■ はじめに|これは「観光制度」の話では終わらない
2025年12月に報じられた「電子渡航認証制度(JESTA)」の導入と、訪日外国人への民間医療保険加入義務化の検討。このニュースを見て、「観光客向けの制度変更だろう」「自分には関係ない」と感じた方も多いかもしれません。しかし、行政書士として外国人の在留手続きや外国人雇用企業のサポートを日常的に行っている立場から断言します。この動きは、単なる観光制度の見直しでは終わりません。
https://news.yahoo.co.jp/articles/e325fd365c2a4e8d3ef942f9f712d3c8669e5f75
今回の制度変更は、日本の外国人政策が大きく転換していることを象徴しています。これまでの日本は、人手不足を背景に外国人を積極的に受け入れてきました。一方で、医療費未払い、社会保険未加入、不法滞在などの問題が年々深刻化してきたのも事実です。こうした状況を受け、政府は「受け入れる以上、守るべきルールは厳格にする」という姿勢を明確にし始めています。
特に重要なのは、外国人政策が常に「短期滞在 → 中長期在留 → 永住・定住」へと段階的に影響を広げていく点です。今回の医療保険義務化は、将来的に在留資格の審査や更新基準にも波及する可能性が高いと考えられます。在日外国人の方、そして外国人を雇用する企業経営者・人事担当者の方にとって、決して他人事ではありません。
■ ニュースの要点と政府が本当に伝えたいこと
今回のニュースのポイントは大きく三つあります。第一に、政府が2028年度の導入を目指して「電子渡航認証制度(JESTA)」を検討していること。第二に、その申請要件として民間医療保険への加入を義務付ける方向で議論が進んでいること。第三に、その背景として、訪日外国人による医療費未払いが社会問題化している点です。
厚生労働省の調査によると、わずか1か月で約6,000万円以上の医療費未払いが発生しています。単純計算で年間7億円を超える規模です。医療機関の負担や国民感情を考えれば、政府が対策に動くのは当然の流れと言えるでしょう。
しかし、ここで注目すべきは「政府の本音」です。医療保険加入義務化は、単なる医療費対策ではありません。「日本に来る外国人は、自分の生活リスクを自己管理できることが前提」という強いメッセージが込められています。これは今後、在留資格の審査や更新、さらには永住許可の判断基準にも確実に影響していきます。形式上は短期滞在者向けの制度でも、実質的にはすべての外国人に向けた政策転換と捉えるべきです。
■ 在日外国人が直面する現実的なリスクとは
現在、日本に在留している外国人の中には、国民健康保険に未加入、あるいは保険料を滞納している方が一定数存在します。「制度をよく知らなかった」「手続きが難しかった」という理由は理解できますが、今後はその説明が通用しなくなる可能性が高まっています。
近年の入管実務では、在留資格の更新や変更の際に、税金や社会保険料の納付状況が厳しく確認される傾向が強まっています。医療保険未加入や滞納は、「日本で安定した生活を送れていない」と判断される要因になり得ます。これは、将来の更新不許可や永住申請不許可に直結するリスクです。
今回の医療保険義務化の検討は、「保険に入っていない外国人は歓迎されない」という明確なシグナルです。在日外国人の方は、「まだ義務化されていないから大丈夫」と考えるのではなく、今のうちから保険加入状況や在留状況を見直すことが重要です。将来の選択肢を守るためにも、早めの対応が不可欠です。
■ 外国人を雇用する企業に迫る“管理責任”
外国人を雇用している企業経営者や人事担当者にとって、今回の動きは非常に重要です。今後は、外国人本人だけでなく、「受け入れている企業の管理体制」も厳しく問われる時代になります。
実際の入管手続きでは、「会社は外国人社員の生活状況を把握していますか」「社会保険や医療保険の加入状況を確認していますか」といった質問が増えています。外国人社員が医療保険未加入のままトラブルを起こした場合、企業側の管理姿勢が問題視される可能性も否定できません。
特に中小企業では、「本人任せ」「そこまで管理できない」という声をよく耳にします。しかし、今後はその姿勢自体がリスクになります。外国人雇用は、単なる人手不足対策ではなく、法令遵守と管理責任を伴う経営課題です。雇用契約書や社内ルールの見直し、入社時の説明体制の整備など、今から準備しておくべきことは少なくありません。
■ 行政書士としての見解|今後さらに厳しくなる理由
行政書士として現場に立って感じるのは、日本の外国人政策が「自己責任」をより強く求める方向へ進んでいるということです。これまでは、ある程度の曖昧さや猶予がありましたが、その結果として生じた問題が、今まさに制度の厳格化として表面化しています。
重要なのは、「制度が始まってから考える」のでは遅いという点です。制度は突然始まりますが、審査の目線は水面下で徐々に変わっていきます。その変化を最も早く察知できるのが、日々入管と向き合っている専門家です。
在日外国人の方も、外国人雇用企業の方も、「今は問題ないから大丈夫」という考え方は非常に危険です。何も起きていない今だからこそ、将来を見据えた対策が取れます。問題が表面化してからでは、選択肢は大きく狭まってしまいます。
■ まとめ|行動するなら今が最善のタイミング
JESTAの導入や医療保険義務化は、まだ検討段階です。しかし、制度が始まってから慌てて動く人ほど、大きな不利益を被ります。在日外国人の方は、自身の医療保険や在留状況を改めて確認してください。外国人を雇用している企業は、外国人雇用を「管理責任を伴う経営課題」として捉え直す必要があります。
少しでも不安を感じた方は、早めに行政書士へ相談することを強くおすすめします。それは営業ではなく、将来のリスクを回避するための現実的な選択です。あなた自身、そしてあなたの会社を守るために、今こそ行動を起こすべきタイミングです。
