目次
  1. ■ はじめに──「経営・管理」ビザに、何が起きているのか
  2. ■ 「経営・管理」ビザとは?──在留資格の基本をわかりやすく解説
  3. ■ なぜ厳格化されたのか──資本金3,000万円への引き上げの背景
  4. ■ 改正の全体像──変わったのは資本金だけではない
    1. ① 資本金:500万円以上 → 3,000万円以上
    2. ② 常勤職員の雇用:任意 → 1名以上の義務化
    3. ③ 日本語能力要件の新設:B2相当(JLPT N2以上)
    4. ④ 事業計画書への専門家評価の義務化
  5. ■ 影響の大きさ──現在の経営・管理ビザ保有者の96%が新基準未達
  6. ■ 経過措置の内容──3年間の猶予期間と個別判断の仕組み
    1. 【経過措置①:3年間の猶予期間】
    2. 【経過措置②:3年経過後の個別判断】
    3. ここからが、私の本音です。
  7. ■ 外国人経営者が今すぐ取るべき7つの対策
    1. 【対策1:事業の実態を「見える形」にする】
    2. 【対策2:税金と社会保険料を一切の滞納なく納付する】
    3. 【対策3:常勤職員の雇用体制を整える】
    4. 【対策4:増資の計画を立てる】
    5. 【対策5:事業計画書を専門家と一緒に練り直す】
    6. 【対策6:日本語能力の証明を準備する】
    7. 【対策7:あなたの状況を知る専門家に、今すぐ相談する】
  8. ■ 外国人を雇用する企業の経営者・人事担当者が注意すべきこと
    1. 企業として押さえるべき4つのこと
  9. ■ 国会で議論された論点──制度の公平性と多文化共生
  10. ■ まとめ──不安を抱えているあなたへ

■ はじめに──「経営・管理」ビザに、何が起きているのか

2026年4月14日、参議院法務委員会で在留資格「経営・管理」ビザの要件厳格化が大きな議論を呼びました。立憲民主党の打越さく良議員が平口洋法務大臣に対し、資本金要件を従来の500万円に戻すよう求めましたが、法務大臣はこれを明確に否定しています。

この改正は、2025年10月に公布・施行された改正省令に基づくもので、日本で起業する外国人に求められる資本金が、これまでの500万円以上から3,000万円以上へと引き上げられました。実に6倍です。

私はこれまで数多くの外国人経営者の方と向き合ってきました。今回の改正のニュースを聞いたとき、最初に頭に浮かんだのは制度の条文ではなく、これまでお会いしてきた一人ひとりの顔でした。

日本で事業を営み、従業員を雇い、地域に根を下ろしてきた方々。その方たちの事業と生活が、この改正でどうなるのか──これは、私にとって単なる制度の話ではありません。

本記事では、この制度変更の背景、影響、経過措置の詳細、そして外国人経営者や雇用企業が今すぐ取るべき具体的な対策について、現場の実感を交えながら詳しく解説します。


■ 「経営・管理」ビザとは?──在留資格の基本をわかりやすく解説

「経営・管理」ビザは、外国人が日本で会社を設立して経営したり、事業の管理を行ったりするための在留資格です。飲食店、貿易会社、IT企業、建設関連業など、さまざまな業種の外国人経営者がこの在留資格を取得しています。

改正前の主な要件は、以下の通りでした。

  • 資本金500万円以上、または常勤職員2名以上の雇用
  • 事業を行うための事務所が日本国内に確保されていること
  • 事業の継続性・安定性が認められること

私が日頃からお伝えしていることがあります。ビザや在留資格は、それ自体がゴールではありません。 その人が日本で事業を営み、生活を築き、人生を前に進めていくためのスタート地点をつくるものです。

実際、この在留資格のもとで多くの外国人経営者が日本各地で事業を営み、雇用を生み出し、地域社会の一部として根付いています。制度を語るとき、その先にいる**「人」**を忘れてはいけないと、私は常に思っています。


■ なぜ厳格化されたのか──資本金3,000万円への引き上げの背景

出入国在留管理庁の内藤惣一郎次長は、国会答弁の中で厳格化の理由を次のように説明しています。

第一に、日本の「経営・管理」ビザの要件が諸外国の同様の制度と比較して緩いとされていたこと。第二に、本来の目的である「事業経営」ではなく、日本への移住手段として制度が悪用されているとの指摘があったこと。第三に、在留審査の過程で事業の実態がないことが判明するケースが少なからずあったこと。

