1. 技人国ビザとは?基本の理解
「技術・人文知識・国際業務(通称:技人国)」は、
外国人が日本で働くための主要な在留資格の一つです。
対象となる業務には以下のようなものがあります:
- 翻訳・通訳
- 貿易実務
- マーケティング
- システムエンジニアなど
いずれも大学卒業などの学歴や、一定の専門性が必要です。
つまりこの資格は「高度人材」向けであり、
単純作業や肉体労働を目的としたビザではありません。
2. なぜ今、入管庁が動き出したのか
2024年8月、入管庁は「技人国ビザでの派遣労働の実態調査」を本格化すると発表しました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/8941d07b19bad22d048a09decb2e8fe93f650a5a
その背景には以下のような問題の増加があります:
- 資格外活動(ビザの趣旨に反した業務)
- 現場労働や単純作業への従事
- 賃金未払いや過重労働
- 雇用契約と実態の乖離
実際、2024年末時点で技人国の在留者数は約41万人に達し、前年比で約5万人も増加。
このうち1割の約4万人が派遣業者経由で就労しており、
入管庁としても看過できない状況にあります。
3. 派遣労働の現状と課題
派遣会社を通じた外国人雇用は、柔軟な人材配置が可能になる一方で、
実務との乖離が生じやすいのが現実です。
特に問題になるのは、実際の業務内容が在留資格に適合していないケースです。
例えば、
- 工場での単純なライン作業
- 倉庫での荷物の仕分けやピッキング、配送準備
- 店頭での接客対応、販売業務や商品の陳列作業
こうした作業に従事させてしまうと、
技人国の在留資格の趣旨に反する=ビザ違反となってしまう可能性があります。
4. 単純作業とは?どこまでがセーフでどこからがアウト?
「どこまでがOKなのか?」とよく質問を受けます。
OK(適正)な業務例:
- 通訳として現場に入る
- 海外取引の受発注対応
- 外国人労働者への研修資料作成
NG(不適正)な業務例:
- 梱包、仕分けなどマニュアルに基づく単純作業
- 清掃や工場での製造業務など反復作業
- 資格や知識を必要としない作業全般
要は、「誰でもできる仕事」は原則NGと考えてください。
5. 違反が発覚した場合、企業に降りかかるリスクとは
企業側にも大きな責任が問われます。具体的には:
- 外国人雇用に関する是正命令
- 今後の在留資格申請が通りづらくなる
- 場合によっては行政処分や公表
- 社会的信用の低下
- 海外拠点への影響(外国人の信頼喪失)
「知らなかった」「派遣会社に任せていた」では済まされません。
6. 適正運用のための実務ポイント
外国人を派遣・雇用する企業は、以下の点を必ず確認してください:
✅ 業務内容が在留資格の範囲内か?
✅ 契約書と実態が一致しているか?
✅ 派遣元・現場担当と情報共有ができているか?
✅ 定期的な面談・報告体制を設けているか?
✅ 雇用前・更新時に行政書士等の専門家へ相談しているか?
7. 外国人本人にとっての重大な影響
本人にとっても、ルール違反の代償は大きいです:
- 在留資格の取消
- 早期帰国の強制
- 今後のビザ取得への悪影響
- 精神的・経済的ダメージ
彼らは真面目に働きたいだけなのに、制度を正しく理解できていないケースもあります。
だからこそ、企業側が責任を持って適正に管理することが求められます。
8. 現場を見ている行政書士からのアドバイス
行政書士として現場で日々対応していると、
「業務内容の認識違い」が最も多いトラブルの原因であると感じます。
企業内でも、人事は適正に管理していても、
現場で独自の運用がされてしまうことがあります。
そのギャップを埋めるには、
✅ 事前の契約確認
✅ 現場担当者への教育
✅ 外部の専門家による定期的なチェック
これらが極めて重要です。
9. 今後の対策と企業が取るべきアクション
今回の入管庁の動きは「氷山の一角」であり、
今後は「経営・管理」ビザなどにも監視が広がると予想されます。
企業としては、いま一度以下を見直しましょう:
- 外国人雇用の仕組み
- 在留資格と業務の整合性
- 外国人本人への業務説明の丁寧さ
- 外注・派遣先との連携とモニタリング
適正な外国人雇用は、リスク回避だけでなく、
企業の国際競争力・人材多様性を高める大きな資産になります。
ぜひ、早めの体制整備と専門家の活用をおすすめします。