はじめに

2026年6月24日、出入国在留管理庁は在留手続きに関する手数料の大幅な改定案を自民党法務部会などの合同会議で明らかにしました。この改定は、同年5月に成立した改正出入国管理・難民認定法に基づくもので、2025年10月からの施行が予定されています。

在留資格の変更・更新手数料は現行の一律6,000円から、在留期間に応じて10,000円~75,000円へ、永住許可申請手数料は10,000円から200,000円へと、いずれも大幅な引き上げとなります。

この記事では、在日外国人の皆様、そして外国人を雇用する企業の経営者・人事担当者の皆様に向けて、今回の手数料改定の詳細、背景、そして今後取るべき対応策について、ビザ申請・在留資格申請の専門家である行政書士の視点から詳しく解説します。

1. 手数料改定の具体的内容

1-1. 在留資格の変更・更新手数料

現行制度では、在留資格の変更・更新手数料は在留期間にかかわらず一律6,000円でした。しかし、改定後は在留期間に応じた段階的な料金体系となります。

改定後の手数料:

  • 3か月以下: 10,000円
  • 6か月: 金額明記なし(詳細は政令で規定予定)
  • 1年: 33,000円
  • 3年以上5年未満: 64,000円
  • 5年以上: 75,000円

この新料金体系により、例えば5年の在留資格を更新する場合、従来の6,000円から75,000円へと、実に12.5倍の手数料となります。

1-2. 永住許可申請手数料

永住許可申請については、現行の10,000円から200,000円へと、20倍の大幅引き上げとなります。

永住許可は在留資格の中でも最も安定性が高く、在留期間の制限がなく、活動制限もないため、多くの外国人が目指す資格です。しかし、今後は申請のハードルが経済的な面でも大きく上がることになります。

1-3. オンライン申請による割引制度

今回の改定では、負担軽減策としてオンライン申請を利用した場合に最大10,000円の割引が適用されます。

ただし、この割引は3か月以下の在留期間を申請する場合を除くすべての申請に適用されます。つまり:

  • 1年申請: 33,000円 → 23,000円(オンライン)
  • 3年以上5年未満: 64,000円 → 54,000円(オンライン)
  • 5年以上: 75,000円 → 65,000円(オンライン)

オンライン申請の活用により、一定の費用削減が可能です。

ただし、永住許可申請については従来通り窓口対応のみとなり、オンライン申請は利用できません。

2. 改定の背景と目的

2-1. 法的根拠

今回の手数料改定は、2026年5月に成立した改正出入国管理・難民認定法に盛り込まれたものです。

改正法では、手数料の上限額を以下のように規定しています:

  • 在留資格の変更・更新: 上限100,000円
  • 永住許可: 上限300,000円

具体的な金額は出入国在留管理庁が政令で定めることとされており、今回示された金額案は、この上限の範囲内で設定されています。

2-2. 手数料収入の使途

政府は、引き上げられた手数料収入を「日本語教育の充実」などに充てる方針を示しています。

具体的には:

  • 日本語教育プログラムの拡充
  • 外国人支援体制の強化
  • 在留管理システムのデジタル化推進
  • 多言語対応サービスの充実

つまり、外国人が日本でより快適に生活し、社会に統合されるための施策に、手数料収入が再投資される仕組みです。

2-3. 国際比較の視点

諸外国と比較すると、日本の在留手続き手数料はこれまで比較的低額でした。例えば:

  • アメリカの永住権申請: 約1,200ドル(約168,000円)
  • イギリスの永住権申請: 約2,400ポンド(約432,000円)
  • カナダの永住権申請: 約500カナダドル(約55,000円)+各種付随費用

今回の改定により、日本も国際的な水準に近づくことになります。

3. 在日外国人への影響と対応策

3-1. 経済的負担の増加

最も直接的な影響は、経済的負担の増加です。

例えば、5年ごとに在留資格を更新する場合:

  • 改定前: 6,000円/5年 = 年間1,200円
  • 改定後: 75,000円/5年 = 年間15,000円(窓口)
  • 改定後: 65,000円/5年 = 年間13,000円(オンライン)

年間ベースで見ても10倍以上の負担増となります。

3-2. 施行前申請の検討

在留期限が2026年10月以降で、かつ更新時期が近い方は、施行前の申請を検討する価値があります。

在留資格の更新申請は、在留期限の3か月前から可能です。例えば:

  • 在留期限が2026年12月の場合 → 2025年9月から申請可能
  • 在留期限が2027年1月の場合 → 2026年10月から申請可能

9月までに申請すれば、旧手数料(6,000円)が適用される可能性があります。※追加発表される情報を要チェック!

