■はじめに──「外国人IT人材10万人時代」がやってきた

2026年、日本のIT業界に大きな変化が訪れています。総合人材サービス会社ヒューマンリソシアが発表した最新調査によると、IT業界で働く海外人材は前年比8.1%増の約9.8万人。まもなく10万人の大台に到達する見込みです。

2016年には4.4万人だった数字が、わずか10年で約2.2倍にまで拡大。IT業界全体の就業者数の伸びが約1.5倍にとどまっていることを考えれば、海外人材がいかに急速に存在感を増しているかが分かります。

ビザ申請・在留資格申請を専門とする行政書士として、私はこの数字の裏側にある「採用現場のリアル」「働く本人の心情」「企業が直面する制度上の課題」を、日々のご相談を通して感じています。本記事では、最新データをもとに、在日外国人の方、そして外国人を雇用する企業の経営者・人事担当者の皆様に向けて、知っておきたいポイントを整理してお伝えします。

■1. 外国人IT人材が急増している背景──「技術・人文知識・国際業務」が67.3%

まず注目すべきは、IT業界で働く外国人の在留資格の内訳です。調査によると、75.7%が「専門的・技術的分野」の在留資格を持ち、そのうち「技術・人文知識・国際業務」(通称「技人国」)が67.3%を占めています。

この「技人国」という在留資格は、いわゆるホワイトカラー専門職向けの代表的なビザです。ITエンジニア、システム開発、プロジェクトマネージャー、データサイエンティスト、通訳・翻訳、海外取引業務など、幅広い職種をカバーします。

なぜ「技人国」が選ばれるのか。それは、

・大学卒業以上、または相当の実務経験があれば申請可能
・転職時にも比較的柔軟に対応できる
・家族滞在ビザで配偶者・子を呼び寄せられる
・在留期間も最長5年と長め

といった、外国人にとっても企業にとってもメリットの大きい制度だからです。

ただし、誤解されがちなのが「技人国だからどんな業務でもOK」ではないという点。職務内容と学歴・経歴の関連性が審査の最重要ポイントです。例えば、文系大卒の方をITエンジニアとして採用する場合、IT関連の実務経験10年以上が必要となるなど、細かい要件があります。採用時にこの点を見落とすと、更新時に不許可となるリスクもあるため注意が必要です。

■2. 「東京以外では働かない」は本当か──外国人IT人材の8割が東京集中

今回の調査でもう一つ衝撃的なデータが、「東京一極集中」の度合いです。

・IT業界で働く海外人材の約8割が東京勤務
・東京で働く外国人ITエンジニアは2021年の5.7万人→2025年7.8万人へ
・IT業界全体(日本人含む)の東京比率は3割強
・全産業の海外人材東京比率は25.4%

つまり、日本人IT人材や他産業の外国人と比べても、外国人ITエンジニアの東京集中は際立っているのです。

なぜ東京なのか。私が日々のご相談で耳にする声を整理すると、

  1. コミュニティの存在 ── 同国出身者のネットワーク、母語で通える店や学校、宗教施設の充実
  2. 案件・求人の多さ ── キャリアアップの選択肢が広い
  3. 生活インフラ ── 多言語対応の役所手続き、医療機関、不動産仲介
  4. 家族の生活基盤 ── 配偶者の就労機会、子の国際学校・インターナショナルスクール
  5. 情報アクセス ── 在留資格・税務・社会保険等の専門家が多い

これらが複合的に作用し、「東京以外では働かない」という選択が生まれています。

■3. 地方企業にもチャンスはある──制度を活かした採用設計のポイント

では、地方企業に勝ち筋はないのでしょうか。決してそんなことはありません。むしろ、地方には地方の魅力があります。

・住居コストの低さ
・通勤負担の少なさ
・ワークライフバランスの良さ
・地域コミュニティとの密接な関わり

問題は、これらの魅力を「制度面の安心」と組み合わせて発信できているかどうかです。

行政書士の視点から、地方企業が外国人ITエンジニアを採用する際の押さえどころを整理します。

(1) 職務内容書の精緻化
「技人国」の許可・更新では、職務内容が在留資格の活動範囲に合致しているかが最重要です。「IT業務全般」といった曖昧な記載ではなく、「自社サービスのバックエンド開発(Python/Go言語)」「クラウドインフラ設計(AWS)」など、具体的な記述が必要です。

