― 行政書士が解説する、外国人雇用の新時代と「選ばれる職場」のつくり方 ―
■はじめに ― 青森の温泉地から見えた、日本の縮図
大型連休でにぎわう青森県の温泉地で、外国人技能実習生の皆さんが、満室となった宿の運営を笑顔で支えているというニュースが報じられました。八甲田の名湯では、ミャンマーから来日した実習生の方々が、接客、配膳、衛生管理を担い、日本語で先輩や同僚とコミュニケーションを取りながら、観光業の重要な戦力となっています。
「日本の方と遜色ないくらい頑張ってもらっている」――現場の管理職の方の言葉が印象的です。同時に、「人手不足はますます深刻になるので、もっと柔軟に外国の方を受け入れていきたい」という発言からは、地方の切実な現実も伝わってきます。
これは青森県だけの話ではありません。日本全国の地方都市・観光地・農業地帯・介護施設・製造業の現場で、まったく同じ光景が広がっています。そして今、この構造に大きな転換点が訪れようとしています。
本稿では、行政書士として在留資格申請やビザ手続きに携わる立場から、2027年4月に開始される「育成就労制度」が在日外国人の皆さん、そして外国人を雇用する企業の経営者・人事担当者の皆さんに何をもたらすのか、そして今すぐ何を準備すべきかを、わかりやすく解説します。
■第1章 数字で見る、地方を支える外国人労働者の現実
青森県内の外国人労働者は、2025年10月末時点で6,882人と過去最多を更新しました。10年前と比較して、その数は4倍以上に増えています。このうち約半数が技能実習生です。
全国に目を向けると、外国人労働者数は約204万人(厚生労働省統計、2025年10月末)を超え、こちらも過去最多を更新し続けています。日本の労働市場において、外国人材はもはや「補助的な存在」ではなく、産業の根幹を支える存在になっています。
特に地方では、人口減少と若者の都市部流出が続き、「外国人材なしでは事業が回らない」という業種が拡大しています。観光業、農業、漁業、食品加工、介護、建設、製造業――どれも日本の地域経済にとって欠かせない分野です。
■第2章 「技能実習制度」から「育成就労制度」へ ― 何が変わるのか
【ポイント1:制度の目的が「国際貢献」から「人材確保」へ明確化】
現行の技能実習制度は、建前としては「開発途上国への技能移転を通じた国際貢献」を目的としていました。しかし実態としては、人手不足の現場を支える労働力としての側面が強く、制度と実態のズレが長く問題視されてきました。
新しい育成就労制度では、その目的が「人材の確保と育成」と明確化されます。つまり、これまでグレーだった「労働力としての受け入れ」が、制度上も正面から認められることになります。
【ポイント2:転職が条件付きで可能に】
最も大きな変更点は、これまで原則禁止されてきた在籍1年以内の転職が、条件付きで認められるようになることです。
具体的な条件は、
・同一業務区分内であること
・一定の日本語能力・技能水準を満たすこと
・受け入れ機関の適正性が確認されていること
などが想定されています。
これは働く外国人の権利保護として大きな前進ですが、同時に企業側にとっては、これまでのように「採用すれば原則3年は在籍する」という前提が崩れることを意味します。
【ポイント3:特定技能への接続が制度上明確に】
育成就労制度を3年間修了し、所定の試験に合格すれば、「特定技能1号」へスムーズに移行できる設計となっています。さらに特定技能2号に進めば、家族帯同や永住権取得も視野に入る、長期的なキャリアパスが描けます。
■第3章 専門家が指摘する「人材流出リスク」 ― 地方の構造的課題
弘前大学の研究者は、新制度導入により「同じ国籍のコミュニティ間でSNSを通じた情報交換が活発化し、賃金の高い地域へ流れる動きが加速する」と指摘しています。
青森県をはじめとする地方は、最低賃金の水準が全国的に低い傾向にあります。せっかく日本語を学び、地域文化に馴染みつつある外国人材が、より高い賃金を求めて都市部に移動してしまえば、地方の人材投資は水の泡になりかねません。
ここで重要なのは、「賃金で都市部と勝負しない戦略」を立てることです。
■第4章 企業の経営者・人事担当者へ ― 今すぐ取り組むべき5つの対策
【対策1:キャリアパスの可視化】
技能実習(育成就労) → 特定技能1号 → 特定技能2号、というキャリアパスを社内で明確に提示しましょう。「この会社で働き続ければ、長期的に日本で生活できる」というビジョンが、定着率を高める最大の要因です。
【対策2:日本語学習支援の体制整備】
