1. 外国人の“国保滞納”が在留資格に影響する新制度がスタート予定

2027年6月から、外国人の国民健康保険(国保)保険料の滞納が、在留資格の変更・更新に影響する制度が導入される予定です。
これは厚生労働省と出入国在留管理庁(入管)が保険料情報を共有し、滞納者に対しては在留資格の更新・変更を原則として認めない方針に基づくものです。

https://news.yahoo.co.jp/articles/bbc4090c14160ba836fda3a0c1cb23ebb9bc2260

一見すると「国保=自営業や学生だけの問題」と考える方もいるかもしれません。
しかし、これは企業で外国人を雇用している場合にも重大な影響を及ぼす可能性がある制度改正です。


2. 国保と社保の違い、正しく理解できていますか?

まず制度の基本を簡単に押さえておきましょう。

■ 国民健康保険(国保)

対象:自営業、無職、短期雇用者、留学生など、企業に雇用されていない人
加入:市区町村にて個人で加入し、保険料を全額自己負担で支払います。

■ 社会保険(社保)

対象:企業に常用的に雇用されている労働者(週20時間以上、継続見込み2ヶ月以上、月額賃金8.8万円以上など)
加入:企業が加入手続きを行い、健康保険と厚生年金に加入。保険料は企業と本人で折半します。

つまり、企業に雇用されている外国人労働者は、原則として社保に加入しなければならず、国保には加入すべきではありません。


3. 今回の制度の「直接の対象」は国保加入者だが…

今回の制度は、国保加入者の滞納を対象とすることが明示されています。
しかしここで重要なのは、

✅ 社保に加入していれば安心、とは言い切れない

という点です。


4. 「社保未加入」や「社保逃れ」も在留審査のリスクに

企業に雇用されている外国人であっても、以下のような状況では問題になります。

  • 本来社保に加入すべき条件なのに、国保に加入させている
  • 雇用主が社会保険の手続きを怠っている(いわゆる「社保逃れ」)
  • 社保に加入していても、保険料が未納または不完全納付状態
  • 雇用契約が「業務委託」などに偽装されており、実質的には労働者なのに社保未加入

こうしたケースでは、たとえ国保に加入していなくても、保険制度の不適正利用として、今後の在留審査に悪影響を及ぼす可能性があるのです。


5. 企業が見落としがちな「保険の適用ミス」

現場では次のような“制度のグレー運用”が多く見られます。

  • 「アルバイトだから国保で大丈夫」と思っていた(実は社保適用条件を満たしている)
  • 「試用期間だから未加入でもいい」と思っていた
  • 「外国人は本人任せで良い」として保険加入を確認していない
  • 「短期雇用だから」という理由で加入手続きを省略していた

こうした判断ミスが、本人の在留資格に悪影響を与えるだけでなく、企業のコンプライアンス違反として行政指導や外国人雇用制限につながる恐れがあります。


6. 行政書士が推奨する企業側の対策

外国人雇用企業としては、以下の点を今から徹底すべきです。

✅ 保険制度の正確な理解と判断

  • 雇用契約を結ぶ際は、勤務条件に応じて社保適用の有無を正しく判断する
  • 「留学生の週28時間以内のアルバイト」は社保対象外が基本
  • それ以外は、原則として社保加入が義務です

✅ 加入状況と支払い状況のチェック体制

  • 保険証の確認だけでなく、保険料納付状況のヒアリング
  • 社保未加入や未納があった場合、速やかな是正が必要

✅ 外国人本人への制度説明

  • 保険加入が在留資格に関わることを説明し、責任感を持たせる
  • 通訳や翻訳を交えて、正確に理解してもらうことが大切

✅ 専門家と連携した体制整備

  • 社労士・行政書士と連携し、法令に沿った保険手続きを行う
  • 年1回以上の制度点検や書類の見直しを推奨

7. 「社保未加入=在留審査NG」の時代に備える

入管はすでに、在留資格審査において「納税状況」「社会保険料の納付状況」などを重視しており、今後は「保険未加入」も強く問われる時代が来ると予想されます。

✅ 「雇用=就労管理+社会保険+納税管理」であるという意識が必要です。

外国人を受け入れる以上、制度を正しく運用しているかどうかは、企業の信頼にも直結します。


8. 当事務所の支援サービス

当事務所では、外国人雇用企業様に向けて、以下のようなサポートを提供しています。

  • 外国人雇用時の保険制度適用の診断(提携社労士と連携して行います)
  • 社保未加入・誤加入リスクの洗い出しと是正
  • 国保・社保の加入手続き支援(外国語対応の社労士をご紹介します)
  • 在留資格の変更・更新支援(書類作成から申請まで)
  • 外国人本人向けの制度説明会(通訳付き可)

9. まとめ:正しい制度運用が「人材確保」と「企業防衛」の鍵

2027年の制度改正は、「国保滞納者」への対応という形でスタートしますが、その本質は社会保障制度全体の適正運用を求めるものです。

  • 社保を適用すべき従業員を国保に入れていないか?
  • 加入後、保険料の支払いがきちんとなされているか?
  • 制度の理解が企業・従業員双方に浸透しているか?

これらを今のうちに整備しておくことが、将来的な在留資格の更新トラブルを防ぎ、安定した人材確保と企業の信頼性向上につながります。

制度を正しく理解し、適正に運用する。
それこそが、外国人雇用企業にとっての最善のリスクマネジメントです。

ご不明な点は、ニセコビザ申請サポートセンターまでお気軽にご相談ください。初回のご相談は無料で承っております。