■ はじめに ― 北海道から始まる外国人材活用の新時代
2026年5月、北海道で外国人材活用に関する大きな動きが報じられました。深刻な人手不足を背景に、道内企業7社が連携して「北海道グローバルコミュニティ」を発足させ、特定技能外国人の採用を検討する企業向けセミナーを開催。さらに、北洋銀行子会社の北海道共創パートナーズは、インドネシアで平均5年以上の実務経験を持つ施工管理人材の派遣事業を始動させました。
行政書士として日々、在留資格申請や外国人雇用に関するご相談を承っている立場から、このニュースの背景、企業が知っておくべき法的ポイント、そして在日外国人の皆様にとって重要な視点を、わかりやすく解説いたします。
■ 1. なぜ今、外国人材活用が加速しているのか
日本の生産年齢人口は減少の一途を辿っています。特に地方部での人手不足は深刻で、北海道も例外ではありません。介護、建設、物流、飲食といった業界では、求人を出しても応募が来ない、来ても定着しないという状況が続いています。
このような中、政府は2019年に「特定技能」制度を創設し、対象分野を段階的に拡大してきました。2024年には特定技能の対象分野が16分野に拡大され、自動車運送業や鉄道業なども追加されています。さらに2027年には技能実習制度に代わる「育成就労制度」がスタート予定で、外国人材の長期的なキャリア形成を支援する仕組みが整いつつあります。
■ 2. 北海道グローバルコミュニティの取り組み
報道によれば、北海道グローバルコミュニティは介護、建設、物流、飲食など多様な業界の7社で構成されています。同コミュニティが主催したセミナーでは、外国人材の活用が進む介護現場の現状や課題、そして彼らの生活を地域でどのように支えるかという事例が紹介されました。
参加企業からは「先行してやっているところの課題を聞けて非常に良かった」「生活面のサポートが非常に大事だと思った」という声が上がっています。
主催企業の一つ、SOUSHINホールディングスの岡田吉伸社長は「日本を選んでいただかないといけない。その中でも北海道を選んでいただかないといけない。街として全体として受け入れる体制をしっかりつくっていかなくてはならない」と語りました。
この発言は、現代の外国人材獲得競争の本質を突いています。優秀な人材は、より良い労働条件、より良い生活環境を求めて、世界中の選択肢から選ぶ立場にあります。日本、そして北海道が選ばれるためには、企業単独の努力では不十分で、地域全体での受け入れ体制づくりが不可欠なのです。
■ 3. 建設業界の新潮流
もう一つの注目すべき動きは、北海道共創パートナーズによる施工管理人材の派遣事業です。インドネシアで平均5年以上の実務経験を持つ人材を、北海道の建設現場に派遣しています。
岩崎俊一郎社長は「日本人の施工管理人材を紹介できたケースは実は9件しかなく、それぐらい人材を充足するのが難しい」と現状の厳しさを語っています。現在14人の外国人材が来道していますが、年間160人の派遣を目指すとのことです。
施工管理は単純労働ではなく、高度な専門知識と経験が求められる業務です。このような人材を受け入れる際の在留資格は、特定技能ではなく「技術・人文知識・国際業務」や、建設分野の特定技能2号などが考えられます。それぞれの資格には取得要件があり、職務内容との整合性が厳しく審査されます。
■ 4. 在留資格の種類と選び方
外国人雇用を検討する際、最初に直面するのが「どの在留資格を取得すべきか」という問題です。主な就労系在留資格を整理してみましょう。
【特定技能1号】
16分野で就労可能。在留期間は通算5年まで。家族帯同は原則不可。日本語試験と技能試験の合格が必要。
【特定技能2号】
熟練した技能を要する業務に従事する場合に取得可能。在留期間の更新に上限なし。家族帯同可。永住申請への道も開かれる。
【技術・人文知識・国際業務】
大学卒業以上の学歴または10年以上の実務経験が必要。専門性の高い業務に従事する場合の代表的な資格。在留期間の更新可能、家族帯同可。
