はじめに:偽装結婚事件の概要
2026年6月、広島で偽装結婚による在留資格不正取得事件が摘発されました。報酬を得る目的で協力した日本人仲介者、タクシー運転手、そしてフィリピン国籍の飲食店従業員の3名が、電磁的公正証書原本不実記録などの容疑で逮捕されています。
この事件は、虚偽の婚姻届を呉市役所に提出し、受理させたというものです。調べに対し、日本人側は「報酬を得るため」、外国人側は「在留資格を得るため」と供述しており、いずれも容疑を認めています。
警察は、仲介役を中心に複数の偽装結婚グループが存在する可能性を視野に、さらなる捜査を進めているとのことです。
なぜ偽装結婚が行われるのか:背景にある深刻な問題
在留資格取得の困難さと誤った認識
日本で働き、生活したいという外国人の方々の願いは切実です。しかし、在留資格制度について正しい知識がなく、「自分には取得できない」「手続きが複雑すぎる」と誤解し、不正な手段に手を染めてしまうケースがあります。
実際には、適切な書類と手続きを踏めば、多くの方が合法的に在留資格を取得できます。しかし、言葉の壁や制度の複雑さから、専門家に相談する前に誤った情報に惑わされてしまうのです。
報酬目的の仲介者の存在
今回の事件でも明らかになったように、報酬を目的とした仲介者の存在が問題を深刻化させています。こうした「ビザブローカー」は、困っている外国人につけ込み、高額な報酬と引き換えに不正な手続きを持ちかけます。
しかし、このような不正に手を染めれば、日本人側も外国人側も重い刑事罰の対象となります。
偽装結婚のリスク:取り返しのつかない結果
外国人側のリスク
強制退去処分
偽装結婚が発覚した場合、まず強制退去処分の対象となります。日本での生活基盤がすべて失われます。
再入国の拒否
一度強制退去となると、最長10年以上にわたって日本への再入国が認められません。家族や友人、築いてきたキャリアとも離れ離れになります。
刑事罰
電磁的公正証書原本不実記録罪などにより、懲役刑や罰金刑が科されます。前科がつくことで、将来的にも大きな不利益を被ります。
信用の喪失
不正を行った事実は記録に残り、他国への入国やビザ申請にも悪影響を及ぼします。
日本人側のリスク
偽装結婚に協力した日本人も同様に刑事罰の対象となります。報酬を得ていた場合は組織的な犯罪として、より重い罪に問われる可能性があります。
雇用企業のリスク
従業員が偽装結婚により不正に在留資格を得ていた場合、その従業員を雇用していた企業も「不法就労助長罪」に問われる可能性があります。
不法就労助長罪とは
外国人が不法就労であることを知りながら雇用した場合、または在留カードの確認を怠るなど、注意義務を果たさなかった場合に適用されます。
- 罰則:3年以下の懲役または300万円以下の罰金
- 企業名の公表
- 行政処分
- ブランドイメージの毀損
「知らなかった」では済まされないのが現実です。
企業が取るべき外国人雇用のコンプライアンス対策
1. 採用時の在留カード確認の徹底
確認すべきポイント
- 在留カードの原本を確認する(コピー不可)
- 在留資格の種類が就労可能なものか
- 在留期限が切れていないか
- 就労制限の有無(資格外活動許可の要否)
- 偽造カードでないか(ICチップの読み取り、出入国在留管理庁の照会サービス利用)
2. 定期的な在留資格管理
採用時だけでなく、在留期限の管理も重要です。期限切れのまま就労させた場合、企業も責任を問われます。
管理体制の構築
- 在留期限の一覧表作成
- 期限の3ヶ月前にリマインド
- 更新手続きのサポート体制
3. 相談しやすい環境づくり
外国人従業員が在留資格について困ったときに気軽に相談できる窓口を設けることが、不正防止の重要な鍵となります。
- 人事担当者向けの研修実施
- 多言語対応の相談窓口設置
- 行政書士などの専門家との連携
4. 専門家との連携
在留資格制度は複雑で、頻繁に法改正も行われます。企業内だけで対応するのは困難です。行政書士などの専門家と顧問契約を結び、日常的にアドバイスを受けられる体制を整えることをお勧めします。
在留資格の正しい取得方法
配偶者ビザの適正な取得
日本人や永住者と結婚した場合、「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」という在留資格を取得できます。
