はじめに:過去最多257万人が示す日本の労働市場の転換点
2026年1月30日、厚生労働省が発表した統計は、日本の労働市場における歴史的な転換点を示すものでした。2025年10月末時点で、国内で働く外国人労働者が過去最多の257万1,037人に達し、前年同期比で26万8,450人増加。13年連続の最多更新となりました。
この数字は単なる統計ではありません。日本社会が構造的な人手不足に直面し、外国人材なくしては経済活動が成り立たない時代に入ったことを意味しています。
本記事では、行政書士としてビザ申請・在留資格申請の最前線で活動してきた経験をもとに、企業経営者、人事担当者、そして在日外国人の皆様が知っておくべき重要なポイントを徹底解説します。
記事参照元: 読売新聞オンライン – 外国人労働者13年連続増加
1. 外国人労働者257万人の内訳から見える日本の現状
1-1. 国籍別データが示す採用トレンドの変化
今回の発表で明らかになった国籍別の内訳は以下の通りです:
- ベトナム: 60万5,906人(23.6%)
- 中国: 43万1,949人(16.8%)
- フィリピン: 26万869人(10.1%)
ベトナムが最多となった背景には、技能実習生や特定技能外国人としての受け入れが積極的に進んだことがあります。一方、かつて最多だった中国は割合としては減少傾向にあり、採用する国籍の多様化が進んでいることがわかります。
1-2. 在留資格別データに見る「専門人材シフト」
在留資格別の内訳で特に注目すべきは以下の点です:
- 専門的・技術的分野の在留資格: 86万5,588人(最多)
- 特定技能、技術・人文知識・国際業務、高度専門職などが含まれる
- 身分に基づく在留資格: 64万5,590人
- 永住者、日本人の配偶者等、定住者など
- 技能実習: 49万9,394人
この数字から読み取れる重要なポイントは、「単純労働」から「専門性を持つ人材」へのシフトが明確になっていることです。企業が求める人材像が変化し、それに応じて在留資格の選択も高度化・複雑化しています。
1-3. 小規模事業所での外国人雇用が6割を占める意味
外国人を雇用する事業所数は過去最多の37万1,215か所に達し、そのうち従業員30人未満の小規模事業所が約6割を占めています。1事業所あたりの平均雇用人数は6.9人です。
これは何を意味するのでしょうか?
「外国人雇用は大企業だけの話」という認識は完全に過去のものになりました。
中小企業、個人事業主レベルでも外国人材の採用が日常的になっており、それに伴い在留資格管理や労務管理の知識が幅広い事業者に必要とされる時代になったのです。
2. 企業経営者・人事担当者が直面する在留資格管理のリスク
2-1. 在留資格と業務内容のミスマッチリスク
外国人労働者を採用する際、最も多いトラブルが「在留資格と実際の業務内容が合っていない」というケースです。
典型的な失敗例:
- 「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で採用したのに、実際には単純作業をさせていた
- 「留学」の資格外活動許可で週28時間を超えて働かせていた
- 「特定技能」の業務区分と実際の仕事内容が異なっていた
在留資格は、それぞれに「従事できる活動」が厳密に定められています。このルールを守らないと、企業は不法就労助長罪に問われる可能性があり、外国人本人も在留資格取消や強制退去のリスクを負います。
2-2. 在留期間の更新管理が甘いことによる就労不可状態
もう一つの頻繁なトラブルが、在留期間の更新手続きの遅延や見落としです。
在留資格には必ず「在留期間」が設定されており、期限が来る前に更新申請を行わなければなりません。更新申請中も在留カードに記載された期限までは就労が可能ですが、期限を過ぎてしまうと不法滞在となり、即座に就労不可となります。
企業としては、雇用している外国人労働者全員の在留期限を一覧で管理し、3か月前には更新準備を始める体制を整えることが重要です。
2-3. 転職・配置転換時の資格変更手続きの見落とし
外国人労働者が転職する場合、あるいは社内で職種が大きく変わる場合、在留資格の変更が必要になることがあります。
たとえば:
- 「技能実習」から「特定技能」への移行
- 「技術・人文知識・国際業務」での職種変更(通訳→エンジニアなど)
- 「特定活動」から「技術・人文知識・国際業務」への変更
これらの変更手続きを怠ると、不法就労状態になる可能性があります。
3. 在留資格の種類と選択基準を正しく理解する
3-1. 特定技能制度とは何か?企業が活用すべき理由
