■ はじめに

2026年6月12日、政府は2025年版「交通安全白書」を閣議決定しました。この白書によると、2025年の交通事故死者数は2,547人となり、統計開始以来最少を記録しました。一方で、見逃せない重要なデータがあります。それは、外国人運転者による交通事故が過去10年で最多の7,906件に達したという事実です。

在留外国人数の増加に伴い、日本で運転免許を持つ外国人数は過去10年で60.7%増加し、2025年には133万8,977人に達しました。交通事故件数も2016年から18.2%増加しています。

この記事では、行政書士・ビザ申請の専門家として、在日外国人の皆さま、そして外国人従業員を雇用する企業の経営者・人事担当者の皆さまに向けて、交通安全白書が示すデータの意味と、在留資格への影響、そして企業が取るべき対策について詳しく解説します。

■ 2025年交通安全白書の主なポイント

1. 交通事故死者数は過去最少

2025年の交通事故死者数は2,547人で、6年連続で3,000人を下回りました。ピークだった1970年の16,765人と比べると、6分の1以下にまで減少しています。

自転車乗車時のヘルメット着用が2023年から努力義務となり、着用率の向上が事故時の被害軽減に一定の効果をもたらしたと分析されています。

2. 高齢者の死者数が半数以上

年齢層別の死者数を見ると、65歳以上が55.9%を占めており、16~24歳(7.8%)、25~64歳(35.1%)を大きく上回っています。特に75歳以上の「団塊の世代」の安全確保が重要な課題とされています。

3. 外国人運転者による交通事故が過去10年で最多

在留外国人数の増加に伴い、外国人運転者による交通事故が7,906件と過去10年で最多を記録しました。日本の運転免許を持つ外国人数は2016年から60.7%増加し、2025年には133万8,977人に達しています。事故件数も2016年から18.2%増えました。

■ なぜ外国人運転者の交通事故が増えているのか?

外国人運転者による交通事故増加の背景には、いくつかの要因が考えられます。

1. 在留外国人数の増加

日本政府は外国人材の受け入れを積極的に進めており、特定技能制度や技能実習制度などにより、在留外国人数は年々増加しています。それに伴い、日本で生活し、運転する外国人も増えています。

2. 交通ルールや標識の理解不足

日本の交通ルールは国によって大きく異なります。特に以下の点が混乱を招きやすいとされています。

  • 左側通行: 多くの国では右側通行が一般的ですが、日本は左側通行です。
  • 標識の意味: 日本独自の標識や表記があり、理解が難しい場合があります。
  • 速度制限: 一般道路での速度制限が厳しく設定されています。
  • 交差点でのルール: 右折・左折時の優先順位や歩行者優先のルールなど。

3. 運転習慣の違い

母国での運転習慣がそのまま日本で通用するとは限りません。例えば、クラクションの使い方、車間距離の取り方、歩行者への配慮などが異なります。

4. 言語の壁

運転免許試験や交通安全教育が日本語で行われる場合、十分に理解できないまま運転している可能性があります。

■ 交通事故が在留資格に与える影響

交通事故、特に重大な違反や事故は、在留資格の更新や変更に影響を及ぼす可能性があります。

1. 素行要件への影響

在留資格の更新や変更の際、入国管理局は「素行要件」を審査します。交通違反や事故の履歴は、この素行要件の評価に影響します。

軽微な違反であれば大きな問題にならないケースが多いですが、以下のような場合は要注意です。

  • 飲酒運転
  • 無免許運転
  • スピード違反(特に大幅な超過)
  • 交通事故による死傷者の発生
  • ひき逃げ・当て逃げ
  • 反復継続的な交通違反

2. 刑事罰を受けた場合

交通事故により刑事罰(罰金、懲役など)を受けた場合、在留資格の更新が不許可になる可能性が高まります。特に、危険運転致死傷罪や過失運転致死傷罪で有罪となった場合は、深刻な影響があります。

3. ビザ更新時の提出資料

ビザ更新時には、身分を証明する書類や収入証明などを提出しますが、交通事故歴や違反歴について申告を求められる場合があります。虚偽の申告をすると、さらに深刻な問題となります。

4. 強制退去のリスク

重大な交通犯罪(危険運転致死傷、飲酒運転など)により禁錮刑以上の刑罰を受けた場合、強制退去(国外退去)の対象となる可能性があります。

■ 在日外国人の皆さまへ – 安全運転のために知っておくべきこと

1. 日本の交通ルールを再確認しましょう

母国と日本では交通ルールが異なります。運転免許を取得した後も、定期的に交通ルールを確認することが大切です。

  • 警察署や運転免許センターで配布されている多言語の交通安全パンフレットを活用する
  • オンラインの交通安全教育動画を視聴する
  • 地域の交通安全講習会に参加する

2. 標識の意味を理解しましょう

日本の道路標識は、国際基準に準じているものもありますが、独自のものもあります。特に以下の標識は重要です。

  • 一時停止
  • 進入禁止
  • 速度制限
  • 駐車禁止
  • 追い越し禁止

3. 自動車保険に必ず加入しましょう

日本では、自賠責保険(強制保険)に加えて、任意保険への加入が強く推奨されています。万が一の事故に備え、十分な補償内容の保険に加入することが重要です。

4. 飲酒運転は絶対にしないこと

日本では飲酒運転に対する罰則が非常に厳しく、刑事罰の対象となります。在留資格にも深刻な影響を及ぼしますので、絶対に避けてください。

5. 事故を起こした場合の対応

万が一事故を起こしてしまった場合は、以下の手順を守りましょう。

  1. 直ちに車を安全な場所に停車
  2. 負傷者の救護(必要に応じて救急車を呼ぶ)
  3. 警察への通報(110番)
  4. 相手方との情報交換(名前、連絡先、保険会社など)
  5. 保険会社への連絡
  6. 行政書士やビザの専門家に相談(在留資格への影響を確認)

