ニセコビザ申請サポートセンター代表、申請取次行政書士の明山崇です。

私は主に、北海道の宿泊業や観光業で働く、外国籍従業員の方の在留許可申請、いわゆる就労ビザの、新規取得や更新手続きのお手伝いを行っています。

外国人の方でも、サラリーマンとして会社勤めをするだけでなく、独立起業をして自分のビジネスを立ち上げる方もいらっしゃいます。そのような場合のビザ(在留資格)としては、「経営・管理」と「高度専門職(ハ)」の2つがあります。今回は、「高度専門職(ハ)」を取得するためには、どのような要件が必要とされているのか?について解説をしていきます。

はじめに;高度専門職ビザとは

「高度専門職」とは、高度人材を外国から招聘するために、ポイント制度を用いた出入国在留管理上の優遇制度で、2012年5月に開始されました。就労系在留資格のうち、「教授」、「研究」、「技術・人文知識・国際業務」、「経営・管理」等、ホワイトカラーの職務内容を行うビザを取得する外国人の方で、「学歴」・「年収」・「職務経験」・「年令」等の基準をポイントにして、ある一定の基準を満たしている特に優秀な方を優遇するために作られた新たなビザです。「高度専門職」は、従事する職務内容によって(イ)~(ハ)に分かれています。このうち、(ハ)が高度経営・管理活動を行う在留資格です。この活動内容は、「本邦の公私の機関において事業の経営を行い又は管理に従事する活動」とされています。「事業の経営または管理に従事」ということで、「経営・管理」の活動内容が該当します。起業して会社経営を行う方や、企業の経営陣・役員として働く人が想定されます。

高度専門職(ハ)を取得するために必要な申請人の要件は?

まずは、高度専門職ポイント計算表を使って、ご自身の学位や出身大学、職歴・実務経験年数、年収、年齢、日本語能力などによって与えられているポイントを合算していき、「高度専門職」のビザが申請できる基準点に達しているかを判断します。具体的には、このポイントが70点以上になった方は申請することができます。この、高度専門職ポイント計算表は、出入国在留管理庁のホームページに掲載されていますので、そちらをご参照ください。

なお、高度専門職(ハ)に関しては、ポイントだけでなく、基準となる年収の下限が定められています。年収の下限は300万円と定められており、それ以下の場合は、他の項目で70点を超えていても、高度専門職のビザを申請することはできません。

高度専門職(ハ)を取得するために必要な会社の要件は?

このビザを申請するために必要な会社の要件は、在留資格「経営・管理」を取得する際に設立する会社と同じ要件になっています。具体的には、

資本金の額

事業の規模は資本金の額で判断され、「高度専門職(ハ)」を取得するための会社は、資本金が500万円以上あることが必要とされます。もしくは、常勤の従業員を2人以上という規定もありますが、現実的に考えると、資本金が500万円用意できないようなケースでは、常勤従業員を複数雇用するということはほぼ不可能だと考えられることから、事業開始時の資本金500万円は、投資額として必要となります。

事務所の準備

「高度専門職(ハ)」を取得するための会社は、独立した事務所を確保する必要があります。この規定により、まず自宅兼事務所は不可です。自宅とは別の場所に事務所を設立する必要があります。そして、レストランや整体院など、店舗でサービスを提供するビジネスモデルの場合には、店舗兼事務所も不可です。店舗の中に、壁で仕切られた完全独立した事務所スペースを確保してください。簡易パーテーションなど可動式の仕切りで空間を分けることは不可です。もし、店舗内で確保できない場合は、店舗近隣に「経営」や「管理」の仕事(事務作業)をするスペースを確保することが求められます。

なお、店舗を借りる場合の契約にも注意が必要です。賃借人は社長個人ではなく、設立する会社名で、そして、物件の使用目的は、住宅ではなく、店舗や事務所など、事業用に使用するということが、契約書の書面上明確にわかる状態になっていないと、ビザ申請において不許可になる可能性が高いです。

営業開始できるような準備

「高度専門職(ハ)」は、会社の設立が終わり、ビジネスやサービス提供が開始できるような状態まで準備が整ってからでないと、申請をすることができません。事務所や店舗を借り、内装や什器備品一切を整え、営業開始できるような物理的な状態を整えることはもちろんです。そして、たとえば、レストランを経営する場合は、食品衛生責任者の有資格者を確保し、飲食店の営業許可をとるなど、法的にも開設要件を満たしていることが求められます。在留資格が取れてから営業開始の準備をする、ということでは「高度専門職(ハ)」の許可が得られることはありません。

法人の形態

「高度専門職(ハ)」を取得するための会社設立では、法人の形態は、合同会社・株式会社どちらでもよく、この違いによって、ビザの許可が得られやすいかどうかの違いはありません。

会社規模で加点されるポイントは?

「高度専門職(ハ)」のポイント計算上、会社規模が大きい、つまり、投資額が大きい場合には、加点項目が用意されポイント計算上優遇されます。具体的には、経営する事業に1億円以上の投資を行っている場合には、10ポイントが加算されます。

まとめ

今回は、「高度専門職(ハ)」を取得するための要件を見てきました。申請人と設立する会社のそれぞれに必要な要件があります。申請人に関しては、高度専門職ポイント計算表で70点以上を獲得することと、年収300万円以上であることの2つの要件を満たすこと。設立する会社に関しては、「経営・管理」のビザと同様に、出資金500万円以上、会社名義の独立した事務所の確保、営業準備完了の3点が必要となります。

ポイント計算上の点数以外は、基本的な会社設立要件などは、「経営・管理」も「高度専門職(ハ)」もほとんど違いがないといえます。しかし「高度専門職(ハ)」に関しては、永住資格取得のための居住要件の緩和や、両親を日本に呼び寄せができるなど、日本に中長期的に在留する上での有利な特典が多いため、興味のある方は、「高度専門職ポイント計算表」を使って、現在ご自身が何ポイントあるのかを確認してみることをお勧めいたします

ニセコビザ申請サポートセンターは、言葉や文化、そして国境の壁を乗り越えて、日本社会の一員として生きていこうとする、外国人の方々を全力で応援し、サポートします。この記事に関するご質問、お問い合わせや、高度専門職への在留資格変更に関しての条件面、手続き面、ポイント計算に関するお問い合わせは、お電話か、ホームページの「無料相談フォーム」からお気軽にお問合せください。