■ はじめに

2026年6月19日、日本政府は外国人向けビザ(査証)手数料を大幅に引き上げる政令改正を閣議決定しました。7月1日以降の申請分から、単数ビザは3,000円→15,000円、複数ビザは6,000円→30,000円へと、実に5倍もの値上げとなります。

茂木外務大臣は「1978年以来の見直し」と説明し、物価上昇や為替変動への対応としています。また、「すぐにインバウンドへの影響は考えていない」とも述べています。

この改定について、SNSやニュースコメント欄では賛否両論が渦巻いています。「高すぎる」「観光客が減るのでは?」という懸念の声がある一方、「むしろ遅すぎた」「適正価格だ」という意見も。

本記事では、行政書士としてビザ申請業務に長年携わってきた立場から、この改定の意義と影響、そして今後の展望を詳しく解説します。特に、在日外国人とそのご家族、外国人を雇用する企業の経営者・人事担当者の皆様に向けて、実務的な視点でお伝えします。


■ 1. ビザ手数料改定の概要

改定内容の詳細

ビザ種類改定前改定後増額
単数ビザ(1回限り入国)3,000円15,000円+12,000円
複数ビザ(複数回入国可)6,000円30,000円+24,000円

適用開始日: 2026年7月1日申請分から

背景と政府の説明

茂木外務大臣によれば、現行の手数料は1978年に定められたもので、約47年間据え置かれてきました。この間、日本国内の物価は大きく変動し、為替相場も変化しています。今回の改定は、こうした経済状況の変化に対応するためのものとされています。


■ 2. 行政書士が考える「適正価格化」の意義

なぜ私は今回の値上げを歓迎するのか?

多くの方が「5倍は高すぎる」と感じるかもしれません。しかし、ビザ申請の現場を長年見てきた行政書士として、私はこの改定を前向きに捉えています。理由は以下の3点です。

(1) 入管審査体制の強化・充実への期待

現在の入管(出入国在留管理庁)は、慢性的な人員不足と業務過多に悩まされています。

  • 申請件数の急増(技能実習、特定技能、留学生など)
  • 審査の複雑化(偽装結婚、不法就労の摘発強化)
  • システムの老朽化(オンライン申請の不具合、処理の遅延)

これらの問題により、本来1ヶ月で処理されるべき申請が数ヶ月かかるケースも珍しくありません。企業は人材確保の計画が狂い、外国人本人も不安定な状態が続きます。

増収分を審査体制の強化に充てることで、

  • 審査官の増員・研修強化
  • AIやデジタル技術を活用した審査システムの近代化
  • 透明性の高い審査基準の公開

が実現すれば、結果的に企業にも外国人にもメリットがあります。

(2) オーバーツーリズム対策の原資として

日本は観光立国を掲げ、インバウンド誘致に力を入れてきました。しかし、京都・鎌倉・富士山周辺などでは、観光客の急増により住民生活に支障が出ています。

  • ゴミ問題、騒音、マナー違反
  • 公共交通機関の混雑
  • 地価・家賃の上昇

ビザ手数料の増収を、こうした地域への支援や観光インフラ整備に活用すべきです。持続可能な観光を実現するには、「量より質」へのシフトが不可欠です。

(3) 国益にかなう外国人材の戦略的受入

日本はすでに事実上の「移民受入国」です。しかし、制度は「非移民国」のまま。この矛盾が、様々な問題を生んでいます。

今回の手数料改定を機に、以下のような仕組みづくりを進めるべきです:

  • 高度人材・技術者の優遇
  • 悪質なブローカー・偽装申請の排除
  • 適正な労働環境の確保(賃金、労働時間、安全衛生)

