目次
  1. はじめに:初めて公表された不法残留統計が意味するもの
  2. 統計データの詳細分析:どのような在留資格で不法残留が発生しているのか
    1. 在留資格別の内訳
    2. 地域別の分析:なぜ関東に集中しているのか
  3. 不法残留・不法就労に至る主な原因
    1. 1. 在留期限管理の不徹底
    2. 2. 手続きに関する知識不足
    3. 3. 経済的事情
    4. 4. 雇用企業の管理不足
  4. 不法残留・不法就労のリスクと法的責任
    1. 外国人本人が負うリスク
    2. 雇用企業が負うリスク
  5. 政府の方針:不法滞在者ゼロへの取り組み
    1. 1. 取り締まりの強化
    2. 2. 通報制度の活用
    3. 3. 在留管理システムの高度化
    4. 4. 適正な受け入れ環境の整備
  6. 在日外国人の皆さんへ:不法残留を防ぐための5つのポイント
    1. 1. 在留カードを常に携帯し、期限を確認する
    2. 2. 更新は3か月前から、余裕をもって
    3. 3. 在留資格の変更が必要なケースを理解する
    4. 4. 困ったときは専門家に相談する
    5. 5. 正確な情報源から情報を得る
  7. 外国人雇用企業の経営者・人事担当者の皆さんへ:適正な雇用管理のために
    1. 1. 在留カードの確認を徹底する
    2. 2. 在留期限管理システムを構築する
    3. 3. 更新手続きのサポート体制を整える
    4. 4. 定期的な研修を実施する
    5. 5. 専門家との連携体制を確立する
  8. 行政書士としてできること:私たちのサポート内容
    1. 個人向けサービス
    2. 企業向けサービス
  9. まとめ:適正な在留管理が安心の基盤

はじめに:初めて公表された不法残留統計が意味するもの

2026年3月、出入国在留管理庁が初めて公表した統計データが、在留資格管理の重要性を改めて浮き彫りにしています。2025年の1年間で、在留ビザの期限が切れて不法残留状態となった外国人はおよそ1万人(正確には9,748人)に上りました。

この数字は氷山の一角に過ぎません。同時に発表されたデータによれば、退去強制手続きや出国命令手続きの対象となった外国人1万8,442人のうち、実に72.9%にあたる1万3,435人が不法就労に関わっていたことが明らかになりました。

これらの統計は、在日外国人の方々、そして外国人を雇用する企業の経営者・人事担当者にとって、決して他人事ではない重要なメッセージを含んでいます。

統計データの詳細分析:どのような在留資格で不法残留が発生しているのか

在留資格別の内訳

不法残留となった9,748人の在留資格別内訳は以下の通りです。

  1. 短期滞在:3,737人(38.3%)
    短期滞在ビザは観光や親族訪問などを目的とした15日、30日、90日の滞在が認められる資格です。この資格での不法残留が最も多いという事実は、短期滞在から就労へと不法に移行するケースや、そもそも短期滞在ビザで入国後、帰国せずに滞在を続けるケースが多いことを示しています。
  2. 特定技能:1,924人(19.7%)
    2019年に創設された比較的新しい在留資格である特定技能での不法残留が2番目に多いという事実は注目に値します。人手不足分野での就労を目的とした資格であり、本来は適正な管理下で就労するはずの外国人が、なぜ不法残留状態に至ったのか、企業の管理体制や支援体制に課題があることを示唆しています。
  3. 技能実習:1,831人(18.8%)
    技能実習制度は、開発途上国への技能移転を目的とした制度ですが、長年にわたり不法残留や失踪の問題が指摘されてきました。労働環境の問題、賃金の不払い、パスポートの取り上げなど、受入企業側の問題が背景にあるケースも少なくありません。

地域別の分析:なぜ関東に集中しているのか

不法就労が判明した外国人1万3,435人の地域別分布を見ると、関東地方への集中が顕著です。

  • 茨城県:3,518人(26.2%)
  • 千葉県:1,967人(14.6%)
  • 群馬県:1,426人(10.6%)
  • 埼玉県:1,366人(10.2%)
  • 関東1都6県合計:10,261人(76.4%)

茨城県が突出して多い理由として、農業分野での外国人労働者の需要が高いことが挙げられます。特に野菜や果物の栽培、畜産業などの分野では、人手不足が深刻で、不法就労者の受け入れに手を染める悪質な事業者の存在も指摘されています。

