1. はじめに|「JICA事業撤回」という異例の決断

2025年9月、国際協力機構(JICA)が発表した「アフリカ・ホームタウン」事業の撤回が、各メディアで大きく取り上げられました。

https://news.yahoo.co.jp/articles/627a22794c8330a40d015a188716aa912cd1cd59

当初の目的は、アフリカとの国際交流を促進し、日本の自治体を通じた人材育成・研修の受け入れなどを想定していたもの。

ところが、SNSを中心に「移民政策の一環ではないか」「日本にアフリカ人を大量に呼び込むのか」といった誤解が広がり、最終的に自治体が強い社会的プレッシャーを受ける結果に。

この一連の流れは、「情報の誤解が制度や政策にどれほど大きな影響を与えるか」を示す象徴的な出来事でもあります。

本記事では、行政書士として在日外国人支援に携わる視点から、今回のJICA事業撤回をどう読み解き、企業や自治体、そして私たち専門家がどのように対応していくべきかを深掘りしていきます。


2. JICAの「アフリカ・ホームタウン」事業とは?

本来の事業趣旨は、「アフリカの人材と日本の地域社会との結びつきを強化し、持続可能な国際交流のモデルを構築する」こと。

具体的には:

  • アフリカ諸国からの研修生・インターンの受け入れ
  • 自治体との交流事業の促進
  • 経済・教育・文化面での継続的なパートナーシップ形成

というものでした。

JICAとしては「移民政策」ではなく、「交流の促進」に主眼を置いていたのですが、「ホームタウン」という名称が一人歩きし、「定住を前提とした受け入れ」と誤解される結果に。


3. なぜ誤解が広がったのか?SNS時代の情報リスク

今回の炎上の本質は、「制度そのものの問題」ではなく、「情報の伝わり方と受け取り方のギャップ」です。

以下のような要因が絡み合いました:

  • ネーミング(ホームタウン)の曖昧さ
  • 説明不足のまま進行した広報戦略
  • SNSでの断片的な情報拡散
  • 「移民=不安」という根強いイメージ

つまり、どんなに善意のある制度でも、「伝え方」次第で誤解を生み、それが批判や炎上につながる時代であるということです。


4. 外国人雇用の現場でも起きている「誤解」

行政書士として、企業や個人から多くのご相談を受ける中で、実感するのは「外国人雇用」や「ビザ制度」への誤解が非常に多いこと。

例えば:

  • 技能実習=安価な労働力、という誤認識
  • 永住者=帰化したがっている、という誤解
  • 外国人社員=管理が難しい、という偏見

こうした先入観は、社内の理解を妨げ、採用や定着支援の障壁にもなります。

JICAの件と同様、外国人受け入れに対してネガティブな反応が起こる背景には、「正確な制度理解」と「丁寧な説明の不足」があるのです。


5. 誤解を防ぐには?行政・企業・専門家ができること

では、こうした誤解を防ぐために何ができるのでしょうか?

まず大前提として、「制度は正しく設計されていても、説明が届かなければ意味がない」ということ。

その上で、以下のような取り組みが有効です:

  • 制度の目的と影響範囲を明確にする資料作成
  • 専門家による第三者的な情報解説の活用
  • 社内外への丁寧な説明と質疑応答の場の設計
  • SNSなど広報チャネルでの表現見直し

私たち行政書士も、書類作成だけでなく「制度の翻訳者」としての役割を担うことが求められています。


6. 自治体・企業に求められる「受け入れ体制の設計」

外国人を受け入れる上で、制度的な整備だけでなく、「受け入れの気持ちづくり」が不可欠です。

企業であれば:

  • 外国人社員向けマニュアルの整備
  • 日本人社員への多文化理解研修
  • 在留資格変更や更新の支援制度

自治体であれば:

  • 外国人向けの行政窓口の充実
  • 生活支援NPOとの連携
  • 多言語対応の強化

つまり、“物理的な受け入れ”ではなく“文化的・気持ち的な受け入れ”まで設計することが、長期的な定着・活躍に繋がります。


7. 誤解を恐れず、丁寧に対話を重ねる姿勢が鍵

今回のJICAの撤回は、痛みを伴う決断でしたが、一方で「誤解を正すための対話の重要性」を私たちに教えてくれました。

行政・企業・専門家・地域住民、それぞれが自分ごととして考え、関わる意識が不可欠です。

外国人受け入れとは、制度論だけでは完結しない“人と人の関係構築”なのです。「なんとなく」であっても、不安がある以上、まわりの人たちの理解が得られず、これを解消していかなければ、共生は前進していかないでしょう。


8. 今後の国際交流と受け入れのあり方とは?

外国人の受け入れや国際交流は、これからの地域・企業にとって避けて通れないテーマです。

ただしその際に求められるのは、「スピード」よりも「共感」と「納得」。

JICAの撤回は、丁寧な設計・広報・対話を怠ったときのリスクを明確に示しました。

今後、行政も企業も「受け入れの質」を高めていくことが重要です。


9. 行政書士としての役割とご支援について

私たち行政書士は、単に「書類を作る人」ではありません。

  • 制度を正しく伝える解説者
  • 外国人と企業・地域をつなぐ翻訳者
  • 不安を解消する相談相手

として、伴走的な支援が可能です。

外国人雇用における制度設計、社内マニュアル作成、入国管理局とのやり取りまで、一貫してサポート可能ですので、お気軽にご相談ください。


10. まとめ|制度と心の両輪を回す支援を

制度が正しくても、誤解があれば炎上する。
支援の気持ちがあっても、仕組みがなければ継続しない。

今回のJICAの事例は、「外国人との共生」や「国際人材活用」を進める上で、私たちが何を整えるべきかを改めて教えてくれました。

行政・企業・地域、そして私たち専門家が連携して、「誤解のない安心できる受け入れ体制」を築いていきましょう。