【技能実習】(2027年廃止予定)
発展途上国への技能移転を目的とした制度。最長5年。
【育成就労】(2027年開始予定)
技能実習に代わる新制度。特定技能への移行を前提とした人材育成型の制度。
職務内容、求める人材のレベル、雇用期間、家族帯同の希望などを総合的に検討し、最適な資格を選ぶことが重要です。
■ 5. 企業が整備すべき受け入れ体制
外国人材を採用する際、企業に求められる体制整備は多岐にわたります。
【雇用契約書の整備】
日本語と母国語の両方で作成することが望ましく、賃金、労働時間、休日、社会保険加入などの条件を明記する必要があります。
【支援計画の策定】(特定技能の場合)
事前ガイダンス、出入国時の送迎、住居確保、生活オリエンテーション、日本語学習支援、相談対応、各種行政手続きの同行など、10項目の支援が義務付けられています。
【コンプライアンス体制】
入管法、労働基準法、最低賃金法、社会保険関連法、税法など、複数の法令を遵守する必要があります。
【生活サポート】
住居、医療、教育、行政手続き、文化的な違いへの対応など、職場外でのサポートも定着率を大きく左右します。
■ 6. 在日外国人の方へ
既に日本で生活されている外国人の皆様にとっても、今回のニュースは重要な意味を持ちます。
転職を考えている方は、現在の在留資格で新しい職場の業務が認められるかを確認する必要があります。職務内容が大きく変わる場合は「在留資格変更許可申請」が必要です。
家族を呼び寄せたい方は、「家族滞在」の在留資格を申請できますが、特定技能1号では原則不可、特定技能2号や技術・人文知識・国際業務では可能です。
永住を目指す方は、原則として10年以上の在留、独立した生計、素行善良などの要件があります。特定技能2号や高度専門職では、より短い期間で永住申請が可能となるケースもあります。
■ 7. よくあるトラブルとその予防
外国人雇用におけるよくあるトラブルとして、以下が挙げられます。
【職務内容の不一致】
在留資格で認められた業務以外に従事させると、不法就労となる可能性があります。
【賃金トラブル】
最低賃金を下回る、残業代未払いなど。日本人と同等以上の待遇が原則です。
【生活面のトラブル】
住居、近隣関係、文化的な誤解など。事前のオリエンテーションと継続的なサポートが鍵です。
【在留期間の管理ミス】
更新手続きの遅れは、在留資格を失うリスクがあります。企業側でも管理体制を整える必要があります。
■ 8. 行政書士が果たす役割
私たち行政書士は、在留資格申請の専門家として、書類作成だけでなく、企業様、外国人材ご本人双方の伴走者として機能します。
具体的には、最適な在留資格の選定、申請書類の作成、入管との折衝、就労環境の法的チェック、トラブル発生時の対応など、幅広いサポートが可能です。
特に北海道のような地域では、地元の事情に精通した専門家との連携が、スムーズな受け入れの鍵となります。
■ 9. これからの展望
2027年に予定されている育成就労制度のスタートは、日本の外国人材政策の大きな転換点となります。技能実習制度が抱えていた問題点を克服し、外国人材の長期的なキャリア形成と日本社会への定着を目指す新制度です。
企業の皆様には、現在の特定技能制度を最大限活用しつつ、来るべき新制度への準備も並行して進めることをお勧めします。
■ 10. まとめ
北海道での外国人材活用の動きは、日本全体の縮図とも言えます。人手不足の解消だけでなく、多文化共生社会の構築という大きな視点で取り組むことが、持続可能な発展への道です。
企業経営者、人事担当者、そして在日外国人の皆様にとって、信頼できる専門家との出会いが、成功への第一歩となります。在留資格、外国人雇用、ビザ申請に関するご相談は、ぜひお気軽にお寄せください。
参考記事:
https://news.yahoo.co.jp/articles/f5edb7aae7f7c6ebb3e9a6a7725a84284fbfcd44