2019年に創設された「特定技能」制度は、人手不足が深刻な産業分野において、一定の専門性・技能を持つ外国人材を受け入れる仕組みです。
現在、以下の分野で受け入れが認められており、今後もさらに拡大予定です:
- 介護、ビルクリーニング、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食、自動車運送業、鉄道、林業
特定技能のメリット:
- 技能実習と異なり転職が可能
- 最長5年間(特定技能2号の場合は更新可能で家族帯同も可)
- 即戦力として期待できる人材を確保できる
企業が特定技能外国人を雇用する際には、受入れ機関として一定の義務(支援計画の作成・実施など)を負うため、制度理解と適切な管理体制が必須です。
3-2. 技術・人文知識・国際業務ビザの適用範囲
いわゆる「就労ビザ」の代表格が「技術・人文知識・国際業務」です。
該当する職種例:
- エンジニア、プログラマー、設計技師(技術)
- 企画、営業、経理、総務、人事、法務(人文知識)
- 通訳、翻訳、語学教師、海外取引業務(国際業務)
この在留資格を取得するには、原則として大学卒業または日本の専門学校卒業(専門士)の学歴、あるいは実務経験(10年以上、通訳・翻訳は3年以上)が必要です。
注意点: 単純作業や現場作業は原則として認められません。「事務職として採用したが、実際には倉庫作業ばかり」といったケースは資格外活動となります。
3-3. 技能実習制度の現状と今後の方向性
技能実習制度は、開発途上国への技術移転を目的とした制度ですが、実態として人手不足を補う手段として活用されてきた側面があります。
今回の統計では技能実習が約50万人となっていますが、今後は特定技能への移行が進むと予想されます。2027年には技能実習制度が育成就労へ変更予定で、より実態に即した新しい枠組みへの転換が検討されています。
企業としては、現在技能実習生を受け入れている場合、特定技能への移行ルートを検討することが重要です。
4. 在日外国人が知っておくべき在留資格管理の基礎知識
4-1. 自分の在留資格でできること・できないこと
在留カードには、あなたの在留資格、在留期間、就労制限の有無が記載されています。
必ず確認すべきポイント:
- 在留資格の種類
- 在留期限(更新が必要な日)
- 就労制限の有無(「就労不可」「就労制限なし」など)
「留学」の在留資格で「資格外活動許可」を得ている場合、週28時間以内のアルバイトが可能ですが、それを超えると不法就労となります。
4-2. 転職・起業時に必要な手続き
転職する場合:
- 在留資格によっては「就労資格証明書」の取得が推奨されます
- 転職先での職務内容が現在の在留資格で認められる範囲内かを確認
- 転職後14日以内に入管へ「所属機関の変更届出」を提出
起業する場合:
- 「技術・人文知識・国際業務」から「経営・管理」への在留資格変更が必要
- 事業計画、資本金(原則3000万円以上)、事務所の確保などが審査される
4-3. 家族の呼び寄せ(家族滞在)の条件と注意点
日本で安定した生活基盤を築いたら、配偶者や子どもを呼び寄せたいと考える方も多いでしょう。
家族滞在ビザの条件:
- 本人(扶養者)が一定の在留資格(就労系、留学など)を持っていること
- 扶養能力があること(収入証明が必要)
- 対象は配偶者と未成年の子ども
家族滞在ビザで来日した家族も、資格外活動許可を得れば週28時間以内の就労が可能です。
5. 在留資格申請の実務:スムーズな申請のためのポイント
5-1. 必要書類の準備と申請タイミング
在留資格の申請には、多数の書類が必要です。申請の種類や在留資格によって異なりますが、一般的に必要なものは:
共通書類:
- 申請書(入管指定様式)
- パスポートと在留カード
- 顔写真
- 手数料(更新の場合4,000円)
内容に応じて追加で必要な書類:
- 雇用契約書、労働条件通知書
- 会社の登記簿謄本、決算書類
- 卒業証明書、成績証明書
- 職務内容説明書
- 納税証明書、課税証明書
申請タイミング:
- 在留期間更新:期限の3か月前から申請可能
- 在留資格変更:転職・職務変更が決まり次第速やかに
早めの準備と申請が、トラブルを避ける鉄則です。
5-2. 不許可になる主な理由と対策
在留資格申請が不許可になる主な理由は以下の通りです:
- 学歴・職歴と職務内容の関連性が証明できない
→ 詳細な職務内容説明書で関連性を明確に示す - 会社の安定性・継続性に疑問がある
→ 決算書、事業計画書で経営状態を証明 - 過去の在留状況に問題がある
→ 納税義務の履行、オーバーステイの有無などが審査される - 提出書類の不備や説明不足