3-3. 永住許可申請のタイミング再検討

永住許可申請を検討している方にとって、今回の改定は特に大きな影響があります。

10,000円から200,000円への引き上げは、190,000円もの差額です。永住許可の要件を満たしている、あるいは近い将来満たす見込みがある方は、施行前の申請を真剣に検討すべきでしょう。

ただし、永住許可申請には以下のような要件があります:

  • 原則10年以上の継続在留(就労資格または居住資格で5年以上)
  • 現在有する在留資格について最長の在留期間を有していること
  • 素行が善良であること
  • 独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること
  • その者の永住が日本国の利益に合すると認められること

要件を満たしていない状態での拙速な申請は不許可リスクを高めますので、専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

3-4. オンライン申請への移行準備

オンライン申請で最大10,000円の割引が受けられることを考えると、デジタル化への対応は費用削減の重要な手段です。

オンライン申請には:

  • 出入国在留管理庁電子届出システムへの登録
  • 電子証明書の取得
  • 必要書類の電子化スキル

などが必要です。今のうちから準備を進めておくことで、施行後スムーズに移行できます。

4. 外国人雇用企業への影響と対応策

4-1. コスト構造の変化

企業が外国人を雇用する際、在留資格の取得・更新費用を会社が負担するケースは少なくありません。

従来、1人あたり年間数千円程度だった費用が、年間数万円規模に拡大します。複数の外国人従業員を雇用している企業にとっては、無視できないコスト増となるでしょう。

4-2. 費用負担ルールの明確化

今回の改定を機に、企業は在留資格関連費用の負担ルールを明確化すべきです。

選択肢としては:

  1. 全額会社負担
  2. 全額個人負担
  3. 会社と個人で折半
  4. 初回は会社負担、更新は個人負担
  5. 在留期間に応じて負担割合を変える

どの方式を採用するにせよ、就業規則や雇用契約書に明記し、従業員に事前に周知することが重要です。

4-3. 予算計画への反映

人事部門は、2027年度以降の予算計画に在留資格更新費用の増加を織り込む必要があります。

例えば、5年の在留資格を持つ外国人従業員が10名いる場合:

  • 改定前: 6,000円 × 10名 = 60,000円/5年
  • 改定後(窓口): 75,000円 × 10名 = 750,000円/5年
  • 改定後(オンライン): 65,000円 × 10名 = 650,000円/5年

年間ベースでは、12,000円から130,000円~150,000円へと大幅に増加します。

4-4. 在留期間選択の戦略

従来は手数料が一律だったため、在留期間の選択に経済的考慮はあまり必要ありませんでした。

しかし改定後は、長期の在留期間を取得することで、トータルコストを抑えられる可能性があります。

例えば、10年間の在留を想定した場合:

  • 1年更新10回: 33,000円 × 10 = 330,000円
  • 5年更新2回: 75,000円 × 2 = 150,000円

5年更新の方が180,000円も安くなります(オンライン申請の場合はさらに差が広がります)。

ただし、長期の在留期間を取得するには一定の要件(素行、納税状況、雇用の安定性など)を満たす必要があります。

4-5. 従業員とのコミュニケーション

手数料改定について、外国人従業員に早めに情報共有することが重要です。

特に:

  • いつから新料金が適用されるのか
  • 会社の費用負担方針はどうなるのか
  • オンライン申請への移行サポートはあるのか
  • 施行前申請を希望する場合の対応

などについて、明確に伝えることで、従業員の不安を軽減し、信頼関係を維持できます。

5. 専門家サポートの重要性

5-1. 「一発許可」の重要性が増す

手数料が大幅に上がることで、「一発で許可を得る」ことの重要性がこれまで以上に高まります。

不許可になった場合、再申請でさらに手数料がかかるだけでなく、在留資格の空白期間が生じるリスクもあります。

行政書士などビザ申請の専門家は:

  • 申請者の状況を詳細にヒアリング
  • 必要書類の漏れがないかチェック
  • 申請理由書の作成サポート
  • 不許可リスクの事前評価

などを通じて、許可の可能性を最大化します。

5-2. タイミング戦略のアドバイス

施行前に申請すべきか、施行後に申請すべきか、個々の状況によって最適解は異なります。

専門家は:

  • 在留期限と申請可能時期の確認
  • 現在の要件充足状況の評価
  • 施行前申請のメリット・デメリット分析
  • 準備期間の見積もり

などを総合的に判断し、最適なタイミングをアドバイスできます。

5-3. 企業向けコンプライアンス支援

外国人雇用企業に対しては:

  • 就業規則の見直しサポート
  • 費用負担ルールの策定アドバイス
  • 在留資格管理システムの構築支援
  • 従業員向け説明会の実施

など、包括的なサポートを提供できます。

6. まとめ:変化を前向きに捉えて

今回の在留手続き手数料の改定は、確かに経済的負担の増加を意味します。しかし、この改定は同時に、日本が外国人の受け入れと統合に本腰を入れ、そのための財源を確保しようとしている証でもあります。

手数料収入が日本語教育や支援体制の充実に使われることで、長期的には外国人にとってより暮らしやすい環境が整うことが期待されます。

在日外国人の皆様へ:
変化は不安を伴いますが、正しい情報と適切な準備があれば、乗り越えられます。施行までの期間を有効に使い、ご自身の状況に最適な対応を取りましょう。

企業の皆様へ:
外国人材は日本経済にとって貴重な資源です。コスト増を理由に採用を控えるのではなく、適切なコスト管理と支援体制の構築により、優秀な外国人材の獲得・定着を図りましょう。

私たち行政書士の役割:
制度変更の過渡期だからこそ、正確な情報提供と個別状況に応じたアドバイスが必要です。私たちは皆様の良きパートナーとして、この変化を一緒に乗り越えるお手伝いをいたします。

ご不安なこと、わからないことがございましたら、どうぞお気軽に専門家にご相談ください。

出典:
https://news.yahoo.co.jp/articles/7eedb9f87734469410f41ec7e31f3ce98a874c75