2025年の大阪・関西万博を控え、訪日外国人観光客(インバウンド)の増加が加速する中、違法な旅客運送、いわゆる「白タク」行為が全国各地で問題となっています。特に関西圏では、神戸空港や関西国際空港といった国際的な玄関口を起点に、不正な運送サービスが横行している実態が報道されています。今回は、最近発覚した「白タク」事件をもとに、この問題の本質と、地域に根差す正規事業者としての私たちの使命について考えてみます。

■事件の概要と社会的影響 2024年6月、神戸市内に住む中国籍の40代女性が、神戸空港で台湾からの訪日家族を自家用車に乗せ、運賃を受け取る形で京都市内へ運送しようとしたとして、道路運送法違反(有償運送の禁止)の容疑で兵庫県警に逮捕されました。この女性は2年ほど前から、WeChat(中国SNS)を通じて来日予定の中国人観光客とつながり、関空や神戸空港から京都・大阪方面へと有償で送迎を繰り返していたとされています。

料金は正規タクシーの相場よりも安く、今回のケースでは1,000元(約2万円)での契約だったと報じられています。

■「白タク」の何が問題なのか? 白タク行為は、一見すると「安くて便利なサービス」のように映るかもしれませんが、以下のような重大な問題を孕んでいます:

  1. 安全性の欠如  運転者は運輸局による適性審査を受けておらず、車両も旅客運送基準を満たしていないことが多いため、事故時の責任の所在が不明確です。
  2. 法的な保護がない  正規のタクシーと異なり、万が一の事故やトラブルにおいて乗客に補償がなされないリスクがあります。
  3. 税務・雇用の不正  収入が申告されていない可能性が高く、正規事業者が守るべき税務・労務義務を回避しているケースが多々見られます。

■なぜ白タクが横行するのか? インバウンド客にとって言語の壁や予約の手間、価格の不透明さが正規の移動手段の利用を妨げていることがあります。また、SNSやメッセンジャーアプリの普及によって、非公式なサービスが容易に広がる土壌も整っています。

特に、同胞同士でのやり取りが可能なWeChatのような閉じたプラットフォームでは、監視や取り締まりが困難です。加えて、訪日旅行が「個人手配型」へと変化していることも影響しています。

■正規事業者の使命と対応策 こうした現状において、私たち正規事業者が果たすべき役割は非常に大きくなっています。地域の安心・安全な交通インフラを支える存在として、以下のような取り組みが求められます:

  1. 多言語対応の強化  英語・中国語など多言語での予約、問い合わせ対応を進めることで、訪日客にとってのハードルを下げることが可能です。
  2. 料金の明瞭化と事前提示  移動前に料金の概算を伝え、正当性と信頼感を確保します。
  3. 安心・安全の発信  ホームページやSNSを通じて、保険加入状況や運転者の資格、感染症対策などを可視化し、正規事業者であることの価値を積極的に伝えるべきです。
  4. 行政・警察との連携  白タク行為を未然に防ぐために、地域警察・自治体との連携を強化し、情報共有や啓発活動に取り組む必要があります。

■まとめ:信頼こそ最大の武器 白タクの横行は、単なる違法行為にとどまらず、地域の観光イメージやインフラの信頼性そのものを損なう深刻な問題です。正規事業者である私たちが安全・安心を提供することで、観光客の満足度を高め、ひいては地域経済の発展にも寄与します。

許認可を扱う行政書士としても、事業者様に対して、今後も「お客様から選ばれる交通サービス」の提供を支援することが、私たちの責務だと考えています。


この記事が、訪日観光業に携わるすべての事業者様、そして地域の安心・安全な交通環境を守る皆様の一助となれば幸いです。