比べて審査の精度が格段に上がっている印象です。

たとえば、昨年の申請では問題視されなかった、雇用契約書や職務内容説明書の記載内容が、
今年の更新では「その仕事内容が技人国に該当する業務であるか」について、より細かく、厳密にチェックされるようになっています。

このようなケースでは、本人の経歴や学歴に問題がなくても、企業側の書類不備や業務設計の不備が原因で不許可になることも珍しくありません。

また、これまであまり問われることのなかった「国民健康保険や年金の納付状況」「住民税の支払い状況」などが、在留資格の更新や変更の審査において明確にチェックされるケースも増えています。

このような傾向から、今後法改正が行われなくても、現場運用の厳格化により不許可や審査遅延が増えると予想されます。

企業側としては、「法改正がまだ先だから今は問題ないだろう」と油断せず、
すでに始まっている“水面下の変化”に対応する姿勢が求められているのです。


これからの企業対応:何をどう見直すべきか?

では、こうした実態を踏まえ、企業は具体的に何を見直すべきなのでしょうか?
以下に、今すぐ始められる実務上の対応を整理しておきます。


■ 在留カードと就労内容の定期的な照合

外国人従業員の在留カードは、有効期限だけでなく「資格の種類」と「活動内容」が一致しているかを確認することが大切です。
職務が変わった、部門が異動したなど、些細な変化でも在留資格との適合性が問われる可能性があります。

業務内容の変更=ビザ更新・変更の要否を再確認するきっかけと捉えるべきです。


■ 国保・年金・税の履行確認と社内周知

今後、在留資格の審査で国保や年金、住民税の納付状況がより重要になることは間違いありません。
そのため、企業としては外国人社員に対して「納付の重要性」「会社が情報を確認する可能性がある」ことを丁寧に伝え、
自己管理を促す体制をつくることが不可欠です。

場合によっては、就業規則や社内制度において「未納が在留資格に影響する可能性」を明記することも有効です。


■ 永住申請のタイミング戦略

永住申請を目指している外国人従業員がいる場合、要件の厳格化前に申請を済ませることも重要な戦略です。

とくに、語学要件や収入要件の強化が見込まれる今、「今ならまだ間に合う」状況にある方は、
早期の準備と申請が企業と本人にとってのリスク軽減につながります。

当事務所でも、永住申請の個別診断や事前書類の確認を随時実施していますので、お早めにご相談ください。


■ 行政書士との連携で“法的ブレーキ”をかける

入管手続きやビザ関連業務は、「少しくらい大丈夫だろう」という感覚で行ってしまうと、
後々大きな問題に発展する可能性があります。

行政書士は、書類の作成・確認だけでなく、法令と実務運用の最新動向を踏まえて、企業にとって最適な対応策を提案できるパートナーです。

採用前のビザ確認から、業務内容の精査、書類整備、申請戦略まで、
プロの目線で“ミスが起きる前に止める”ことが可能です。


最後に:今こそ「外国人雇用の再設計」が必要です

人手不足に悩む企業にとって、外国人材の雇用はもはや欠かせない戦略の一つとなっています。

しかし、これからの外国人雇用は「単なる人員確保」ではなく、
法的な理解・労務管理・教育支援を含めた“組織設計の一部”として取り組むべきものです。

外国人社員の人生設計に関わるからこそ、企業としても責任ある体制が求められます。

私たちニセコビザ申請サポートセンターは、そうした企業の皆さまと外国人の架け橋として、
ビザ取得、更新、永住・帰化申請、就業管理に至るまで、伴走型のサポートを行っています。

「今の制度で大丈夫だろうか?」「うちの社員は条件を満たしているのか?」
そんな不安がある方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

制度の波に流されず、むしろチャンスに変える――その一歩を、共に踏み出しましょう。