■ はじめに:経営・管理ビザを取り巻く激変
2026年5月8日、衝撃的なニュースが報じられました。日本で起業する外国人経営者のための在留資格「経営・管理ビザ」について、2025年10月の要件厳格化以降、新規申請件数が約96%減少したことが法務省関係者への取材で明らかになったのです(Yahoo!ニュース報道)。
厳格化前の5か月間では月平均約1,700件あった新規申請が、厳格化後の5か月間ではわずか約70件。この数字は、制度変更が単なる「微調整」ではなく、外国人経営者の日本進出ルートを根本から変えるほどのインパクトを持っていたことを物語っています。
行政書士として日々ビザ申請業務に携わる立場から、この変化が在日外国人経営者および外国人を雇用する日本企業にどのような影響を与えているのか、現場の実感を交えながら詳しく解説します。
■ 経営・管理ビザ厳格化の概要 – 何がどう変わったのか
【資本金要件の大幅引き上げと雇用義務化】
2025年10月、経営・管理ビザの取得要件が大きく変わりました。主な変更点は以下の通りです。
- 資本金要件:500万円 → 3,000万円(6倍)
これまで多くの外国人起業家が「最低限のハードル」として準備してきた資本金500万円が、一気に3,000万円へと引き上げられました。 - 常勤職員の雇用義務化
日本国内で常勤の従業員を雇用することが要件として明確化されました。 - 事業計画の精査強化
形式的な書類だけでなく、事業の実体・継続性・収益性が厳しく審査されるようになりました。
この厳格化の背景には、ペーパーカンパニーを設立して在留資格を取得し、実態のない経営を続けることで日本に居住し続けるという「不正利用」の実態がありました。法務省としては、悪質な事例を排除し、真に日本経済に貢献する外国人経営者を受け入れるための制度改正というスタンスです。
■ 数字が語る現実 – 新規申請96%減の意味
【申請者層の大きな変化】
法務省関係者によると、厳格化以降、新たに申請して許可されたのは「上場企業の役員クラスの人物が多い」とのこと。つまり、これまでの「中小規模で起業する外国人経営者」というビザ利用者層が、ほぼ完全に締め出された状態にあるということです。
月平均1,700件 → 70件という変化は、単なる「申請の難化」ではありません。日本での外国人起業の入口そのものが、ごく一部の大資本家・大企業役員にしか開かれていない状況に近いと言えます。
■ 当事務所での現場感覚 – リアルな数字をお伝えします
【行政書士事務所が見ている景色】
抽象的な統計だけでは、この変化の本当の意味は伝わりにくいと思います。そこで、当事務所の実例をお伝えします。
昨年10月までは、当事務所では年間10〜15件程度の経営・管理ビザの新規申請を承っておりました。お客様の多くは、日本で飲食店、貿易会社、IT関連事業、コンサルティング業などを始めようとする外国人起業家の方々でした。
しかし、2025年10月以降の新規申請は、わずか1件のみ。報道されている96%減という数字は、まさに当事務所の体感と一致しています。
その代わりに今、急速に増えているのが「更新」に関するご相談です。
■ 更新相談の急増 – 取りこぼされる経営者たち
【2028年までの経過措置の壁】
新規申請がストップする一方で、すでに経営・管理ビザを保有している方々の「更新」については、2028年までの経過措置期間が設けられています。この期間中に新基準(資本金3,000万円、常勤職員の雇用など)を満たすことが求められます。
当事務所には現在、他の行政書士事務所で取得された方や、ご自身で申請して取得された方々からの相談が次々と寄せられています。
ご相談内容を伺っていると、深刻な状況が見えてきます。
・売上はあるが、資本金を3,000万円に増資する余力がない
・現在の事業規模では常勤職員の雇用を維持できない
・コロナ禍の影響からまだ経営が回復しきっていない
・2028年までに新基準を満たせる見通しが立たない
こうした方々の中には、更新を断念せざるを得ない、あるいはキャリアチェンジを検討する、別の在留資格への変更を模索するなど、苦渋の決断を迫られているケースが少なくありません。
■ 在日外国人経営者が今すぐ検討すべき選択肢
【現状把握から始まる戦略構築】
経営・管理ビザの更新が不安な方は、以下のステップで現状整理を行うことをお勧めします。
- 現在の経営状況の客観的分析
売上、利益、資産、雇用状況を整理し、新基準到達の可能性を冷静に判断します。 - 増資・雇用拡大の現実性検証
出資者の確保、資金調達ルート、雇用予定者の見込みなど、新基準クリアへの具体的道筋を描きます。 - 代替的在留資格の検討
「技術・人文知識・国際業務」「高度専門職」「特定活動」など、ご自身の経歴・スキルに合致する別の在留資格への変更可能性を検討します。 - 配偶者・家族のビザを起点とした選択肢
配偶者が日本人や永住者の場合、別ルートでの在留も可能です。 - 帰国・第三国移住という選択
やむを得ない場合の選択肢として、計画的な事業整理と帰国準備も視野に入れます。
■ 外国人を雇用する企業の経営者・人事担当者へ
【:御社の外国人材は大丈夫ですか】
外国人を雇用される企業様にとっても、この問題は決して他人事ではありません。
特に確認していただきたいのは以下の点です。
- 経営・管理ビザで在留する役員・幹部の状況
御社の外国人役員、あるいは関連会社・取引先の経営者ビザ保有者の更新時期と、新基準への対応状況を把握しておく必要があります。 - 「想定外の帰国」リスクへの備え
キーパーソンが急に在留できなくなる事態は、事業継続上の重大リスクです。後継者育成、業務の標準化など、リスク分散策を講じておくべきです。 - 他在留資格への切り替えサポート
御社で雇用関係を結ぶことで「技術・人文知識・国際業務」への変更が可能なケースもあります。外国人経営者を社員として迎え入れる選択肢もあり得ます。 - 採用戦略の見直し
今後、新規で外国人経営者を呼び寄せて関連事業を立ち上げるルートは事実上ほぼ閉ざされました。代替的な人材戦略の構築が必要です。
■ 専門家として申し上げたいこと
【早期相談が選択肢を広げる】
ビザの問題は、時間との勝負です。
「もう手遅れかもしれない」と感じてから動き出すのと、余裕を持って戦略を立てるのとでは、取りうる選択肢の幅が全く違います。経営・管理ビザの更新まで1年を切っている方、新基準への対応に少しでも不安がある方は、できるだけ早く専門家にご相談ください。
私たち行政書士は、単なる「書類作成代行業者」ではありません。お客様の人生・事業・ご家族の将来を一緒に考え、最善の道筋を探るパートナーです。
制度の壁は確かに高くなりました。しかし、知恵と戦略次第で、必ず道は開けます。一人で悩まず、まずはご相談ください。現状を整理するだけでも、見える景色は変わります。
■ おわりに
経営・管理ビザ厳格化は、日本の入管行政における大きな転換点です。日本経済への貢献を真剣に考える外国人経営者と、彼らと共に事業を営む日本企業にとって、この変化は決して優しいものではありません。
しかし、適切な情報と戦略があれば、この激動の時期を乗り越えることは可能です。
当事務所では、在日外国人経営者の方々、外国人を雇用する企業様からのご相談を随時承っております。秘密厳守、初回相談時に現状診断をいたします。
「自分のケースはどうなるのか」を、まずは知ることから始めてみませんか。
参照記事:Yahoo!ニュース「【独自】在留資格『経営・管理』の許可基準厳格化 新規申請は96%減 2025年10月から今年3月で」
https://news.yahoo.co.jp/articles/5cdc2121860cfa3ac92cda9d246ed4067a888460
