ニセコビザ申請サポートセンター代表、申請取次行政書士の明山崇です。北海道で唯一の、ビザ申請と観光業に特化した行政書士として、主に、ニセコ・小樽・札幌市内を中心に北海道で生活する、外国籍の方々の在留許可申請、いわゆる就労ビザや配偶者ビザ等の、新規取得や更新手続きのお手伝いをしています。

「技術・人文知識・国際業務」等、就労系在留資格を持っている方が日本国籍を取得する「帰化申請」を行なおうとしたときに、たまたま転職の話が舞い込んでくることもあります。日本国籍を取得することも大事だし、今よりも良い条件のお仕事に就くことも大事だし…と、帰化申請を優先させるか、転職を優先させるか、悩むところが多いと思われます。今回は、転職が帰化申請の結果に影響するか?について解説をしていきます。

転職が帰化申請に与える影響

一般の外国人の方が帰化申請を行う場合、5年以上引き続き日本に居住していて、そのうち3年以上は「技術・人文知識・国際業務」などの就労系在留資格を持って仕事をしていることが要件となっています。この3年間、生計を維持できるだけの安定した収入を得て、納税や社会保険料の納付を継続的に行っている必要があります。石の上にも3年という言葉もありますが、この3年の間に仕事を変わっていると、生活が安定していないと不安視され、審査官に良い印象を与えません。特に、転職後の会社規模が元の会社よりも小さかったり、年収が下がったりするような場合には、生計の状況が不安定で悪化していると見なされ、不許可になることもあります。

転職を避けたい時期

出来れば転職を避けたいタイミングとしては、転職後1年以内の帰化申請、若しくは、帰化申請後、結果が出るまでの間は、転職を避けるべきです。特に、転職後に在留資格の更新を行うような場合に、いままで3年間だった在留期限が、転職後の更新で新たな在留期限が1年になってしまうと、日本居住の安定性が低くなり、帰化申請の審査に不利に働いて不許可になってしまったり、場合によっては、申請の取り下げを指示されることもあります。

マイナス評価にならない転職

前述の通り、転職は帰化申請の審査にマイナス影響を与えることが多いのですが、中には、稀に審査にマイナス影響を与えず、むしろプラスになるような転職もあります。主に3つのケースがありますので、1つずつ見ていきます。

年収がアップする転職

転職によって年収が上がることはよくある話で、年収を理由に転職をする方も多いと思われます。では、どの程度のUp率があれば、年収Upとしてプラスの評価を得られるのでしょうか?厳密な規定や絶対値は公表されていませんが、だいたい、元の会社の年収よりも、「1.5倍」程度のUpであれば、年収がアップしたと明確にわかるため、マイナスの評価にはならないようです。

役職がアップする転職

これも、より良い条件を求めての転職ですから、役職や地位が向上する方も多くいらっしゃいます。肩書が1-2ランク上がるような場合、例えば、平社員から係長、係長から部長、部長から役員など、明らかに役職が上がったとわかるような場合は、転職がマイナス評価にはなりません。会社によって人数や役職体系は異なり、一概には比較できないと思われます、世間一般的に見てわかるような役職変化が必要です。

所属機関のカテゴリーが上がる転職

一番客観的に解りやすいのが、このカテゴリーの上昇です。就労系在留資格申請の際の企業カテゴリーで、1が上場企業、2が源泉徴収額が1000万円以上の中堅企業、3がそれ以下、4が新設企業、とざっくり分けられますが、カテゴリー2から1,3から2になるといった具合です。

なお、この転職がマイナスにならない3つの条件に関しては、3項目すべてに該当している必要があり、1つでも欠けてしまうと、帰化申請の審査に際してはマイナスの評価をされることもあります。

脱サラをして起業する場合は?

「技術・人文知識・国際業務」等、就労系在留資格を持って会社勤めをしていた人が、会社を退職してご自身で起業をすることも想定されます。このような方の場合、退職と起業は帰化申請にどのような影響を与えるのでしょうか?

「経営・管理」の在留資格を持つ方の生計要件に関しては、経営者の方本人に安定した収入があるだけでなく、経営している会社も、安定的で健全な黒字経営の状態になっている必要があります。この黒字経営の期間は、帰化申請の直近3年間は継続していることが求められます。よって、起業直後の1年目、2年目に関しては、経営状態が安定していないことから、どうしても審査官に不安定だという心証を与えかねず、帰化申請が不許可になってしまうことがあります。よって、独立・企業をした場合には、3年程度、少なくても会社の経営状態が安定して利益を出せるようになるまでの間は、申請を見送った方が良いと言えます。

まとめ

サラリーマンの転職も、独立起業も、その時のタイミングやご本人の気持ち、家族の状況など、様々な要素が絡まりチャンスが突然やってくると思われます。一方、帰化申請に関しても、申請の要件を満たすまでに長い年月のかかるものもあり、ご自身でそのタイミングをコントロールするのは難しい問題でもあります。転職と日本国籍、どちらも日本に末永く生活するためには非常に大事で優先順位をつけがたい問題ではありますが、転職や独立起業を先にしてしまうと、帰化申請は少なくても1年、長い場合は3年以上待たないと、有利な状況で帰化申請が出来ないことにもなります。ご自身やご家族の状況、タイミングを見極め、帰化申請と転職、どちらを優先すれば今後の人生に有利になるか、よく考えたうえで最適な決断をされると良いと思われます。

行政書士あけやま事務所は、言葉や文化、そして国境の壁を乗り越えて、日本社会の一員として生きていこうとする、外国人の方々を全力で応援し、サポートします。この記事に関するご質問、お問い合わせや、日本国籍取得に関しての条件面、手続き面に関するお問い合わせは、お電話か、ホームページの「無料相談フォーム」からお気軽にお問合せください。