2026年1月23日、政府は外国人材受け入れの新制度「育成就労」の運用方針を閣議決定しました。2027年度からスタートするこの制度は、これまでの技能実習制度に代わる画期的な仕組みです。

在日外国人の方、そして外国人を雇用する企業の経営者・人事担当者の皆さまにとって、今後のキャリアや人材戦略に直結する重要な情報をお届けします。

目次

  1. 育成就労制度とは?従来との違い
  2. 受け入れ上限123万人の意味
  3. 対象となる17分野と特定技能19分野
  4. 育成就労から特定技能へのステップアップ方法
  5. 企業が今すぐ準備すべきこと
  6. 外国人材が知っておくべきポイント
  7. 行政書士が見る制度改正の本質
  8. まとめ:2027年に向けた行動計画

1. 育成就労制度とは?従来との違い

📌 技能実習制度の課題

これまでの技能実習制度は「国際貢献」を建前に、開発途上国への技能移転を目的としていました。しかし実態は、日本の労働力不足を補う制度として機能してきました。

そこには多くの課題がありました:

  • 転職が原則できない(職場環境が悪くても我慢せざるを得ない)
  • 3年または5年で必ず帰国(せっかく育てた人材が定着しない)
  • 「実習」という名目と実際の労働実態の乖離
  • 一部の受け入れ機関における不適切な労働環境

✨ 育成就労制度の特徴

新制度「育成就労」は、こうした課題を踏まえて設計されています:

✅ 目的の明確化
「人材育成」と「労働力確保」を明確に位置づけ、建前と実態の乖離を解消

✅ キャリアパスの確立
育成就労(3年)→特定技能(中長期在留)という明確な道筋

✅ 柔軟性の向上
一定の条件下で転職が可能になる方向(詳細は今後の省令で規定)

✅ 一体運用
特定技能制度との連携により、人材の長期定着を促進


2. 受け入れ上限123万人の意味

今回の閣議決定で示された数字を整理しましょう。

📊 育成就労:42万6,200人

2027年度から2年間(2027〜2028年度)の受け入れ上限です。これは新規に入国する外国人材の枠と考えてください。

📊 特定技能:80万5,700人

既存の特定技能制度の上限です。育成就労から移行してくる人材や、直接特定技能として入国する人材が含まれます。

📊 合計123万1,900人の意味

これは「在留可能な最大人数」ではなく、各制度における「枠」です。出入国在留管理庁が、各産業分野の人手不足数を算出して設定しています。

📈 比較のために数字を見てみると:

  • 現在の技能実習生:約35万人(2023年末時点)
  • 現在の特定技能:約21万人(2024年6月時点)

新制度では、これが大幅に拡大されることになります。日本の労働市場において、外国人材がいかに不可欠な存在になっているかが分かります。


3. 対象となる17分野と特定技能19分野

🏢 育成就労の対象17分野

育成就労制度では、以下の分野が対象となります:

  1. 農業
  2. 漁業
  3. 飲食料品製造業
  4. 外食業
  5. 介護
  6. 建設
  7. 造船・舶用工業
  8. 自動車整備
  9. 航空
  10. 宿泊
  11. ビルクリーニング
  12. 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業
  13. 繊維・衣服
  14. その他製造業分野

(※正確な17分野の詳細は今後の省令で明示されますが、「リネンサプライ」「物流倉庫」「資源循環」が加わる予定)

🌐 特定技能の対象19分野

特定技能は育成就労の17分野に加えて、さらに2分野が追加されます。これにより、より幅広い産業で外国人材を受け入れることが可能になります。

💡 企業が注目すべきポイント

自社の業種が対象分野に含まれているかを確認することが第一歩です。対象分野であれば、人材確保の選択肢として育成就労・特定技能を検討する価値があります。


4. 育成就労から特定技能へのステップアップ方法

新制度の最大の特徴は、明確なキャリアパスです。

STEP 1:育成就労(原則3年)

外国人材は、まず「育成就労」の在留資格で入国します。この3年間で、日本語能力と専門技能を磨きます。

企業の役割:

