ニセコビザ申請サポートセンター代表、申請取次行政書士の明山崇です。

私は主に、北海道の宿泊業や観光業で働く、外国籍従業員の方の在留許可申請、いわゆる就労ビザの、新規取得や更新手続きのお手伝いを行っています。

今回は、「教授」「研究」「技術・人文知識・国際業務」「経営・管理」といった、就労系のビザ(在留資格)を持つ外国人の方が、在留資格を「高度専門職」に変更することによって生じるメリットについて解説していきます。

はじめに;高度専門職ビザと優遇措置

「高度専門職」とは、「学歴」・「年収」・「職務経験」・「年令」等をポイント制度によって点数化して、70点を超えた方のみが申請できる在留資格です。高学歴・高年収の高度人材を日本に招聘することを目的としているため、通常の就労系在留資格と比べて、この在留資格の取得者にはメリットや優遇措置が7つも用意されています。これらを1つずつ見ていきましょう。

「高度専門職1号」の方に用意された7つの優遇措置

複合的な在留活動の許容

通常の就労系在留資格では、1つの在留資格につき1種類の就労活動しか認められていなく、原則として、2つ以上の職務内容を1つの在留資格で掛け持ちをして従事することはできません。しかし、高度専門職の在留資格を持つ人は、複数の在留資格に係る職務に携わることができます。例えば、商品の開発といった「研究」の活動を行いながら、自身の会社を起業し研究開発した商品を販売する会社を経営するといった、「経営・管理」の在留資格の範囲の活動を、高度専門職の在留資格で行うことが可能になります。

在留期間「5年」の付与

ほとんどの在留資格では、新規に取得した場合の在留期間は「1年」であることが多いです。そして更新を繰り返すごとに、その期間は「3年」「5年」と長くなっていきます。ところが、高度専門職の場合は、初回から在留期間5年が付与されます。在留資格更新のための書類作成や収集といった、煩雑な手続きから解放され、更新手続きを気にすることなく高度人材としての職務に集中し、パフォーマンスを発揮できる環境が提供されていると言えます。

在留歴に係る永住許可要件の緩和

高度専門職を持つ方が、永住ビザへの変更申請を希望した場合、引き続き日本に住んでいる期間を規定した居住要件が大幅に緩和されます。高度専門職ポイントが70点以上80点未満の方は3年、80点以上の方は1年、日本に居住していれば、在留資格「永住」への変更申請が可能になります。通常の就労系在留資格を持つ人の場合は10年、日本人と結婚した方は3年ですので、これらの人たちと比べると、かなり「永住」の在留資格が取りやすくなっていることがわかります。

配偶者の就労

高度専門職の在留資格を持つ外国人と同居している配偶者は、「研究」、「教育」、「技術・人文知識・国際業務」、「興行」(一部)の、在留資格で定められている就労活動を行うことができます。条件としては、

1)高度専門職を持つ人と同居していること」

2)日本人が従事する場合に受ける報酬と同等以上の報酬を得ること

の2点で、配偶者の学歴や専攻内容、職歴などは必要とされていません。なお、高度専門職の方の配偶者がこのような仕事を行う場合、在留資格は「特定活動33号」となります。

一定の条件の下での親の帯同の許容

現時点で、高度専門職以外の在留資格では、母国に住んでいる親を招聘することはできませんが、高度専門職の場合は、以下のような条件であれば、親を日本に呼び寄せることができます。   

1)高度専門職の方の世帯年収が800万円以上あること   

2)高度専門職の方の7歳以下の子供の養育を行うこと、もしくは、高度専門職の方本人か配偶者が妊娠中で介助や家事を行うこと

3)高度専門職の方と同居すること   

4)高度専門職の方の両親、もしくは、配偶者の両親であること

なお、高度専門職の方の親がこのような活動を行う場合、在留資格は「特定活動34号」となります。

一定の条件の下での家事使用人の帯同の許容

現在の在留資格で、家事使用人(お手伝いさん)を母国から招聘できるのは、外交官や領事などごく一部の人を対象にしたもののみですが、高度専門職の在留資格を持つ人も、同様に家事使用人を招聘することが可能です。一例として、母国で使用していた家事使用人を日本に招聘する場合は、以下のような条件が必要となります。   

1)高度専門職の方の世帯年収が1000万円以上あること    

2)招聘できる家事使用人は1人までであること   

3)家事使用人に月20万円以上を報酬として支払う予定であること   

4)母国で引き続き1年以上、同じ高度専門職の方に雇用されていたこと   

5)高度専門職の方が帰国する際に、家事使用人も一緒に日本を出国すること

家事使用人の帯同が許可されているということは、日常生活上の家事や育児に時間を無駄にせず、高度人材としての職務に集中し、パフォーマンスを発揮できる環境が提供されていると言えます。

入国・在留手続の優先処理

入国や在留に関する審査が優先的に迅速に行われることも優遇措置として挙げられています。具体的には、

1)在留資格証明書交付申請等、入国事前審査に関しては、申請受理から10日以内を目途

2)更新など在留審査に関しては、申請受理から5日以内を目途

という具合に、迅速に審査結果が出ることになっています。

「高度専門職2号」にはどのような優遇措置があるのか?

高度専門職1号の活動を3年間継続した外国人の方は、高度専門職2号に移行できます。2号に移行した場合には、以下のような優遇措置があります。

①就労に関する在留資格で認められる、ほぼすべての活動を行うことが可能になる。

②在留期間が「無期限」になる。

これは、実質的に「永住」の在留資格と同様になります。逆を言うと高度専門職ポイントが70点以上を3年間継続している段階で、在留資格「永住」の申請要件を満たします。この時点で永住に変更せず、高度専門職のままであっても、在留期間を「無期限」にすることで、実質的には永住の在留資格と同じ扱いとなります。

さらに、1号の③~⑥までの優遇措置も引き続き受けられます。

まとめ

在留資格「高度専門職」の優遇措置を一つずつ見てきましたが、外国人の方に魅力だと思われることは、

①在留期間が最初から5年

②配偶者の就労制限が少なく働くことができる

③永住ビザを取るのための住居要件の短縮

④親を呼んで一緒に暮らせる

の4点ではないかと思われます。

このように、日本に中長期的に在留する上での有利な特典となることが多いため、高度専門職ポイント表を確認の上、基準を満たしている場合は、変更申請を検討されることをお勧めします。

ニセコビザ申請サポートセンターは、言葉や文化、そして国境の壁を乗り越えて、日本社会の一員として生きていこうとする、外国人の方々を全力で応援し、サポートします。この記事に関するご質問、お問い合わせや、高度専門職への在留資格変更に関しての条件面、手続き面、ポイント計算に関するお問い合わせは、お電話か、ホームページの「無料相談フォーム」からお気軽にお問合せください。