■はじめに:外国人政策が大きな転換点を迎えている

2026年5月2日、産経新聞をはじめとする各メディアが、自民党外国人政策本部(新藤義孝本部長)が「国民の安全と安心を守る外国人政策」と題する政策ちらしを公開したことを報じました。

このちらしには、すでに実施されている在留審査や帰化要件の厳格化に加え、新たに「3つの約束」が掲げられています。本年1月20日には同本部から外国人政策の提言が出され、1月23日には政府が「総合的対応策」を決定しています。つまり、提言から実行へと一気に動き出しているのが現在の状況です。

行政書士として、ビザ申請・在留資格申請を日々扱う立場から見ると、この一連の流れは「在日外国人の方々の暮らし」と「外国人を雇用する企業の人事戦略」に、確実かつ広範な影響を与えるものです。

本記事では、(1)「3つの約束」の中身、(2) 在日外国人への実務的影響、(3) 企業経営者・人事担当者が押さえるべき対応ポイント、(4) これから準備すべき具体的アクション、を徹底解説します。

■自民党が掲げた「外国人政策 3つの約束」とは何か

自民党外国人政策本部が公開した政策ちらしには、以下の「3つの約束」が記載されています。

①不安や不公平をなくす
 ・違法民泊の取り締まり強化
 ・医療費の不払い防止
 ・在留審査・帰化要件の厳格化(実施済み)

②日本の土地と安全をしっかり守る
 ・外国人による土地取得制度の見直し

③ルールを学び、誰もが安心して暮らせる社会を創る
 ・日本語学習プログラムの創設
 ・生活ルールを学ぶ機会の提供

この3つは、いずれも「ルールを守って暮らす外国人」と「地域社会の住民」が、共に安心して生活できる枠組みを作ることを目的としています。

■「厳格化」は脅威か?それとも追い風か

「厳格化」と聞くと、外国人ご本人や雇用企業は身構えがちです。しかし行政書士として申し上げたいのは、ルールが明確になることは、誠実に運用してきた方々にとってむしろ追い風になり得るということです。

なぜなら、

・どこまでやれば適法か、線引きが明確になる
・ブローカーや悪質仲介業者の活動余地が縮小する
・適正な企業・誠実な外国人ほど優位に立てる

からです。

逆に言えば、「これまで何となく」運用してきたケースでは、更新時の不許可、永住申請の不認定、帰化不許可といったリスクが顕在化しやすくなります。

■在日外国人の方への影響と準備すべきポイント

①納税・社会保険の状況
更新・永住・帰化、いずれの場面でも住民税の納付、年金・健康保険の加入と納付が厳しくチェックされます。未納や遅納は致命傷になりかねません。

②住居の契約状況・生活実態
住民票の所在と実際の居住地が一致しているか、家族との同居実態などが、より丁寧に確認されます。

③在留資格と実際の活動の整合性
就労ビザの方は、職務内容と契約書の整合性、給与水準、転職時の届出などが厳格化のターゲットです。

④違法民泊・短期滞在ルールの遵守
住宅宿泊事業法の枠を超えた運用は、本人だけでなく、不動産所有者まで責任を問われる方向です。

⑤土地取得の動向
外国人による土地取得の見直しが議論されており、不動産取得を検討中の方は、取得時期や名義設計を専門家に相談することをおすすめします。

■外国人を雇用する企業がいま整えるべき体制

①採用時の在留資格チェック体制
在留カード番号の出入国在留管理庁オンライン照会は、もはや必須です。形式チェックではなく、職務内容との整合性まで踏み込んで確認する必要があります。

②雇用契約・賃金規程の整備
日本人と同等以上の報酬、社会保険完備、就業規則の多言語化など、雇用契約書レベルの精緻化が求められます。

③生活支援・日本語教育の制度化
特定技能や育成就労を中心に、日本語教育・生活ルール周知が「企業の責任領域」として強化されつつあります。社外講座の活用、社内サポーター制度などが効果的です。

④更新申請のリスクマネジメント
雇用条件・賃金・社会保険・税務までを一気通貫で整えること。更新タイミングの12か月前から定期点検する社内ルール作りが理想です。

⑤違法民泊・住居支援への対応
社員寮や借上社宅で意図せず法令抵触となるケースもあります。不動産契約書のレビューも忘れてはいけません。

■政策の全体像 ― 「総合的対応策」と今後の流れ

政府は2026年1月23日、外国人政策の基本方針「総合的対応策」を決定しています。

この基本方針は、

・在留管理の一元化と高度化
・地域社会との共生
・労働市場の適正化
・安全保障的視点(土地・インフラ)

を柱としています。

今回の「3つの約束」は、この総合的対応策を国民に分かりやすく伝えるためのコミュニケーションツールとも位置付けられます。今後、関連法令改正や運用通達が立て続けに出ることが予想されるため、半年〜1年スパンでの継続的なウォッチが不可欠です。

■行政書士の現場から ― よくあるご相談ケース

・「更新が不許可になりそうで不安」
・「特定技能の人材を初めて受け入れたい」
・「永住申請のタイミングを相談したい」
・「外国人社員の家族を呼び寄せたい」
・「採用時の在留資格チェックを仕組み化したい」
・「不動産取得の見直し議論が気になる」

このようなご相談は、いずれも「早めの相談」が結果を大きく左右します。制度が変わる局面ほど、専門家との並走が威力を発揮します。

■いま、在日外国人と企業がとるべき5つのアクション

①在留資格・有効期限の総点検
②納税・社会保険の納付状況の見える化
③雇用契約書・職務内容書の整合性レビュー
④日本語学習・生活ルール周知の社内制度化
⑤専門家との定期相談ルートの確保

■おわりに:制度を知ることが、安心の第一歩

「3つの約束」は、決して外国人を排除するものではありません。むしろ、ルールを守って真面目に暮らす方々と、受け入れる地域社会が、共に安心して生きていくための枠組みづくりです。

不安を感じている方こそ、正確な情報と、信頼できる専門家のサポートを得てください。当事務所は、在留資格・ビザ申請から、企業の外国人雇用コンプライアンス整備まで、トータルでお手伝いいたします。お気軽にご相談ください。

▼参考記事
https://news.yahoo.co.jp/articles/499c7a35067b8b3df99a4cb313f0078f58138799