  • OJT(実務を通じた教育)
  • 日本語学習のサポート
  • 技能試験対策の支援
  • 適正な労働環境の提供

STEP 2:試験に合格

3年間の育成就労期間を経て、以下の2つの試験に合格する必要があります:

① 技能試験
各分野で定められた技能レベルを測る試験。例えば介護分野なら介護技能評価試験など。

② 日本語試験
日本語能力試験N4レベル以上(分野により異なる)が一般的な基準です。

STEP 3:特定技能へ移行

両試験に合格すれば、「特定技能1号」へ移行できます。特定技能では:

  • 最長5年の在留が可能(分野により無期限)
  • 転職の自由度が高い
  • 家族帯同が認められる場合も(特定技能2号の場合)

✅ 企業にとってのメリット

「3年育てて、その後も長期雇用できる」これが最大のメリットです。従来の技能実習では、せっかく育てた人材が帰国してしまう「育成コストの回収不能」問題がありましたが、新制度ではそれが解消されます。


5. 企業が今すぐ準備すべきこと

2027年度開始まで、約1年の準備期間があります。この期間に何をすべきか、具体的にお伝えします。

① 制度理解と情報収集

まずは新制度の正確な理解から。出入国在留管理庁や各業界団体から発表される詳細情報を継続的にチェックしましょう。

情報源:

  • 出入国在留管理庁の公式サイト
  • 業界団体の説明会・セミナー
  • 行政書士などの専門家

② 受け入れ体制の整備

労務管理の見直し

  • 外国人材にも分かりやすい就業規則
  • 多言語対応のマニュアル作成
  • 相談窓口の設置

住居・生活サポート

  • 社宅や寮の確保
  • 生活オリエンテーションの実施
  • 地域との交流機会の提供

③ 日本語教育サポートの充実

特定技能への移行には日本語試験の合格が必須です。企業がどこまでサポートできるかが、人材の定着率を左右します。

具体例:

  • 社内日本語教室の開催
  • オンライン学習ツールの提供
  • 試験費用の補助

④ キャリアパスの明示

「3年後、試験に合格すれば特定技能として働き続けられる」というキャリアの道筋を明確に伝えることが、外国人材のモチベーション向上につながります。

⑤ 登録支援機関との連携

特定技能外国人の支援は、登録支援機関に委託することも可能です。自社だけで対応が難しい場合は、専門機関との連携を検討しましょう。


6. 外国人材が知っておくべきポイント

在日外国人の方、そしてこれから日本で働くことを考えている方へ、新制度で押さえるべきポイントをお伝えします。

① 長期キャリアの可能性

従来の技能実習は「3年または5年で帰国」が原則でしたが、育成就労制度では、試験に合格すれば特定技能として長く働くことができます。

🌟 日本でのキャリア形成:

  • 育成就労3年→特定技能5年=最長8年
  • 分野によっては特定技能2号で無期限滞在も可能
  • 永住許可申請の要件も満たしやすくなる

② 試験合格が鍵

特定技能への移行には、技能試験と日本語試験の両方に合格する必要があります。

学習計画の重要性:

  • 入国前から日本語学習を開始
  • 働きながら計画的に勉強時間を確保
  • 企業のサポート制度を活用

③ 転職の可能性

新制度では、一定の条件下で転職が認められる方向で調整されています(詳細は今後の省令で規定)。

重要なポイント:

  • 労働環境に問題がある場合の救済措置
  • ただし、むやみな転職は推奨されない
  • 同じ企業で長く働くことが、特定技能移行への近道

④ 権利と義務を知る

外国人労働者にも、日本人と同等の労働者としての権利があります。

知っておくべき権利:

  • 最低賃金以上の給与
  • 労働時間・休日の規定
  • 労災保険・社会保険への加入
  • ハラスメントからの保護

問題があれば、監理団体や労働基準監督署、行政書士などの専門家に相談しましょう。


7. 行政書士が見る制度改正の本質

行政書士として外国人関連法務に携わる立場から、今回の制度改正の本質をお伝えします。

🔍 建前と実態の一致

最も重要なのは、「国際貢献としての技能移転」という建前と、「労働力確保」という実態の乖離を、政府が正式に認めたことです。

これにより:

  • 制度設計がより実態に即したものになる
  • 外国人材の権利保護が強化される
  • 企業も堂々と「労働力」として受け入れ計画を立てられる

🔄 人材の「使い捨て」から「育成・定着」へ

従来の技能実習制度は、「3年働いたら帰国」という前提でした。しかし企業の本音は「できれば長く働いてほしい」。この矛盾が解消されます。

🤝 Win-Winの関係:

  • 企業: 育成コストを回収でき、長期的な人材確保が可能
  • 外国人材: キャリアを積み上げ、より良い待遇を得られる

⚖️ コンプライアンスの重要性増大

制度が「労働力確保」を正面から認めたことで、逆説的に労働環境の適正化が厳しく求められます。

今後強化される可能性:

  • 受け入れ企業の要件厳格化
  • 監理団体・登録支援機関への監督強化
  • 外国人からの相談・通報体制の整備

適正な受け入れを行う企業だけが、優秀な外国人材を確保できる時代になります。

🌏 グローバル人材獲得競争の激化

世界的に見ると、優秀な外国人材の獲得競争は激化しています。日本だけでなく、韓国、台湾、シンガポール、オーストラリアなども積極的に外国人材を受け入れています。

日本が選ばれるために:

  • 適正な賃金と労働条件
  • キャリアアップの機会
  • 暮らしやすい生活環境
  • 差別のない社会

新制度は、日本が国際的な人材獲得競争で勝ち残るための一歩でもあります。


8. まとめ:2027年に向けた行動計画

2027年度の育成就労制度開始まで、約1年。この期間をどう使うかが、企業にとっても外国人材にとっても重要です。

📋 企業の行動計画

2026年(準備期間)

  • ☐ 制度の詳細情報を継続的に収集
  • ☐ 受け入れ体制の整備(住居、マニュアル、サポート体制)
  • ☐ 社内の理解促進(経営層、現場社員への説明)
  • ☐ 予算確保(受け入れコスト、支援コスト)
  • ☐ 監理団体・登録支援機関との連携検討

2027年度(制度開始)

  • ☐ 実際の受け入れ開始
  • ☐ 育成計画の実施
  • ☐ 定期的なフォローアップ
  • ☐ 日本語・技能学習のサポート

2029年度以降(特定技能移行期)

  • ☐ 試験対策サポート
  • ☐ 特定技能への移行手続き
  • ☐ 長期雇用を見据えたキャリアプラン提示

📝 外国人材の行動計画

入国前

  • ☐ 日本語学習の開始(最低でもN5〜N4レベル)
  • ☐ 対象分野の基礎知識習得
  • ☐ 日本の文化・生活習慣の学習

育成就労期間(3年間)

  • ☐ 業務スキルの習得
  • ☐ 日本語能力の向上(N4→N3→N2を目指す)
  • ☐ 技能試験の範囲を意識した学習
  • ☐ 日本での生活基盤の確立

特定技能移行準備

  • ☐ 技能試験・日本語試験の受験
  • ☐ 合格後の在留資格変更申請
  • ☐ キャリアプランの再設計

💼 専門家への相談のタイミング

こんなときは、行政書士などの専門家にご相談ください:

企業の場合 外国人材の場合
  • 受け入れ要件を満たしているか不安
  • 手続きの流れが分からない
  • 既存の外国人材を新制度に移行させたい
  • トラブルが発生した
  • 在留資格の変更について知りたい
  • 試験の要件が分からない
  • 職場でトラブルがある
  • 家族を呼び寄せたい

最後に

育成就労制度は、日本の外国人材受け入れ政策における大きな転換点です。

企業にとっては、人材不足を解消し、グローバル化を進めるチャンス。
外国人材にとっては、日本で長期的なキャリアを築くチャンス。

双方がWin-Winの関係を築くためには、制度を正しく理解し、適切に運用することが不可欠です。

分からないことや不安なことがあれば、遠慮なく専門家に相談してください。
一緒に、新しい時代の外国人材受け入れを成功させましょう。

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