■ はじめに:静かに進行する「人材の入口」の変化
2026年5月、衝撃的なニュースが報じられました。中国政府が指定する重点大学27校のうち、実に21校が日本への交換留学プログラムを停止または延期する意向を示しているというものです。きっかけは昨年(2025年)11月7日の高市首相による国会答弁。その9日後の11月16日、中国教育省は「日本の治安情勢と留学環境が良くない」として、日本留学を慎重に検討するよう中国国民に注意喚起しました。
これを受け、北京の有名外国語大学、上海の名門大学を含む各校が、政府の意向を「忖度」する形で交換留学プログラムを止めている、と報じられています。涙声で「今後の人生に影響する」と語る中国人学生の姿は、私たち行政書士の現場にも他人事ではない波紋を広げています。
本記事では、行政書士・ビザ申請の専門家として、このニュースが在日外国人の皆様、そして外国人を雇用する企業の経営者・人事担当者の皆様にどのような影響を及ぼすのか、そして今すぐできる備えは何かを、わかりやすく解説します。
■ 在日中国人留学生の規模 — 数字で見る影響の大きさ
日本学生支援機構(JASSO)の調査によれば、2024年5月時点で日本の大学・大学院・専修学校などで学ぶ中国人留学生は約12万人。これは日本の留学生総数のおよそ4割を占める、圧倒的な存在感です。
留学から就職へのルートとして、卒業後に在留資格を「留学」から「技術・人文知識・国際業務」へ変更する流れは、過去10年以上にわたり日本企業の人材確保の生命線となってきました。IT、製造業、サービス業、商社、研究開発 — 多くの分野で中国出身の若手社員が活躍しています。
この「入口」がいま、細りつつあります。
■ 在留資格制度の基本 — 留学生から就労ビザへの流れ
ここで、外国人雇用に馴染みのない方のために、在留資格の基本的な流れを整理します。
【ステップ1】留学ビザでの来日
まず、日本の大学や専門学校に入学する段階で「留学」の在留資格を取得します。これは原則として就労が認められない資格です(資格外活動許可で週28時間までのアルバイトは可能)。
【ステップ2】卒業後の資格変更
日本の大学・大学院を卒業し、日本企業に就職する場合、「留学」から就労系の在留資格へ変更申請を行います。代表的なものが「技術・人文知識・国際業務」です。
【ステップ3】更新・永住・帰化
就労系の資格は通常1年〜5年の期限で更新を繰り返します。一定の在留歴を満たせば、永住許可や帰化の申請も視野に入ります。
このように、留学はキャリアパスの起点でもあるのです。
■ 雇用する企業側の視点 — 今すぐ取り組むべき3つの実務
経営者・人事担当者の皆様には、以下の3点を今月中にチェックされることを強くお勧めします。
(1)外国人社員の在留期限・資格の棚卸し
全外国人社員の在留カード写しを集約し、期限・資格の種類・許可活動内容を一覧化します。期限切れの3か月前から更新申請が可能ですから、リマインダーを設定しましょう。
(2)職務内容と在留資格の整合性チェック
「技術・人文知識・国際業務」で雇用している方が、許可された業務内容と異なる仕事をしていないか確認してください。たとえば、本来オフィス勤務の方が現場作業に従事していると、資格該当性が失われるリスクがあります。
(3)採用ポートフォリオの再設計
中国出身者に依存していた採用戦略を、ベトナム、ネパール、インドネシア、ミャンマーなど多様な国籍からの採用設計へ広げる。さらに「特定技能」「技能実習」「高度専門職」など、複数の在留資格制度を活用することで、リスク分散が図れます。
■ 「特定技能」制度の活用も視野に
留学生からの新卒採用ルートが細る場合、即戦力を確保する手段として「特定技能」制度の活用が現実的な選択肢です。特定技能1号は、介護、建設、外食業、宿泊、農業、漁業など16分野で認められており、技能実習修了者や試験合格者を直接雇用できます。
ただし、外食業の特定技能1号など、分野によっては受け入れ上限に達して新規受け入れが停止される事態も発生しています。情報のアップデートは欠かせません。
■ 行政書士の活用方法 — 「困ってから」では遅い理由
外国人雇用や在留資格申請は、専門性が高く、書類の不備一つで不許可となるケースも少なくありません。行政書士、特に申請取次資格を持つ行政書士は、入管への申請を本人に代わって行うことができます。
私たちの事務所でも、「採用が決まってから慌てて相談に来る」企業様より、「採用前から人材戦略を一緒に考える」企業様のほうが、結果的にコストも時間も大幅に節約されています。情勢が動くいまこそ、一度、社内の体制を専門家とともに棚卸しするタイミングです。
■ まとめ — 静かな変化を、確かな備えに
中国の主要大学が日本への交換留学を停止する。一見すると遠い外交の話に見えるこのニュースは、3〜5年後の日本企業の採用市場、そして在日外国人コミュニティの未来に、静かにしかし確実に影響を及ぼします。
慌てて動くのではなく、いま動く。それが、外国人材を活かし続けるための最短ルートです。
ご相談はいつでもお気軽にどうぞ。複雑な制度を、誰にでもわかる言葉でお伝えするのが私たちの仕事です。
▼ 元記事
https://news.yahoo.co.jp/articles/27eda17203d319a6d07831f2a6bc2a9da13cfcb1
