1. 日本の観光地が抱える現実的な課題

新型コロナウイルスの影響で一時落ち込んでいた訪日外国人観光客の数が、現在再び急激に回復しています。

その一方で、日本の観光インフラや文化施設は、増加する来館者に見合ったサービスを維持するための人手や資金に限界を感じ始めています。特に国立博物館や美術館などの公共文化機関は、入館料だけでは運営が立ち行かず、依然として多くを国の交付金に頼っているのが現状です。

こうした中で文化庁が打ち出したのが、「訪日外国人観光客向け入館料の二重価格制度」の導入検討です。

https://news.yahoo.co.jp/articles/9b2841a01a84084e86e4822e7938222f02508594

一部では「差別的」「不公平ではないか」といった批判の声も上がっていますが、私は行政書士として、また外国人対応の実務に日々携わる立場から、この方針に賛成しています。

なぜなら、観光業は今や日本にとって、重要な成長戦略の柱。持続可能な観光資源の維持・発展のためには、「価値に見合った対価」を求める制度の整備が必要不可欠だからです。


2. 二重価格制度とは?その仕組みと意義

今回検討されている二重価格制度とは、在日日本人や永住外国人などの居住者と、短期滞在の訪日外国人観光客とで、入館料に差を設けるという仕組みです。

報道では、現行1000円の入館料が、外国人観光客には2000〜3000円程度になるという試算も出ています。

目的は明確です。多言語対応の音声ガイドや解説パネル、観光客向けの案内スタッフなど、外国人向けに追加で発生する運営コストを、観光客自身に一定程度負担してもらうことで、税金依存から脱却し、より持続可能な観光経営を実現するためです。


3. 世界ではすでに「当たり前」の制度

実はこの「二重価格」という仕組み、世界的には珍しくありません。

たとえばエジプトのピラミッド、インドのタージ・マハルでは、現地住民と外国人観光客の入場料に明確な差がついており、外国人は数倍の料金を支払うのが一般的です。

また2024年からは、フランスのルーブル美術館でもEU域外の訪問者に対し、チケット料金の値上げが実施される予定です。

こうした事例を見ると、「日本だけが特別なことをしているわけではない」ことは明らかです。むしろ、国際的な観光地としての成熟度を高める上でも、自然な流れだといえるでしょう。


4. なぜ“今”なのか?二重価格導入の背景

最大の要因は、国立文化施設の収益構造にあります。実際、国立博物館11館のうち8館は、運営費の50%以上を国の交付金に依存しているという状況です。

しかし、財政が圧迫される中で、今後も同じレベルの公的支援を受け続けるのは現実的ではありません。

ここで求められるのは、サービスの質を下げず、むしろ向上させながらも、「利用者が適正に負担する」新たなビジネスモデルです。

その手段の一つが、今回の「二重価格制度」なのです。


5. 二重価格に賛成する理由:安売りからの脱却を

私は行政書士として、外国人の在留支援や、企業による外国人雇用・入管手続きに長年携わってきました。

その中で強く感じているのが、「日本の観光資源は世界トップクラスなのに、その価値が正当に評価されていない」という現実です。

現場では、質の高いサービスや美術品に触れられるにも関わらず、それに対する価格設定があまりに低いことに、驚く外国人も少なくありません。

確かに“安さ”は魅力の一つですが、それが過剰になると、サービス維持が困難になり、結果的に満足度の低下を招きます。

良質な体験には、適正な価格を設定すべきです。

それは決して搾取ではなく、日本の観光価値を守るための当然のステップです。


6. 二重価格による収益活用で、観光体験の質を向上

二重価格によって生まれる追加収入には、さまざまな前向きな活用法があります。

例えば:

  • バリアフリー化の加速やエレベーター・スロープの整備
  • 英語・中国語・韓国語など多言語対応の拡充
  • 目玉展示の開催頻度アップや、展示解説のデジタル化(ARやVR導入など)

こうした投資は、すべて訪日外国人にとっても大きなメリットとなり、「日本にまた来たい」と思わせる高品質な観光体験へとつながります。

価格に見合ったサービスを提供することで、観光地としての信頼性も高まり、国際的な評価も向上するはずです。


7. オーバーツーリズムの緩和と観光労働者への還元

現在、日本の主要観光地では「人が多すぎる」ことが問題となっています。

京都や浅草、富士山周辺などでは、観光客のマナーや混雑によって、地元住民との摩擦が起きています。

このような「オーバーツーリズム」の解消にも、二重価格は効果的です。

価格が高くなれば、人数はある程度抑えられ、質の高い観光客が増える傾向があります。

さらに、増えた収入は、低賃金が課題となっている観光産業の現場で働く人たちへの処遇改善に回すことも可能です。

待遇が改善されれば、人材の質も上がり、観光客の満足度向上という好循環が生まれるのです。


8. 魅力ある観光業へ。若手人材を惹きつけるチャンス

日本の観光業は、伝統文化、自然、食、芸術など世界に誇る魅力を多く抱えています。

しかし現場では、「給与が低い」「キャリアパスが見えない」といった理由で、若者の就職先としては敬遠されがちです。

その背景には、サービスの安売り体質がありました。

ここで二重価格制度が導入され、観光業における収益性が高まれば、より良い待遇が提供できるようになり、「この業界で働きたい」と思える人材が増える可能性があります。

観光業が“使い捨て労働”の現場から脱し、魅力ある産業へと変わるための大きな一歩になるのではないでしょうか。


9. 在日外国人や企業への影響は?実務面での注意点

今回の「二重価格制度」は、基本的に“訪日観光客”を対象としたものであり、日本に定住している外国人や、企業に雇用されている外国人労働者には適用されない可能性が高いとされています。

つまり、日本国内に生活拠点を持つ外国人には、これまで通りの料金体系が維持される見通しです。

とはいえ、制度の設計次第では、一時的に誤解や混乱が生じることも考えられます。

たとえば、在日外国人が観光で博物館を訪れた際に「観光客」と誤認され、高い料金を請求されるといった事例は、現場対応の仕組み次第で起こり得ます。

企業側としても、外国籍社員がプライベートで観光地を訪れる際にトラブルが起きないよう、制度の内容や運用開始時期について、社内で情報共有しておくことが望ましいでしょう。

私たち行政書士の役割としても、こうした法制度の変化に関する情報提供と、スムーズな対応支援が重要になってくると考えています。


10. 観光と共生社会の未来に向けて

日本の観光業は、これから「数より質」へとシフトしていくべき時代に入っています。

単に“安くてお得”な観光を提供するのではなく、日本ならではの文化や体験に「価値を感じていただく」観光へと進化させることが求められています。

そのためには、適切な価格設定と、持続可能な運営が欠かせません。

今回議論されている「二重価格制度」は、その起点となる施策のひとつです。

そしてそれは、単なる料金の見直しにとどまらず、観光インフラの整備、労働環境の改善、そして国際共生社会の実現に向けた大きな一歩でもあります。

私たちニセコビザ申請サポートセンターは、外国人雇用や入管手続きの専門家として、こうした変化に対応する企業や個人の支援に日々取り組んでいます。

観光業や外国人との共生に関心がある方、今回の制度変更について情報を求めている企業の方は、どうぞお気軽にご相談ください。

一緒に、未来の日本をつくっていきましょう。