業務時間内・業務時間外を問わず、日本語学習を支援する仕組みを整えることが重要です。オンライン日本語学習サービスの法人契約、地域の日本語教室との連携、社内勉強会の開催など、コストを抑えながら実施できる方法は数多くあります。日本語能力の向上は、本人の生活の質を高めるだけでなく、職場での生産性向上にも直結します。
【対策3:住環境・生活支援の充実】
地方では、外国人が借りられる物件の選択肢が限られている、家具家電を揃えるのに苦労する、といった生活面の課題があります。社宅の整備、家賃補助、生活立ち上げ支援(銀行口座開設、携帯電話契約、医療機関の案内など)は、想像以上に「選ばれる職場」の条件になります。
【対策4:家族帯同を見据えた制度設計】
特定技能2号や技術・人文知識・国際業務の在留資格では、家族の呼び寄せが可能です。「いずれ家族と一緒に暮らせる会社」という安心感は、人材定着の決め手となります。家族の在留資格(家族滞在ビザ)取得支援も、行政書士と連携することでスムーズに進められます。
【対策5:地域社会とのつながりづくり】
職場の中だけで完結する関係では、長期定着は望めません。地域のお祭り、ボランティア活動、子どもの学校行事など、地域社会との接点を意識的に作ることが、本人の「ここに居続けたい」という気持ちにつながります。
■第5章 在日外国人の皆さんへ ― 知っておくべき自分の権利と選択肢
在日外国人の方が、新制度移行を前に押さえておくべきポイントは以下のとおりです。
- 自分の在留資格を正確に把握する
「技能実習1号・2号・3号」「特定技能1号・2号」「技術・人文知識・国際業務」など、それぞれにできる仕事の範囲、在留期間、家族帯同の可否、永住申請までの年数が異なります。 - 転職時の手続きを正しく踏む
育成就労制度では転職が可能になりますが、無条件ではありません。在留資格の変更や届出が必要なケースが多く、手続きを誤ると不法就労になる恐れがあります。必ず事前に専門家に相談しましょう。 - 永住申請への道筋を考える
引き続き10年以上の在留(うち就労資格5年以上)など、永住許可には複数の要件があります。早い段階からキャリアと在留資格を計画的に積み上げることが大切です。 - 家族の呼び寄せ
一定の在留資格・収入要件を満たせば、配偶者やお子さんを日本に呼び寄せることができます。長期的な生活設計の中で、ご家族との暮らしを実現できる選択肢があることを知っておきましょう。
■第6章 行政書士に相談するメリット ― なぜ専門家のサポートが必要か
入管手続きは、申請書類の量・専門性・書式の細かさにおいて、ご本人や企業の方が独力で対応するには大きな負担となります。さらに、新制度開始を前に、運用ガイドラインの解釈や経過措置の扱いなど、正確な情報を踏まえた判断が求められます。
行政書士は、入管業務を扱う国家資格者として、
・在留資格認定証明書交付申請
・在留期間更新許可申請
・在留資格変更許可申請
・永住許可申請、帰化申請
・特定技能受け入れ計画策定支援
・家族滞在、配偶者ビザ申請
など、外国人雇用と在留に関わる手続き全般をワンストップでサポートします。
特に、新制度移行期は、現行の技能実習生をどのように育成就労制度へ移行させるか、特定技能への接続をどう設計するかなど、企業ごとに最適解が異なります。早期にご相談いただくことで、トラブルを未然に防ぎ、計画的な人材育成が可能になります。
■おわりに ― 「ともに地域を担う仲間」として
ニュースの中で、ある実習生の方が「ここで学んだおもてなしを生かして、将来は母国で自分のビジネスをしたい」と語っていました。別の方は「日本にずっと住んで、仕事を頑張って、家族に仕送りをしたい」と語っていました。
それぞれに夢があり、人生があります。彼らを単なる「労働力」として扱う時代は、もう終わりました。これからの日本、特に地方に求められているのは、「ともに地域を担う仲間」として、外国人材を迎え入れる姿勢です。
賃金で都市部と競争するのは難しくとも、人と人とのつながり、丁寧な生活支援、長期的なキャリア設計の提示によって、地方は十分に「選ばれる地域」になれます。
2026年4月の制度移行は、その分岐点です。早めの準備こそが、企業の未来と、外国人材一人ひとりの人生の両方を支える、最も確かな投資となります。
在留資格やビザ申請、新制度対応についてのご相談は、ぜひ行政書士にお寄せください。お一人おひとり、一社一社の状況に寄り添い、最適なご提案をいたします。
▼参考記事
https://news.yahoo.co.jp/articles/22e44e6ce21ed595713a03ece910bde3cbaafd02
