1. はじめに:高市政権の動きと企業・外国人への影響
2026年1月、高市早苗首相の下で新たな外国人政策の基本方針が発表される見通しです。これに向けて、現在政府と自民党内で急ピッチで議論が進められています。特に注目されているのが、「永住許可要件の厳格化」と「社会保険料未納者に対する在留資格の更新・変更の不認可」といった、在留管理制度の大幅な見直しです。
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この動きは、日本社会における外国人との共生に向けたルール整備の一環として進められており、表向きには「秩序ある受け入れ」を目指すものとされています。しかし、その一方で、実際に日本で生活・就労している外国人や、彼らを雇用している企業側にとっては、非常に現実的かつ深刻な課題となり得ます。
特に、外国人従業員を抱える中小企業にとっては、今回の変更により、従業員の在留資格が更新されず、突如として就労不可になってしまうリスクが高まります。今後、企業は外国人雇用において、単なる採用だけでなく、在留資格や社会保険の適正管理という新たな視点を持つ必要があります。
2. 永住許可要件の変更内容とは
永住許可を得るための条件として、現在「最長の在留期間を有していること」が求められています。これは、基本的には「5年の在留期間」を持っていることを意味しますが、これまでは一定の柔軟性があり、「3年」の在留期間であっても“最長”とみなされる特例措置が取られていました。
しかし、今回の見直しではこの特例を廃止する方向で検討が進められています。つまり、「3年」では永住申請の対象とならず、実際に「5年」の在留期間を取得していなければならない、という形に一本化される見込みです。
この変更が実現した場合、外国人本人が想定していた永住申請のスケジュールに大幅な影響が出る可能性があります。また、企業側にとっても、永住者としての安定雇用を前提に採用・配置していた人材が、永住許可を得られず不安定な立場に陥るリスクが出てきます。
行政手続きとしての「永住許可」は、単なる長期滞在の証ではなく、本人の生活基盤や社会的信頼性が認められた証でもあります。そのハードルが上がるということは、本人の努力だけでなく、企業による支援体制の重要性も今後より増していくことになるでしょう。
3. 「社保未納で在留更新不可」—制度の要点を解説
今回の方針の中でも、企業にとって最もインパクトが大きいのが「社会保険料の未納」による在留資格の更新・変更の拒否です。これは永住許可の申請に限らず、現在保有している在留資格の更新にまで及ぶ厳格な措置となります。
特に問題視されているのが、国民健康保険の納付状況です。厚生労働省の統計によれば、外国人全体の納付率はわずか63%にとどまっており、これは日本人を含めた全体の納付率(約93%)と比較して著しく低い数字です。
このような背景から、高市政権は「国民に不公平感を与える」として、社会保険未納者に対する在留資格の更新を認めないという姿勢を明確にしています。2029年度以降には、マイナンバーを用いた納付状況の確認が自動化される計画も進行中です。
企業としては、これまで以上に、外国人従業員の保険加入状況や納付状況に対して責任を持つことが求められます。「本人の問題」と片付けることは許されず、結果的に在留資格が更新されなければ、その従業員を合法的に雇い続けることもできなくなります。
4. 技人国ビザへの影響とリスク管理
「技術・人文知識・国際業務」、いわゆる「技人国」ビザを持つ外国人の数が、この5年間で1.6倍に増加しています。この在留資格は、技術者や通訳、語学講師など、専門性を持つ職種に対して与えられるものですが、近年はこの資格を利用して単純労働をさせるといった違法行為も相次いでいます。
11月には、東京でインド人を野菜加工などの単純作業に従事させていた事業者が、資格外活動の疑いで逮捕されるという事件も発生しました。このような事例が増えれば増えるほど、入管側も審査を厳しくせざるを得ません。
企業にとってこれは決して他人事ではなく、仮に「技人国」で雇用していた外国人が「実態と異なる業務に従事していた」と判断されれば、企業側にも大きな責任が及びます。最悪の場合、雇用主が罰則を受けるだけでなく、会社の信頼や採用力そのものが損なわれるリスクがあります。
そのため、外国人の職務内容と在留資格の整合性を保つこと、そして必要に応じて在留資格変更の手続きを行うことが、今後の企業リスク管理の要となります。
5. 雇用主が注意すべき「社保加入管理」のポイント
外国人従業員の在留資格を守るうえで、今後最も重要になるのが「社会保険加入状況の管理」です。特に、雇用形態や労働時間によって社会保険への加入義務があるにもかかわらず、それが未履行となっていた場合、従業員本人が在留資格を更新できない可能性が出てきます。
このような事態を防ぐためには、以下の3つのポイントを企業として徹底する必要があります。
まず一つ目は「雇用時の保険加入確認」です。新たに採用する外国人が既に保険に加入しているか、加入が必要な条件を満たしているかを確認しましょう。
二つ目は、「勤務形態に応じた保険適用の早期実施」です。週の所定労働時間や月収によっては、短時間勤務であっても社会保険への加入義務が発生することがあります。
三つ目は、「給与控除と納付状況のチェック体制の構築」です。給与から天引きしているにもかかわらず、納付が遅れている、あるいは事務ミスで未納になっているケースも存在します。こうした見落としを防ぐためにも、定期的なチェック体制の整備が必要です。
制度が厳しくなっていく今、雇用主として「知らなかった」では済まされない状況です。外国人を雇用するということは、法令を遵守し、社会保険制度にも適切に対応する責任を負っているという意識が必要です。
6. マイナンバー連携による納付状況の可視化
今後の制度変更の中で、特に注目されるのがマイナンバー制度の活用です。政府は2029年度から、マイナンバーを通じて社会保険料や税金の納付状況を、自治体・税務当局・入管庁の間で自動的に共有できるシステムの運用を予定しています。
