■はじめに|なぜ今、「共生社会の軸」が問われているのか

2026年4月28日、小野田紀美外国人共生担当相は記者会見で、外国人政策の基本姿勢について「日本における共生社会の軸は間違いなく日本文化だというのは絶対に譲ってはいけない一線だ」と明言しました。さらに、「外国人にも日本社会の一員として責任ある行動を取ってもらうことを基本的な考え方としている」とも述べています。

在留資格申請とビザ申請を専門に扱う行政書士として、私はこの発言を重く、そして前向きに受け止めています。結論から申し上げると、私は小野田大臣のスタンスに賛成です。本記事では、その理由と、在日外国人の方、そして外国人を雇用する企業の経営者・人事ご担当者が今押さえておくべき視点について、現場目線で解説します。

■第1章|「共生」という言葉の正しい捉え方

「共生」と聞くと、「受け入れる側が譲歩し、合わせていくこと」というイメージを持たれる方が少なくありません。しかし本来の共生とは、双方が互いを尊重し合いながら、社会全体として持続可能なバランスを築いていくことです。

この時に重要なのが「軸」です。受け入れ側である日本社会の側に、文化・規範・法制度という明確な軸があるからこそ、外国人の方々も「何を尊重し、何を守れば良いのか」が分かります。逆に、軸が曖昧なまま門戸だけを広げてしまうと、外国人ご本人も困りますし、地域社会との摩擦も大きくなります。

小野田大臣の「日本文化を軸とすることは譲れない一線」という言葉は、外国人を排除する意図ではなく、長期的に健全な共生関係を築くための土台を明確にしたものだと私は理解しています。

■第2章|在留資格制度から見た「責任ある行動」とは

「外国人にも日本社会の一員として責任ある行動を取ってもらう」という小野田大臣の発言は、在留資格制度の趣旨とも合致しています。

在留資格は単なる「滞在許可」ではありません。それぞれの資格には活動内容、納税、社会保険加入、届出義務など、日本社会の一員として果たすべき責任がセットになっています。例えば、

・「技術・人文知識・国際業務」(技人国):許可された業務範囲を超えた活動はできません。
・「特定技能」:受け入れ機関による支援計画の履行と本人の活動報告が必要です。
・「永住者」「日本人の配偶者等」:自由度が高い一方、税金・年金等の社会的義務違反は更新審査で重く見られます。

つまり、在留資格を維持するということは、「日本社会のルールを守り続ける」ということと表裏一体です。これは決して厳しいだけのルールではなく、本人と日本社会の双方を守る仕組みです。

■第3章|外国人を雇用する企業が今やるべきこと

外国人材を雇用する企業の経営者・人事ご担当者から、近年最も多くいただくご相談は次の3点です。

  1. 採用後のコンプライアンス管理が不安
  2. 在留資格の更新・変更でつまずくケースが増えた
  3. 社内の文化・コミュニケーションギャップにどう対応するか

小野田大臣の発言を踏まえると、これら3つはすべて「日本社会の軸を明確にしながら、外国人材が責任を果たせる環境を整える」という同じ課題に集約されます。

具体的には、

・就業規則と在留資格の活動範囲の整合性を確認する
・社会保険・税務手続きを正しく行い、本人へも丁寧に説明する
・遅刻、欠勤、SNS発信などの基本ルールを多言語で明文化する
・日本のビジネス文化(報連相、時間厳守、敬語など)を研修で伝える

こうした取り組みは、単なる「外国人対応」ではなく、企業全体のガバナンス強化にもつながります。

■第4章|在日外国人の方へ|「日本文化を軸にする」とはどういうことか

在日外国人の方の中には、今回の小野田大臣の発言を聞いて「自分たちの文化や宗教は否定されるのか」と不安に感じた方もいるかもしれません。しかし、私は実務を通じてそうではないと考えています。

「日本文化を軸にする」とは、母国の文化や信仰を捨てることではなく、「日本社会で生活するうえで日本のルールや慣習を尊重する」ということです。家庭やコミュニティの中で母国の文化を大切にすることは、これまで通り自由に行えます。

日本で長く暮らし、安心して家族を呼び寄せ、永住や帰化を目指していくためには、日本社会との信頼関係が欠かせません。その信頼の土台となるのが、税金・社会保険の適切な納付、交通ルールやゴミ出しなどの生活ルール、職場での誠実な勤務態度です。これらは決して特別なことではなく、日本人にも等しく求められていることです。

■第5章|土葬墓地問題に見る、これからの議論のあり方

会見では、イスラム教徒(ムスリム)の土葬墓地整備を巡る問題についても質問が出ました。小野田大臣は「墓地、埋葬等に関する法律は厚生労働省が所管している」として、踏み込んだ発言は避けられました。

これは「無関心」ではなく、所管省庁の整理をきちんと示した冷静な対応だと私は受け止めています。土葬問題は、

・宗教の自由
・地域住民の合意
・公衆衛生
・土地利用規制

など、複数の論点が絡む非常に難しいテーマです。感情的な賛否で結論を出すのではなく、関係省庁・自治体・宗教コミュニティ・地域住民が時間をかけて制度設計を議論すべき課題です。

行政書士として、こうしたデリケートなテーマでは、現場の声を丁寧に拾い上げ、適切な窓口へつなぐ役割が重要だと感じています。

■第6章|経済安全保障とAI戦略|外国人政策との接点

小野田大臣は、経済安全保障やAI戦略を担当する閣僚として、5月3日から6日にかけてインドを訪問することも発表しました。一見、外国人共生政策とは別のテーマに見えますが、実は密接に関係しています。

なぜなら、AI・半導体・サイバーセキュリティなどの分野では、高度外国人材の獲得競争が激化しており、彼らをどのように受け入れ、どう活躍してもらうかが日本の競争力を左右するからです。「日本文化を軸にした共生」と「高度人材の戦略的受け入れ」は、対立するものではなく、同じ政策パッケージとして設計されるべきテーマです。

企業としては、技術人材の採用にあたり、在留資格戦略・社内英語化・キャリアパス設計・家族帯同支援など、総合的な仕組みづくりが求められます。

■第7章|行政書士の視点から|今、ご相談いただきたいこと

最後に、在留資格・ビザ申請の専門家としてお伝えしたいのは、「困ってからではなく、迷った段階でご相談ください」ということです。

・採用予定の外国人が、自社の業務内容で在留資格を取得できるのか
・特定技能から技人国、または永住申請への切り替えは可能か
・家族滞在で来日した配偶者の就労はどこまで認められるか
・更新が不許可になった場合のリカバリー策はあるか

こうした論点は、ご本人や企業だけで判断すると、知らない間に在留資格の活動範囲を逸脱してしまうリスクがあります。早期にご相談いただければ、適法かつ持続可能な働き方・暮らし方を一緒に設計できます。

■まとめ|「軸のある共生社会」を一緒に創っていくために

小野田紀美外国人共生担当相の「共生社会の軸は日本文化」という発言は、在日外国人を排除する言葉ではなく、長期的にお互いを尊重し合うための土台を示したものです。私はこのスタンスに賛同します。

・日本社会の文化・ルール・法制度という軸を明確にする
・外国人の方には、日本社会の一員として責任ある行動を求める
・企業は受け入れ体制とコンプライアンスを整える
・行政書士など専門家が、双方の橋渡しを担う

この4つが揃ったとき、本当の意味での共生社会が動き出します。在留資格・ビザ申請、外国人雇用に関するお悩みは、ぜひお気軽にご相談ください。

参考記事:
https://news.yahoo.co.jp/articles/ad653e1007af5ddee5c2540790be039fd738c0e5