はじめに
2025年7月、千葉県八街市で農業従事者2名が「不法就労助長」の疑いで書類送検されました。報道によれば、いずれも在留期限を過ぎたタイ人を農場で働かせていたとされ、容疑者は「人手が足りなかった」「日本人はすぐ辞めてしまう」と供述しています。
このニュースは、地方の農業現場だけでなく、外国人を雇用するすべての業種にとって他人事ではありません。特に、技能実習や特定技能といった制度の活用が進むなかで、「制度の正確な理解」なくしては、雇用主自身が処罰の対象になりかねないという事実を改めて浮き彫りにしました。
本記事では、行政書士の立場から、不法就労助長のリスクと対策について、農業現場の実例をもとに詳しく解説します。
1. 不法就労助長とは?雇用主にも課せられる責任
「不法就労助長」とは、在留資格のない外国人を働かせたり、働かせるために斡旋したりする行為を指します。これは入管難民法における重大な違反であり、雇用主自身が「知らなかった」「善意だった」と主張しても、罰則の対象となる可能性が高いのです。
今回のケースでは、外国人側が「働かせてほしい」と訪ねてきたという経緯もあるようですが、それでも雇った側が書類送検されています。つまり、「本人が自ら望んだ労働」であっても、雇用主が適切な在留資格を確認せずに働かせれば、責任を問われるのです。
2. 農業における人手不足と外国人労働力への依存
農業分野では、高齢化や過疎化により慢性的な人手不足が続いており、多くの地域で外国人労働者の力を借りることが必要不可欠になっています。
しかし、それに伴い増加しているのが「制度の理解不足によるトラブル」です。
- 技能実習制度を活用するには監理団体を通す必要がある
- 特定技能は受け入れ基準や試験がある
- 留学生のアルバイトには週28時間の制限がある
- 在留期限を過ぎて働かせると雇用主が罪に問われる
これらの制度は複雑で、年々見直しも行われているため、「一度理解すれば大丈夫」とはいきません。
3. 不法就労が発覚した際のリスクと影響
万が一、不法就労が発覚した場合、雇用主には以下のようなリスクがあります:
- 3年以下の懲役または300万円以下の罰金(またはその両方)
- 企業名の報道や行政処分による信用低下
- 雇用していた外国人の退去強制処分
- 今後の外国人雇用に関する行政手続きの信用喪失
つまり、目先の人手確保のために制度を軽視すると、長期的には大きな損失につながる可能性があるのです。
4. 外国人を雇用する際に企業側が行うべき確認ポイント
不法就労助長を防ぐために、企業や農家が最低限確認すべきポイントは以下の通りです:
- パスポートと在留カードの原本を確認する
- 在留資格の種類と、就労可否の範囲を理解する
- 在留期限が有効かどうかを確認する
- 就労時間・業務内容が制限に抵触していないか検討する
- 必要に応じて行政書士などの専門家に事前相談する
「とりあえず働いてもらって、あとから確認」は通用しません。
必ず雇用契約を結ぶ前に確認を終えておくべきです。
5. 行政書士ができる支援と役割
行政書士は、在留資格に関する申請取次のほか、外国人雇用に関する法的リスクのチェック、必要な届出や申請書類の作成支援など、制度の“翻訳者”として企業をサポートします。
特に農業や中小企業では、制度の全体像を把握しきれず、「知らぬ間に不法就労」になってしまうケースが多く見られます。そうしたリスクを未然に防ぐためにも、制度設計から運用まで伴走する専門家の存在が重要です。
6. 外国人雇用は“リスク”ではなく“チャンス”
制度に沿って適切に雇用を行えば、外国人材は企業にとって非常に大きな戦力となります。語学力や異文化理解力、勤勉さといった強みは、現場に新しい風をもたらしてくれるでしょう。
不確実な情報に惑わされず、正確な知識と制度理解に基づいた対応を行うことで、外国人雇用は「人手不足解消」だけでなく「組織の成長戦略」にもなり得ます。
まとめ
不法就労助長のリスクは、決して特殊なケースではありません。現場の人手不足という“善意”が、制度理解不足によって“違法”に転じるのは、非常に残念なことです。
行政書士として、私たちは外国人雇用を希望するすべての事業者に対して、適法かつ実践的な支援を提供しています。
「外国人を雇いたいけど、制度が不安…」
「今雇っている人は本当に適法なのか?」
そんな疑問があれば、ぜひお気軽にご相談ください。