つまり、ペーパーカンパニーを設立して在留資格だけを取得するような不正行為への対策として、資本金要件が大幅に引き上げられたわけです。

この背景を理解することは重要です。正直に言えば、私たち現場の専門家から見ても、一部に問題のある案件があったことは事実です。 事業の実態がない会社、名義だけの経営者──そうしたケースが制度全体の信頼性を損ねてきたことは否定できません。

だからこそ、制度の健全化という方向性自体には一定の合理性があると、私は考えています。

しかし、です。

制度を悪用した一部の人がいたからといって、真面目に事業を営んできた圧倒的多数の外国人経営者まで同じように扱われてしまう──それは、現場を見てきた者として、やはり胸が痛む現実です。制度を正すことと、真面目にやってきた人を追い詰めることは、本来まったく別の話のはずです。


■ 改正の全体像──変わったのは資本金だけではない

今回の改正で見落とされがちですが、変わったのは資本金だけではありません。 外国人経営者の方が把握すべき改正のポイントは、大きく分けて4つあります。

① 資本金:500万円以上 → 3,000万円以上

法人の場合は払込済資本金の額、個人事業の場合は事業に投下されている総額で判断されます。なお、資本準備金や利益剰余金は含まれません。

② 常勤職員の雇用:任意 → 1名以上の義務化

改正前は「資本金500万円以上または常勤職員2名以上」という選択制でしたが、改正後は資本金3,000万円以上に加えて、常勤職員1名以上の雇用が必須になりました。

対象となる常勤職員は、日本人、特別永住者、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者に限られます。就労ビザで働く外国人は原則として対象外です。

③ 日本語能力要件の新設:B2相当(JLPT N2以上)

申請者本人、または雇用する常勤職員のいずれかが、日本語能力B2相当以上を有することが求められるようになりました。具体的には、以下のいずれかを満たす必要があります。

  • JLPT(日本語能力試験)N2以上
  • BJTビジネス日本語能力テスト 400点以上
  • 中長期在留者として20年以上在留
  • 日本の大学等高等教育機関を卒業
  • 日本の義務教育を修了かつ高等学校を卒業

④ 事業計画書への専門家評価の義務化

申請時の事業計画書について、税理士・公認会計士・中小企業診断士等の専門家による評価が求められるようになりました。更新時には、労働保険・社会保険の加入状況や納税状況など、公的義務の履行チェックも強化されています。


これらを総合すると、今回の改正は単に「お金の問題」ではないことがわかります。事業の実態、雇用の実態、日本社会との接点、経営の健全性──そのすべてが問われているのです。


■ 影響の大きさ──現在の経営・管理ビザ保有者の96%が新基準未達

国会質疑の中で指摘された数字は、この改正の影響の大きさを如実に物語っています。

現在「経営・管理」ビザで日本に在留している方のうち、資本金3,000万円以上の要件を満たしている方は**わずか4%**にとどまるとされています。言い換えれば、96%の外国人経営者が新しい基準を満たしていないことになります。

打越議員は国会で「インド料理店やネパール料理店などが各地でとても賑わっている。物価高の中で、リーズナブルな価格で非常においしくいただける。これらの店が閉じてしまうことが懸念されている」と訴えました。

この訴えには、現場を知る者として強く共感します。

実際に、飲食店だけでなく、解体業、清掃業、IT関連企業など、日本の地域経済を支えているさまざまな業種の外国人経営者がこの影響を受ける可能性があります。

そして何より、忘れてはならないことがあります。

これらの外国人経営者の多くが、長年にわたり日本で税金や社会保険料をきちんと納め、子どもを日本の学校に通わせ、地域の商工会にも参加し、日本社会に深く根付いているという事実です。

96%という数字の裏側には、一人ひとりの人生があります。私は行政書士として制度と向き合う仕事をしていますが、制度の先には常に「人」がいるということを、この場で改めてお伝えしたいと思います。


■ 経過措置の内容──3年間の猶予期間と個別判断の仕組み

ここが最も重要なポイントです。法務大臣は国会答弁で、以下の経過措置を明らかにしました。

【経過措置①:3年間の猶予期間】

改正省令の施行日から3年間(令和10年10月16日まで)は、新基準(資本金3,000万円以上等)に適合しないことのみを理由として、在留期間更新許可申請を不許可にすることはしないと明言されました。

つまり、現在すでに「経営・管理」ビザで在留している方は、すぐにビザが更新できなくなるわけではありません。

【経過措置②:3年経過後の個別判断】

施行日から3年を経過した後は、原則として新基準への適合が求められます。ただし、新基準に適合しない場合であっても、以下の点を総合的に考慮して個別に判断するとされています。