6. 在留資格への影響が心配な場合は専門家に相談

交通事故を起こしてしまった場合、在留資格への影響が心配な方は、早めに行政書士やビザの専門家に相談することをお勧めします。

■ 外国人従業員を雇用する企業の経営者・人事担当者の皆さまへ

外国人従業員が業務で車を運転する場合、企業には安全配慮義務があります。交通事故が発生した場合、企業の使用者責任が問われるだけでなく、従業員の在留資格にも影響が及ぶ可能性があります。

1. 採用時の運転免許証確認

外国人従業員を採用する際、運転業務がある場合は以下を確認しましょう。

  • 日本の運転免許証を保有しているか
  • 免許証の有効期限
  • 過去の交通違反歴や事故歴
  • 国際運転免許証の場合、有効期間(通常1年間)

2. 交通安全教育の実施

外国人従業員に対して、日本の交通ルールや安全運転に関する研修を実施しましょう。

  • 入社時のオリエンテーションで交通ルールを説明
  • 多言語の交通安全資料を提供
  • 定期的な安全運転講習会の開催
  • eラーニングシステムの活用

3. 運転記録の管理

従業員の運転記録を定期的に確認し、違反や事故の有無を把握しましょう。問題がある場合は、再教育や運転業務の一時停止などの措置を検討します。

4. 自動車保険の確認

業務で使用する車両には、適切な自動車保険(特に対人・対物無制限の任意保険)に加入していることを確認しましょう。

5. 事故発生時の対応フローの整備

万が一、従業員が交通事故を起こした場合の対応フローを事前に整備しておきましょう。

  • 事故発生時の連絡体制
  • 警察・保険会社への連絡手順
  • 被害者への対応
  • 行政書士やビザ専門家への相談(在留資格への影響確認)
  • 社内報告と再発防止策の検討

6. 企業の法的責任

従業員が業務中に交通事故を起こした場合、企業には以下の法的責任が生じる可能性があります。

  • 使用者責任(民法第715条): 従業員の不法行為について、企業が損害賠償責任を負う
  • 安全配慮義務違反: 適切な安全教育や管理を怠った場合、企業の責任が問われる
  • 運行供用者責任(自動車損害賠償保障法): 企業所有の車両による事故の場合、企業が賠償責任を負う

7. 在留資格への影響とフォロー

外国人従業員が交通事故を起こした場合、在留資格への影響を考慮し、適切なフォローを行いましょう。

  • 行政書士やビザ専門家への相談をサポート
  • 必要に応じて、会社として証明書や推薦状を発行
  • 従業員の精神的サポート

■ 交通安全と在留資格に関するQ&A

Q1. 軽微な交通違反でもビザ更新に影響しますか?

A1. 一時停止違反や駐車違反など、軽微な違反1~2回程度であれば、通常は大きな影響はありません。ただし、反復継続的な違反や、飲酒運転、無免許運転などの重大な違反は、在留資格に影響する可能性が高いです。

Q2. 交通事故を起こした場合、すぐにビザが取り消されますか?

A2. 交通事故を起こしただけで即座にビザが取り消されることは通常ありません。ただし、重大な事故(死傷者が出た場合など)や、刑事罰を受けた場合は、ビザ更新時の審査に影響します。

Q3. 国際運転免許証でずっと日本で運転できますか?

A3. 国際運転免許証での運転は、日本上陸日から1年間のみ有効です。1年を超えて日本に滞在する場合は、日本の運転免許証を取得する必要があります。

Q4. 企業として、外国人従業員の交通違反歴を確認できますか?

A4. 本人の同意があれば、運転記録証明書を警察署や自動車安全運転センターから取得できます。ただし、個人情報保護の観点から、適切な手続きが必要です。

Q5. 交通事故を起こした従業員をサポートする方法は?

A5. まず、事故の詳細を確認し、保険会社への連絡をサポートします。在留資格への影響が懸念される場合は、行政書士やビザ専門家への相談を勧め、必要に応じて会社として証明書類を用意します。

■ まとめ

2025年交通安全白書が示すデータは、在留外国人の増加に伴い、外国人運転者による交通事故も増加しているという現実を明らかにしました。

在日外国人の皆さまにとって、交通安全は単なる事故防止だけでなく、在留資格の維持、日本での生活の安定にも直結する重要なテーマです。日本の交通ルールを正しく理解し、安全運転を心がけることが、ご自身とご家族の未来を守ることにつながります。

外国人従業員を雇用する企業の経営者・人事担当者の皆さまにとっては、適切な交通安全教育と管理体制の整備が、企業のリスクマネジメントとして不可欠です。従業員の安全を守ることは、企業の社会的責任でもあります。

行政書士として、ビザ申請・在留資格の専門家として、私たちは皆さまが安心して日本で生活し、働ける環境づくりをサポートしています。交通事故と在留資格の関係、企業としてのリスク管理、ビザ更新の不安など、どんな小さなことでも構いません。お気軽にご相談ください。

安全運転は、すべての人の生活と未来を守る基盤です。共に、安全で安心な社会を築いていきましょう。

参考記事URL:
https://news.yahoo.co.jp/articles/06941ca38568d2f6aa6486f884600d16c7ce7a61