「誰でもウェルカム」ではなく、「日本社会に貢献し、共に成長できる人材を適切に受け入れる」。そのための財源として、適正価格の手数料は合理的です。


■ 3. 企業への影響と対応策

採用コストの増加

外国人を雇用する企業にとって、ビザ手数料の増額は直接的なコスト増です。

例: 技能実習生10名を受け入れる場合

  • 改定前: 3,000円×10名=30,000円
  • 改定後: 15,000円×10名=150,000円
  • 増額: 120,000円

中小企業にとっては決して小さくない金額です。

しかし、長期的にはメリットも

審査が迅速化・透明化されれば、

  • 採用スケジュールが立てやすい
  • 不許可リスクの予測が可能
  • コンプライアンス対応がスムーズ

といったメリットが生まれます。

企業が取るべき対応

  1. 早めの申請準備: 7月1日前に申請可能なケースは前倒しを検討
  2. 採用予算の見直し: ビザ関連費用を採用コストに織り込む
  3. 専門家の活用: 行政書士など専門家に相談し、確実な申請を

■ 4. 在日外国人とそのご家族への影響

家族滞在ビザ、配偶者ビザへの影響

日本で働く外国人が家族を呼び寄せる際、家族滞在ビザや配偶者ビザを申請します。今回の改定により、家族1人あたりの手数料も大幅に上がります。

例: 夫婦+子ども2人の場合

  • 改定前: 3,000円×3名=9,000円
  • 改定後: 15,000円×3名=45,000円
  • 増額: 36,000円

家計への負担は無視できません。

更新・変更申請への影響

在留資格の更新や変更申請には、別途手数料がかかります(現在4,000円)。今後これも改定される可能性があります。

対策とアドバイス

  • 計画的な申請: 更新時期を把握し、予算を準備
  • 正確な書類作成: 不備による再申請を避ける(再申請は再度手数料が発生)
  • 専門家への相談: 複雑なケースは行政書士に依頼し、一発許可を目指す

■ 5. インバウンド観光への影響は?

政府の見解

茂木外務大臣は「すぐにインバウンドに影響が出るとは考えていない」と述べています。

実際の影響は?

観光目的の短期滞在ビザは、多くの国・地域で免除されています(ビザ免除措置)。したがって、一般的な観光客には直接影響しません。

影響を受けるのは:

  • ビザ免除対象外の国からの観光客
  • 長期滞在者(留学、ビジネス)

「量より質」の観光へ

手数料増により、一部の観光客は減少するかもしれません。しかし、それが必ずしも悪いことではありません。

質の高い観光を実現するには:

  • 消費額の大きい観光客の誘致
  • 地域への貢献度が高い滞在型観光の推進
  • 文化・環境への配慮を重視

こうした方向性こそ、持続可能な観光立国への道です。


■ 6. 今後の展望と提言

増収分の使途を明確に

最も重要なのは、増収分が何に使われるかです。

単なる国庫収入として消えてしまうのではなく、

  • 入管審査体制の強化
  • 外国人支援施策の充実
  • 観光インフラ・地域支援
  • 不法滞在・偽装対策

など、明確な使途を示し、国民・外国人双方が納得できる形で還元すべきです。

制度全体の見直しを

ビザ手数料だけでなく、日本の外国人受入制度全体を見直す時期に来ています。

  • 在留資格の整理・統合
  • オンライン申請の完全実施
  • 多言語対応の強化
  • 地方自治体との連携

こうした改革を進めることで、真に「選ばれる国、日本」になれるはずです。

行政書士としての役割

私たち行政書士は、制度と現場の橋渡し役です。

  • 正確な情報提供
  • 適切な申請サポート
  • 制度改善への提言

を通じて、外国人と企業、そして日本社会全体の利益に貢献していきます。


■ まとめ

今回のビザ手数料5倍改定は、確かに大きな変化です。しかし、これを単なる「値上げ」と捉えるのではなく、日本の外国人受入政策を次のステージへ進めるチャンスと捉えるべきです。

重要なのは、

  • 増収分を適切に活用すること
  • 国益にかなう外国人材を戦略的に受け入れること
  • 透明で公正な制度を構築すること

この改定が、日本で働く外国人、受け入れる企業、そして地域社会すべてにとってプラスになるよう、私たち専門家も、そして皆さんも、声を上げていきましょう。

ビザ申請でお困りの際は、お気軽に行政書士にご相談ください。制度変更にも迅速に対応し、最適なサポートを提供いたします。

📰 参考記事: https://news.yahoo.co.jp/articles/62815ecc4b2c1aebd4520ff41e785b911837218b

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