  • 会社の経営状況が良好であること
  • 法人税等の納付義務を適切に履行していること
  • 次回更新時までに新基準を満たす見込みがあること

3年後に資本金3,000万円に達していなくても、経営が安定し、納税を適正に行っていれば、在留が認められる余地があるということです。


ここからが、私の本音です。

この経過措置を聞いて、「ああ、3年あるなら大丈夫か」と安心された方もいるかもしれません。

その気持ちはわかります。でも、正直に申し上げます。「猶予がある」と「何もしなくていい」はまったく別の話です。

私がこれまで多くの案件に関わってきて断言できることがあります。入管が見ているのは、「3年後に基準を満たしているか」という結果だけではありません。「今、新しい基準に向かって本気で動いているか」という姿勢と実績です。

猶予期間を漫然と過ごした人と、初日から準備を始めた人とでは、3年後の更新審査でまったく違う結果になります。これは経験上、ほぼ間違いないと言い切れます。


■ 外国人経営者が今すぐ取るべき7つの対策

この3年間をどう過ごすかが、今後の在留を左右します。現場で案件を見てきた実感を踏まえて、実際に入管が何を評価するかという視点から、具体的な対策をお伝えします。

【対策1:事業の実態を「見える形」にする】

帳簿の整備、契約書の管理、取引先との書面のやり取り、事業所の写真記録──事業が実態を伴っていることを客観的に証明できる書類を整えましょう。

入管が個別判断をする際に、「この事業は本物だ」と確信できる材料があるかどうかは決定的に重要です。日々の地道な書類整備が、3年後のあなたを守ります。

【対策2:税金と社会保険料を一切の滞納なく納付する】

法人税、消費税、住民税、社会保険料──すべてを期限通りに納付していることが、3年後の個別判断で最も重要なプラス材料の一つになります。

滞納がある場合は、速やかに解消してください。「今は苦しいから後で」は、在留資格の審査では通用しません。ここは厳しいことを言うようですが、避けて通れない現実です。

【対策3:常勤職員の雇用体制を整える】

今回の改正で新たに義務化された要件です。日本人・永住者等の常勤職員を1名以上雇用する体制を構築する必要があります。

常勤の定義は、週5日以上・年間217日以上の労働日数、週30時間以上の労働時間、雇用保険の被保険者であることなど、具体的に定められています。形だけの雇用ではなく、実態を伴った雇用関係が求められます。

【対策4:増資の計画を立てる】

3年間で段階的に資本金を増やしていく計画を立てることも重要な選択肢です。一度に3,000万円にする必要はありません。増資に向けて着実に動いているという事実自体が、入管に対する強力なメッセージになります。

例えば、毎年の利益を資本金に組み入れる、新たな出資者を探すなど、方法はいくつかあります。どの方法が「あなたの場合」に最適かは、事業の状況次第です。

【対策5:事業計画書を専門家と一緒に練り直す】

今後3年から5年の事業計画を改めて作成し、事業の成長性や継続性を示しましょう。売上の推移、雇用計画、設備投資計画など、具体的な数字を盛り込んだ計画書は、在留審査の強力な味方になります。

改正後は、税理士・公認会計士・中小企業診断士等の専門家による評価が求められています。早い段階から専門家と連携して計画を練り上げることをおすすめします。

【対策6:日本語能力の証明を準備する】

申請者本人、または常勤職員のいずれかがJLPT N2以上等の日本語能力を証明する必要があります。試験は年に限られた回数しかありません。3年あると思っていても、受験のタイミングを逃すと間に合わなくなる可能性があります。早めの受験計画を立ててください。

【対策7:あなたの状況を知る専門家に、今すぐ相談する】

最後にして、最も大切な対策です。

在留資格の問題は、事業規模、業種、在留歴、家族構成、納税状況──個々の事情によって最善の対応がまったく異なります。 ネットやAIで手に入る一般論は、「あなたの場合」には当てはまらないことが少なくありません。

私がお伝えしたいのは、「専門家に丸投げしてください」ということではありません。あなたの現実を一番よく知っているのはあなた自身です。 その現実を共有していただいた上で、制度の中でどうすれば最善の結果につなげられるかを、一緒に考える。それが、私の考える専門家の役割です。


■ 外国人を雇用する企業の経営者・人事担当者が注意すべきこと

この制度変更は、外国人経営者本人だけでなく、外国人を雇用する企業にも直接的な影響を及ぼします。

例えば、取引先の外国人経営者が在留資格を失えば、取引関係にも影響が出ます。また、自社で「経営・管理」ビザの外国人を雇用している場合は、その方の在留資格の更新にも注意が必要です。

