1. 改正が続く「経営・管理」ビザ

2025年10月、外国人が日本で起業する際に取得する「経営・管理」ビザに関する制度が、大きく変わろうとしています。

今年8月に発表された資本金要件の大幅な引き上げに続き、
新たに「日本語能力」を要件に加える方針が報道されています。

https://news.yahoo.co.jp/articles/c7b6db0ec0741e30a547d58125180cef77529f54

これは、日本での起業を目指す外国人にとって、見逃せない重大な動きです。

本記事では、前回の記事で解説した資本金要件の改正内容を踏まえつつ、
新たに浮上した「日本語要件」について詳しく解説し、起業を予定されている方・外国人を雇用する企業の方に向けて、実務的な対策もご紹介します。


2. 「経営・管理」ビザとは?

「経営・管理」ビザとは、日本で事業を始めたり、企業の経営管理に従事したりする外国人に対して発給される在留資格です。

主な対象は、

  • 外国人として日本で会社を立ち上げる方
  • 外国企業の日本支店を運営する方
  • 外国籍の経営幹部を招聘する企業

などが挙げられます。

従来からの要件としては、

  • 事務所の確保
  • 資本金(出資金)500万円以上
  • 継続性のある事業計画

などがありました。


3. 2025年改正の第一弾:資本金要件の引き上げ

2025年10月の省令改正により、資本金(出資金)の最低額がこれまでの500万円から3000万円に大幅引き上げされる見込みです。

この背景には、「ペーパー会社」や不正な就労目的でのビザ取得を防止する狙いがあります。

この件については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

👉 経営・管理ビザの改正内容を徹底解説|2025年10月施行予定


4. 第二弾:日本語能力要件の追加とは?

今回の発表で新たに注目を集めているのが、
「相当程度の日本語能力」をビザ取得の条件とする方針です。

入管庁は、申請者本人または常勤職員のどちらかに対して、
「B2レベル(中上級)の日本語力」を求めるとしています。

日本語が得意でない外国人起業家であっても、
適切な日本人スタッフや日本語堪能な職員を雇うことで要件をクリアできるような設計です。


5. 要件の詳細(B2レベルとは?常勤職員で代替可能)

ここで気になるのが「B2レベルとは何か?」という点です。

B2はCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)の基準で「中上級」とされ、

  • 日常会話はほぼ問題なくこなせる
  • 複雑な業務上の指示も理解できる
  • 書類の読解やビジネス文書の作成もある程度可能

という水準を指します。

加えて、本人が日本語を話せない場合でも、常勤職員がこの要件を満たせばOKという柔軟性がある点は注目に値します。

ただし、ここでいう「常勤」は、

  • 労働契約上のフルタイム勤務
  • 実態として事務所に常駐している
  • 単なる「名義貸し」ではない

ことが求められます。


6. なぜ今、日本語要件が求められるのか

背景にあるのは、外国人起業家による“制度の形骸化”と“地域との摩擦”です。

事務所を借りて資本金さえ用意すれば、事実上は日本語が全くできなくても起業できる状態に対して、
地方自治体や地域社会から「対応が難しい」「信頼性が低い」といった声が寄せられていました。

法務大臣の報告書でも「社会との摩擦を減らすために、日本語力の確保が必要」と明記されています。


7. 起業希望者・企業側が取るべき対応

起業希望者としては、

  • 日本語を学習してB2レベルを目指す
  • 信頼できる日本人職員を事前に採用する
  • 実態のある事務所を設ける
    など、計画段階から要件を意識した設計が必要です。

外国人を幹部に迎える企業の場合は、

  • 日本語力の証明書類(JLPTやJPTなど)の準備
  • 雇用契約の明確化と実態の担保
  • 入管への提出書類における記載の整合性
    など、人的・書類面のサポートが重要となります。

8. よくある誤解と注意点

「通訳を雇えばいいから、日本語は不要では?」という声もありますが、
今回の要件は「通訳ではなく、常勤職員であること」が前提です。

また、「一時的に在籍させておけばいい」といった形式的な雇用も、入管審査では厳しく見られます。おそらく、「雇用契約書」「賃金台帳」「源泉所得税の法定調書合計表」「日本人従業員の住民票」等、様々な証拠の提示を求められるでしょう。

ビザ取得のためだけの“見せかけ雇用”は、将来的な在留資格の取消や再申請時の不許可に繋がるリスクもあります。


9. 行政書士からのアドバイス

私たちはこれまで、外国人起業・ビザ取得の支援に数多く携わってきました。

今回の日本語要件追加は、「排除」ではなく「信頼の担保」のための制度と捉えるべきです。

要件をしっかり理解し、正面から取り組むことで、日本でのビジネスはよりスムーズに、より永続的になります。

「どのレベルの日本語が必要?」
「この職員で要件を満たせる?」

といった実務的な疑問にも、具体的にアドバイス可能です。


10. まとめ:信頼される外国人起業のために

2025年10月から始まる「経営・管理」ビザの新要件は、

  • 資本金3000万円以上
  • 常勤従業員1名以上の雇用
  • B2相当の日本語能力(本人または常勤職員)

という3つのハードルが設けられることで、今後の外国人起業の質がより問われる時代に入ります。

ただし、これは「排除の制度」ではなく、「持続可能な外国人経営者の受け入れ」を実現するためのルールです。

制度を正しく理解し、着実に準備を進めることが、信頼される起業の第一歩になります。