これにより、これまでは本人しか把握できなかった保険料や税金の「未納」情報が、在留資格の審査時に自動的に参照されるようになります。たとえば、形式上は健康保険に加入していても、実際には保険料を滞納していた場合、入管がそれを把握し、在留資格の更新や変更を拒否することが可能になるということです。
企業にとっては、これは非常に重要なポイントです。これまで外国人従業員の保険加入状況については「本人任せ」にしていたケースも少なくありませんが、今後は「納付しているかどうか」という実態まで問われるようになるため、管理体制の見直しが不可欠です。
特に注意すべきは、社保加入が義務であるにもかかわらず、給与から控除した保険料を適切に納付していなかった場合。悪質な事例と判断されれば、企業側の信用問題にも発展しかねません。中長期的な視点で、マイナンバー制度と在留管理の連携に備えた内部体制の整備を進めておくことが強く求められます。
7. 今後の法改正スケジュールと対策のタイミング
制度の変更は突然起きるわけではありません。今回の外国人政策に関する変更も、段階的に進行していくと見られます。2026年1月には高市政権による基本方針が正式に決定され、その後、関連する法令や政省令の改正、運用ルールの見直しが段階的に進んでいくと予測されます。
そして、2029年度からはマイナンバーによる社会保険・税情報の自動連携が本格稼働する予定です。これにより、外国人の在留審査における「未納チェック」は実質的にシステム化され、人の目による判断の余地が少なくなるでしょう。つまり「知らなかった」や「一時的な事情で…」といった主張が通りにくくなるということです。
この流れを踏まえると、企業としては「まだ時間がある」と先送りするのではなく、「今すぐに備えを始める」ことが何より重要です。2026年の方針決定時にはすでに制度の方向性が確定しており、その後の運用開始までに十分な準備期間を確保できるかどうかが、対応の成否を分けます。
特に中小企業や外国人雇用に不慣れな事業者は、制度改正に追いつけず「うっかり違反」に陥るリスクも高まります。行政書士などの専門家に早めに相談し、自社の体制や実務フローを見直すことが、将来的なリスクヘッジにつながります。
8. 外国人本人がとるべき対策
制度の変更によって影響を受けるのは、企業側だけではありません。実際に日本で働き、生活している外国人本人にとっても、「社会保険未納によって在留資格の更新ができなくなる」というのは極めて深刻な問題です。
例えば、本人が自分で国民健康保険料や住民税の支払いをしている場合、何らかの理由で未納が発生すると、それが将来の永住申請や在留更新に直結するリスクとなります。特に、短期のアルバイトや非正規雇用で生計を立てている方、子育てや学業と両立している留学生などは、支払いの優先順位をつけにくく、結果的に未納状態になってしまうこともあります。
こうしたリスクを回避するためには、まず「納付状況の把握」が何よりも大切です。自分の保険料や税金がどうなっているか、毎月確認する習慣をつけましょう。また、何か事情があって支払いが困難な場合には、自治体の窓口で分納や免除の制度について相談することも可能です。
行政書士としての立場から強く申し上げたいのは、何よりも「早めの行動」が鍵になるということです。知らず知らずのうちに未納状態が続いてしまい、いざ更新のタイミングで指摘されてからでは手遅れになることもあります。不安がある方は、一度専門家に相談することをおすすめします。
9. 行政書士としての視点:これからの企業実務とリスク対応
今回の制度変更案は、外国人との共生社会の構築という大義のもとに進められているものですが、その過程で求められる「厳格な審査」や「納付状況の可視化」は、企業・外国人双方に新たな負担をもたらします。行政手続きの透明化と公平性の確保という点では前向きな改革ですが、現場レベルでは混乱が起こる可能性も否定できません。
私たちニセコビザ申請サポートセンターは行政書士として、まさにその現場と制度の間に立ち、法律をただ機械的に適用するのではなく、「現実に即した支援」を提供することが使命だと考えています。特に外国人雇用に関わる企業では、法律知識だけでなく、文化的背景や言語の壁といった実務上の課題も数多く存在します。
たとえば、従業員が社会保険に未加入だった理由が、単なる「無知」や「手続きミス」であったとしても、それが結果として在留資格の更新不可につながる可能性がある以上、企業側の対応が問われる時代になっています。つまり、「知らなかった」では済まされない、リスクマネジメントが必要とされるフェーズに入ったということです。
当事務所では、在留資格の取得・更新手続きのみならず、雇用契約書のチェックや社保加入状況の確認、マイナンバー連携を見据えた内部管理のアドバイスなど、包括的な支援を提供しています。
10. まとめとニセコビザ申請サポートセンターからのご案内
今回取り上げた外国人政策の改正案は、今後数年をかけて段階的に実施される予定ですが、すでに2026年には基本方針が固まる見通しです。以下の点を再確認しましょう。
- 永住許可要件の厳格化により、在留期間3年での永住申請は困難に
- 社会保険料や税の未納が、在留資格更新の障害に
- マイナンバー連携により、納付状況は可視化される時代へ
- 技人国ビザの乱用による入管審査の厳格化リスク
- 企業は外国人雇用において、社保・在留の両面から管理強化が必要
このような流れの中で、外国人本人はもちろん、企業側にも「制度を正しく理解し、正確に対応すること」が求められます。準備を怠れば、思わぬ形で人材を失う可能性すらあります。
ニセコビザ申請サポートセンターでは、外国人の在留資格に関する申請支援はもちろん、企業向けの実務サポート、マイナンバー導入に向けた社内管理体制の整備支援など、幅広く対応しております。「不安だけど何から始めればいいか分からない」とお悩みの方は、まずは一度ご相談ください。
行政書士として、制度と現場をつなぐ架け橋として、皆さまを全力でサポートいたします。