必要な書類(一例)
- 婚姻届受理証明書
- 戸籍謄本
- 住民票
- 質問書
- 身元保証書
- 交際経緯を示す資料(写真、メール、通話記録など)
- 経済的安定性を示す資料(課税証明書、納税証明書、在職証明書など)
真実の結婚であることを証明するため、交際から結婚に至る経緯を詳細に説明する必要があります。
就労ビザの取得
日本で働くためには、職務内容に応じた就労ビザが必要です。
主な就労ビザの種類
- 技術・人文知識・国際業務:IT、事務、通訳など
- 技能:外国料理の調理師など
- 特定技能:介護、建設、農業など14分野
- 高度専門職:ポイント制による高度人材
それぞれの資格には学歴要件、職務内容の要件などがあり、雇用企業の規模や財務状況も審査対象となります。
永住許可・帰化申請
長期的に日本で生活する場合は、永住許可や帰化申請という選択肢もあります。
永住許可の主な要件
- 10年以上の継続在留(就労資格または居住資格で5年以上)
- 安定した収入
- 税金・年金の納付
- 素行が善良であること
帰化申請の主な要件
- 10年以上の継続在留
- 18歳以上
- 素行が善良であること
- 生計を営む能力
- 日本語能力
専門家に相談するメリット
1. 正確な情報と最適な方法の提案
インターネット上には様々な情報がありますが、必ずしも正確とは限りません。また、個々の状況によって最適な申請方法は異なります。
行政書士は、一人ひとりの状況を詳しくヒアリングし、最も適切な在留資格と申請方法を提案します。
2. 書類作成と申請のサポート
在留資格申請には多くの書類が必要で、記載内容も複雑です。不備があれば不許可となり、時間と費用が無駄になります。
専門家が書類作成を代行することで、正確かつ説得力のある申請が可能になります。
3. 不許可リスクの軽減
一度不許可となると、再申請のハードルは高くなります。また、不許可歴は記録に残り、将来の申請にも影響します。
専門家による事前審査と適切な書類作成により、許可率を大幅に高めることができます。
4. 時間と労力の節約
申請手続きには多くの時間と労力がかかります。特に働きながら、あるいは言葉の壁がある中で手続きを進めるのは大きな負担です。
専門家に依頼することで、本来の仕事や生活に集中できます。
5. アフターフォロー
在留資格取得後も、更新や変更など継続的なサポートが必要です。専門家との関係を築いておくことで、長期的に安心して日本で生活できます。
不正な仲介者を見分ける方法
残念ながら、「ビザブローカー」と呼ばれる不正な仲介者が存在します。以下のような特徴があれば要注意です。
危険な兆候
- 「絶対に取れる」「100%保証」などと断言する
- 虚偽の書類作成を勧める
- 偽装結婚や偽装就職を持ちかける
- 異常に高額な報酬を要求する
- 契約書を交わさない
- 行政書士登録番号を明示しない
正規の行政書士の見分け方
- 日本行政書士会連合会の登録を確認できる
- 登録番号を明示している
- 事務所の所在地が明確
- 契約書を交わす
- 報酬基準が明確
- 虚偽申請は絶対に行わない
まとめ:正しい知識と適切な手続きで安心の在留を
今回の広島での偽装結婚事件は、在留資格制度についての正しい理解の不足と、不正な仲介者の存在が生み出した悲劇です。
しかし、正しい知識を持ち、適切な手続きを踏めば、多くの外国人の方が合法的に日本で生活し、働くことができます。
外国人の皆様へ
困ったときは、必ず正規の専門家にご相談ください。不正な手段は、あなたの未来を閉ざします。
企業の皆様へ
外国人雇用は適切な管理体制のもとで行ってください。コンプライアンス違反は企業の存続を脅かします。
私たち行政書士の役割
在留資格の専門家として、正しい情報提供と適切な申請サポートを通じて、外国人の方々が安心して日本で活躍できる社会づくりに貢献します。
ビザや在留資格でお困りのことがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。一緒に最適な解決策を見つけましょう。
参考記事
「在留資格と報酬目的で「偽装結婚」か うその婚姻届提出の疑いで広島の仲介役ら3人逮捕」
https://news.yahoo.co.jp/articles/13f5bcca312a7a51d8692d0722cc88fabf4ca99d