さらに、今回の改正で企業側に直接関わるポイントがいくつかあります。

企業として押さえるべき4つのこと

 常勤職員の雇用義務化により、受け入れ企業側の雇用体制が審査の対象になっています。労働保険・社会保険の加入状況、雇用契約の適正さが問われます。

 雇用している外国人の在留資格と有効期限を定期的に確認する仕組みをつくってください。更新時期が迫ってから慌てるのでは遅すぎます。

 在留資格に関する制度変更の情報を継続的にキャッチする体制を整えましょう。今回の厳格化の流れは「経営・管理」ビザにとどまらない可能性があります。

 問題が発生してからではなく、事前に専門家と連携する体制を構築してください。制度変更への対応は、早ければ早いほど選択肢が多く、結果につながりやすくなります。

外国人材の活用は、もはや日本企業の成長戦略に欠かせない要素です。「制度が変わったから仕方ない」で終わらせるのではなく、制度の枠の中で最善の対応を取る。 その姿勢が、企業としての競争力にもつながると私は考えています。


■ 国会で議論された論点──制度の公平性と多文化共生

今回の国会審議では、制度の公平性についても重要な指摘がなされました。

打越議員は「株式会社は資本金1円で設立できる。日本人と外国人の区別なくペーパーカンパニー対策をするなら理解できるが、外国人だけに法外な条件を課すのは不合理だ」と主張しました。

一方、入管庁は「国際慣習法上、外国人を自国内に受け入れるかどうか、受け入れる場合に付ける条件は、国家に広い裁量が与えられている」との見解を示しました。

この議論は、日本が今後どのような外国人政策を進めていくのかという根本的な問いに関わるものです。

私個人の考えを率直に言わせてください。

私は、外国人支援は業務であると同時に、使命感を伴う仕事だと思っています。日本にやってきて、言葉の壁や文化の違いを乗り越えながら事業を立ち上げ、地域に溶け込もうとしてきた方々を、私はたくさん見てきました。その努力は、日本社会にとっても大きな価値があるはずです。

「管理」は必要です。制度の悪用は許されません。しかし、管理と排除は違う。 真面目にやってきた人が報われる制度であってほしいと、現場にいる者として心から思います。

ただ、制度がどう変わろうとも、今の制度の中で最善を尽くすことが、依頼者の方にとって一番現実的な道です。政治的な議論の行方を見守ることは大切ですが、それを待っている間にも在留期限は近づいてきます。

今日、あなたができることから始める。 それが、ご自身の事業と人生を守る最も確実な方法です。


■ まとめ──不安を抱えているあなたへ

「経営・管理」ビザの資本金要件が500万円から3,000万円に引き上げられ、常勤職員の雇用義務化、日本語能力要件、事業計画書への専門家評価など、複数の要件が同時に加わりました。多くの外国人経営者にとって、大きな不安材料であることは間違いありません。

しかし、3年間の経過措置があり、その後も個別の事情を考慮した判断が行われることが法務大臣により明言されています。

大切なのは、この3年間を**「猶予」ではなく「準備期間」**として最大限に活用することです。

  • ✅ 事業の実態を証明できる書類を整える
  • ✅ 税金と社会保険料を一切の滞納なく納付する
  • ✅ 常勤職員の雇用体制を構築する
  • ✅ 増資計画を具体的に立てる
  • ✅ 事業計画書を専門家と練り直す
  • ✅ 日本語能力の証明を早めに準備する
  • ✅ そして、あなたの状況を理解してくれる専門家に相談する

最後に、私からお伝えしたいことがあります。

私は、すべての方に「大丈夫ですよ」とは言いません。制度は曲げられない。明らかに道がない案件を安請け合いすることは、かえってその方の人生を傷つけることになるからです。

でも、可能性が少しでもあるなら、全力でその道を探します。

制度の枠の中で、あなたの事業規模、業種、在留歴、家族構成、納税状況──そのすべてを踏まえて、**「あなたの場合はどうするのが最善か」**を一緒に考えます。

私がやっているのは、書類を代わりに書く仕事ではありません。あなたの人生や事業の目標に向かって、一緒に走る仕事です。

「自分のケースはどうなるの?」──その問いに、一緒に向き合わせてください。


※本記事は2026年4月15日時点の情報に基づいています。制度の詳細や運用は変更される可能性がありますので、最新の情報は必ず専門家にご確認ください。

参照元:https://www.sankei.com/article/20260415-YJYPBJXV2NGLNBYPXIQAJENAAM/