(2) 報酬水準の確保
「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上」が要件です。地方だからといって極端に低い給与設定は、不許可リスクを高めます。

(3) 雇用契約書・労働条件通知書の整備
母語または英語併記の契約書は、トラブル予防にも有効です。

(4) 受け入れ体制の構築
住居の手配、銀行口座開設、生活オリエンテーション、メンター制度など、定着支援が採用成功の鍵を握ります。

(5) リモートワーク制度の活用
「東京拠点での雇用+地方居住」「フルリモート」など、柔軟な働き方を制度設計することで、東京志向の人材にもアプローチできます。

■4. 在留資格の落とし穴──知らないとリスクになる「契約機関に関する届出」

外国人を雇用する企業の経営者・人事ご担当者に必ず知っておいていただきたいのが、「契約機関に関する届出」です。

「技人国」などで在留する外国人は、転職・離職・所属機関の名称変更などがあった場合、14日以内に出入国在留管理庁に届け出る義務があります。これを怠ると、次回更新時に不利益となる可能性があります。

また、企業側にも「外国人雇用状況届出書」の提出義務があります(雇用対策法)。ハローワークへの届出を忘れると、30万円以下の罰金が科される可能性があります。

これらは細かい手続きですが、見落としやすい部分。当事務所では、こうした「採用後の継続的なコンプライアンス」も含めてサポートしています。

■5. 家族帯同・永住──「長く働いてもらう」ための視点

優秀な外国人ITエンジニアに長く活躍してもらうためには、本人だけでなく家族の生活設計も視野に入れる必要があります。

家族滞在ビザ ── 配偶者・子の呼び寄せ
配偶者の就労資格変更 ── 「家族滞在」から「技人国」「特定活動」への変更
永住許可申請 ── 原則10年居住、ただし高度人材ポイント制で1〜3年に短縮可能
高度専門職ビザ ── 親の帯同、家事使用人帯同など特例多数

特に「高度専門職」は、年収・学歴・職歴・年齢などをポイント化し、70点以上で認定される制度です。優秀なITエンジニアの多くは、この制度の対象となる可能性が高く、企業側からの提案でモチベーション向上・定着促進につながります。

■6. これからの外国人IT人材活用──「選ばれる企業」になるために

ヒューマンリソシアの分析でも指摘されている通り、「ITエンジニア不足が続く中、海外出身IT人材の活用は今後も重要な選択肢」です。一方で、外国人材は日本企業を「選ぶ側」でもあります。

選ばれる企業になるためには、

・透明性のある採用プロセス
・公平な評価制度
・明確なキャリアパス
・多文化共生の社内文化
・制度面の安心(在留資格サポート)

が欠かせません。

外国人雇用は、もはや一部の大企業だけのものではなく、地方の中小企業にとっても経営戦略そのものです。そして、制度を正しく理解し、活用することが、その第一歩となります。

■おわりに──「相談できる行政書士」がいる安心を

私はこれまで、ITエンジニアの在留資格申請、企業の外国人採用コンサルティング、家族帯同や永住申請など、数多くのご相談に対応してきました。

「制度がよく分からないから採用に踏み切れない」
「採用後のフォローが不安」
「地方拠点で外国人を雇いたいが、何から始めればいいか分からない」

そんな声に、専門家として寄り添うのが私の役割です。10万人規模に拡大した外国人IT人材市場。この大きな流れの中で、貴社・あなたが次の一歩を踏み出すお手伝いができれば幸いです。

ご相談は初回無料で承っております。お気軽にお問い合わせください。

▼参考記事
Yahoo!ニュース「東京以外では働かない」外国人IT人材が10万人規模に
https://news.yahoo.co.jp/articles/5667159a9ce2d88a0b17c3cc76f6edbb5f741255