建設業が盛んな地域でも同様の傾向が見られ、人手不足を背景に、在留資格の確認を怠ったまま外国人を雇用してしまう企業が後を絶ちません。

不法残留・不法就労に至る主な原因

1. 在留期限管理の不徹底

最も多いのが「うっかりミス」です。在留カードには明確に期限が記載されていますが、日々の生活や業務に追われる中で、期限の確認を怠ってしまうケースが少なくありません。

特に問題なのは、更新申請のタイミングです。在留期間更新許可申請は、在留期間満了日の3か月前から申請可能ですが、ギリギリになって申請すると、審査が間に合わず期限切れとなるリスクがあります。

2. 手続きに関する知識不足

在留資格制度は複雑で、必要書類や手続きの流れを正確に理解している外国人は多くありません。また、在留資格の変更が必要なケース(例:留学から就労への変更)を理解せず、そのまま働き始めてしまうケースもあります。

3. 経済的事情

在留資格の更新には費用がかかります(更新・変更申請:6,000円など)。また、書類準備のために母国から取り寄せる証明書にも費用と時間がかかります。経済的に困窮している外国人の中には、これらの費用を捻出できず、申請を先延ばしにした結果、不法残留となってしまうケースがあります。

4. 雇用企業の管理不足

外国人を雇用する企業側の管理体制が不十分なケースも多く見られます。従業員の在留カードのコピーを取るだけで、期限管理をしていない企業や、そもそも就労可能な在留資格かどうかを確認していない企業も存在します。

不法残留・不法就労のリスクと法的責任

外国人本人が負うリスク

  1. 退去強制処分
    不法残留が判明した場合、入管法第24条に基づき退去強制処分の対象となります。一度退去強制処分を受けると、原則として5年間は日本への再入国が認められません(上陸拒否期間)。悪質なケースでは10年間の上陸拒否となることもあります。
  2. 刑事罰の可能性
    不法残留は入管法違反であり、3年以下の懲役または禁錮もしくは300万円以下の罰金に処せられる可能性があります(入管法第70条)。
  3. 将来の在留資格取得への影響
    たとえ上陸拒否期間が経過しても、不法残留の経歴は記録として残ります。将来、再び日本での在留資格を申請する際、審査において非常に不利に働きます。

雇用企業が負うリスク

  1. 不法就労助長罪
    事業主が、外国人が不法就労者であることを知りながら雇用した場合、または在留カードを確認せずに雇用した場合(過失)、不法就労助長罪に問われます。罰則は3年以下の懲役または300万円以下の罰金です(入管法第73条の2)。
  2. 社会的信用の失墜
    不法就労助長罪で摘発された場合、企業名が公表されることがあります。これにより、取引先からの信頼を失い、ビジネスに甚大な影響を及ぼします。
  3. 今後の外国人雇用における制約
    不法就労助長罪で処罰された企業は、今後特定技能外国人などの受け入れが困難になる可能性があります。出入国在留管理庁は、受入企業の適格性を厳しく審査しており、過去の違反歴は大きなマイナス要因となります。

政府の方針:不法滞在者ゼロへの取り組み

政府は「不法滞在者をゼロにする」という明確な目標を掲げています。この目標達成のため、以下のような施策が強化されています。

1. 取り締まりの強化

入国管理局による摘発活動が強化されており、不法就労が多い業種(農業、建設業、飲食業など)への立ち入り調査が頻繁に行われています。

2. 通報制度の活用

一部の自治体では、不法就労の通報に対して報奨金を支払う制度の導入が検討されています。茨城県では1件1万円の報奨金制度の導入が話題となり、賛否両論を呼びました。

3. 在留管理システムの高度化

在留カードのICチップ化、オンライン申請システムの導入など、在留管理の効率化とデジタル化が進められています。

4. 適正な受け入れ環境の整備

一方で、政府は適正に在留する外国人については、その権利を保護し、共生社会の実現を目指しています。特定技能制度の拡充、家族帯同要件の緩和など、外国人が安心して日本で生活できる環境整備も進められています。