→ 専門家のチェックを受ける
不許可になると再申請が必要になり、時間と費用がかかります。初回申請時に万全の準備をすることが重要です。
5-3. 行政書士に依頼するメリットとコスト
在留資格申請は自分で行うこともできますが、専門家である行政書士に依頼するメリットは大きいです。
行政書士に依頼するメリット:
- 複雑な要件の正確な判断
- 必要書類の的確な選定と作成サポート
- 申請書類の精度向上による許可率の向上
- 時間と手間の大幅な削減
- 不許可リスクの最小化
費用の一般的な目安:
- 在留期間更新:5万円〜8万円
- 在留資格変更:8万円〜10万円
- 在留資格認定証明書交付申請:8万円〜15万円
- 永住許可申請:10万円〜20万円
費用はかかりますが、不許可による損失や再申請の手間を考えると、専門家への依頼は合理的な選択といえます。
6. これからの外国人雇用で企業が取り組むべきこと
6-1. コンプライアンス体制の構築
外国人労働者数が増加する中、企業には以下の体制整備が求められます:
- 在留資格管理システムの導入
- 全従業員の在留期限を一元管理
- 更新時期の自動アラート機能
- 入社時の在留資格確認フローの確立
- 在留カードの目視確認
- 在留カード番号の真正性確認(入管のオンラインシステム利用)
- 定期的な社内研修
- 人事担当者向けの在留資格基礎研修
- 現場管理職向けの適正就労管理研修
6-2. 外国人材が定着する職場環境づくり
在留資格管理だけでなく、外国人材が長く働きたいと思える環境づくりも重要です。
具体的な取り組み例:
- 多言語での社内情報提供(就業規則、給与明細など)
- 文化・宗教への配慮(礼拝室、食事オプションなど)
- キャリアパスの明確化
- メンター制度の導入
- 日本語学習支援
6-3. 専門家ネットワークの構築
企業が単独ですべての課題に対応するのは困難です。以下の専門家との連携体制を構築しましょう:
- 行政書士: 在留資格申請、ビザ相談
- 社会保険労務士: 労務管理、社会保険手続き
- 税理士: 税務処理、源泉徴収
- 弁護士: 労働紛争、契約関係
専門家ネットワークを持つことで、問題の早期発見と迅速な対応が可能になります。
7. 257万人時代の多文化共生社会に向けて
7-1. 外国人材は「一時的な労働力」ではなく「社会の構成員」
257万人という数字は、もはや外国人材が日本社会にとって「オプション」ではなく「不可欠な存在」になったことを示しています。
今後、日本が目指すべきは、外国人材を単なる労働力として扱うのではなく、社会の構成員として受け入れ、共に成長していく「多文化共生社会」です。
7-2. 企業と外国人材、双方の権利と責任
企業の責任:
- 適正な労働条件の提供
- 在留資格に適合した業務の提供
- 差別のない職場環境の整備
外国人材の責任:
- 在留資格のルール遵守
- 法令・社内規則の理解と遵守
- 積極的なコミュニケーション
双方が責任を果たすことで、健全な雇用関係が築かれます。
7-3. 行政書士として私たちができること
私たちニセコビザ申請サポートセンターは、企業と外国人材の橋渡し役として、以下のサポートを提供しています:
- 在留資格申請の代行とコンサルティング
- 企業向けの外国人雇用管理体制構築支援
- 外国人材向けの在留資格セミナー
- トラブル発生時の初期対応アドバイス
外国人雇用に関する疑問や不安があれば、どんな小さなことでもお気軽にご相談ください。
まとめ:257万人時代に求められる「正しい知識」と「早めの相談」
外国人労働者が過去最多の257万人に達した今、企業にも外国人材にも、これまで以上に正確な在留資格管理が求められています。
企業経営者・人事担当者の皆様へ:
- 在留資格と業務内容の適合性を常に確認
- 在留期限管理の徹底
- 専門家との連携体制の構築
在日外国人の皆様へ:
- 自分の在留資格の内容を正確に理解
- 転職・起業時は必ず事前に確認
- 更新手続きは早めに準備
「知らなかった」「忙しくて後回しにした」が大きなトラブルにつながることがあります。
少しでも不安や疑問があれば、専門家に相談することをお勧めします。適切なアドバイスが、皆様の安心と企業の健全な成長、そして外国人材のキャリア形成につながります。
257万人時代の日本で、企業も外国人材も共に成長できる社会を目指して、私たち行政書士は全力でサポートいたします。
記事参照元: 読売新聞オンライン – 外国人労働者13年連続増加
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