在日外国人の皆さんへ:不法残留を防ぐための5つのポイント

1. 在留カードを常に携帯し、期限を確認する

在留カードには在留期間の満了日が明記されています。スマートフォンのカレンダーにアラートを設定するなど、期限を忘れない工夫をしましょう。

2. 更新は3か月前から、余裕をもって

在留期間更新許可申請は、満了日の3か月前から可能です。書類準備に時間がかかることを考慮し、遅くとも2か月前には準備を始めることをお勧めします。

3. 在留資格の変更が必要なケースを理解する

留学から就労へ、技能実習から特定技能へなど、活動内容が変わる場合は在留資格の変更申請が必要です。自己判断せず、必ず専門家に相談してください。

4. 困ったときは専門家に相談する

行政書士、弁護士などの専門家は、在留資格に関する正確な情報と適切なアドバイスを提供できます。費用を惜しんで自己判断した結果、不法状態に陥るよりも、専門家に相談する方がはるかに安全です。

5. 正確な情報源から情報を得る

SNSや友人からの情報は必ずしも正確とは限りません。出入国在留管理庁の公式サイト、法務省のサイトなど、公式な情報源から情報を得るようにしましょう。

外国人雇用企業の経営者・人事担当者の皆さんへ:適正な雇用管理のために

1. 在留カードの確認を徹底する

雇用時には必ず在留カードの原本を確認し、以下の点をチェックしてください。

  • 在留資格の種類(就労可能な資格か)
  • 在留期間(期限はいつまでか)
  • 就労制限の有無(「就労制限なし」または「就労不可」の記載)
  • 写真と本人の一致
  • ICチップの読み取り(専用アプリで確認可能)

2. 在留期限管理システムを構築する

従業員の在留期限を一元管理し、期限の2〜3か月前に自動でアラートが出るシステムを導入しましょう。エクセルでの管理でも構いませんが、人事システムに組み込むことでより確実な管理が可能です。

3. 更新手続きのサポート体制を整える

外国人従業員が在留期間更新申請を行う際、必要に応じて会社からの推薦状や在職証明書などを速やかに発行できる体制を整えましょう。また、申請のための休暇取得に配慮することも重要です。

4. 定期的な研修を実施する

人事担当者向けに、在留資格制度に関する研修を定期的に実施しましょう。制度は頻繁に改正されるため、最新情報のキャッチアップが必要です。

5. 専門家との連携体制を確立する

顧問行政書士や弁護士と連携し、疑問が生じた際にすぐに相談できる体制を作っておくことが重要です。自己判断でのミスを防ぐことができます。

行政書士としてできること:私たちのサポート内容

私たちニセコビザ申請サポートセンターは、入管業務を専門とし、在留資格に関する申請手続きの専門家です。以下のようなサポートを提供しています。

個人向けサービス

  • 在留期間更新許可申請
  • 在留資格変更許可申請
  • 永住許可申請
  • 帰化許可申請
  • 在留資格認定証明書交付申請(家族呼び寄せなど)
  • 在留特別許可申請
  • 各種届出サポート

企業向けサービス

  • 外国人雇用に関するコンサルティング
  • 在留資格該当性の判断
  • 就労ビザ取得サポート
  • 社内在留管理体制の構築支援
  • 特定技能外国人受け入れサポート
  • 入管対応のアドバイス
  • 人事担当者向け研修

まとめ:適正な在留管理が安心の基盤

2026年の不法残留統計は、私たちに重要なメッセージを伝えています。それは、在留資格管理の重要性と、「知らなかった」では済まされない現実です。

政府が不法滞在者ゼロを目標に掲げる中、取り締まりは今後さらに強化されるでしょう。しかし、適切な知識と準備、そして専門家のサポートがあれば、不法状態を防ぐことは十分可能です。

在日外国人の皆さんには、ご自身の在留資格と期限を正確に把握し、余裕をもった更新手続きを心がけていただきたいと思います。

企業の経営者・人事担当者の皆さんには、外国人従業員の在留管理を経営リスクの一つとして認識し、適切な管理体制を構築していただきたいと思います。

在留資格に関して少しでも不安やご質問がございましたら、お気軽に専門家にご相談ください。早めの対応が、安心して日本で暮らし、働き続けるための最良の方法です。

適正な在留管理は、外国人本人にとっても、雇用する企業にとっても、そして日本社会全体にとっても、より良い共生社会を築くための基盤となります。

参考記事:
https://news.yahoo.co.jp/articles/40ebf2c92a4060966211d701f3d282f06867ffa7