2025年6月9日、石破首相が参議院決算委員会で「外国人の増加に伴う問題に総合的に対応するため、内閣官房に新たな事務局組織を設ける」と発言しました。これは、違法民泊や不動産トラブルに対する取り締まり強化を超えて、「秩序ある共生社会」を目指す包括的な対応への本格的な一歩です。
背景には、違法民泊や不動産取得を巡るトラブルの深刻化があります。特に東京都板橋区のケースでは、中国に住所登録された人物が中古マンションを購入し、家賃を相場の2〜3倍に引き上げたことで住人の3割が退去を余儀なくされる事態に。また、観光名目で借りた物件が実際には居住に使われ、近隣住民とのトラブルが頻発するなど、地域社会との軋轢が顕在化しています。
こうした現状を受けて、政府は「誰のための政府かを忘れてはならない」との認識のもと、外国人の社会経済活動の実態把握、制度運用の適正化、違法民泊の調査・取り締まりの強化、相談窓口の整備といった対策を内閣官房の新組織主導で推進する方針です。
政府の基本姿勢は、「国民の安全・安心の確保」を軸としながらも、排除ではなく「適正なルールのもとでの共生」を目指す点に特徴があります。つまり、制度整備は外国人にとっても、安心して暮らし働ける環境をつくる契機になり得るのです。
その一方で、「ルールを守る」ことの重要性はこれまで以上に強調されます。不透明な契約や手続きミスが思わぬトラブルにつながる可能性があるため、外国人本人に加え、受け入れる企業や地域社会の意識と対応が求められます。
外国人を雇用する企業にとっても今回の政策強化は重大な意味を持ちます。特に以下の3点は必ず押さえておきたい視点です:
- 在留資格の適正な取得・更新と職務内容の整合性確保
- 外国人社員の住環境や生活支援体制の構築
- トラブル発生時の相談ルートや対応マニュアルの整備
例えば、職務と就労資格の不一致が発覚した場合、企業が罰則対象となることも。また、書類の不備で在留資格の更新ができず、本人が退職を余儀なくされるケースも現実にあります。
さらに、不動産契約においても注意が必要です。契約内容の透明性確保、言語対応、契約更新・解約条件の明示などがトラブル回避の鍵となります。企業が社宅を用意する場合には、建築基準法や消防法などの規定との整合性にも十分留意する必要があります。
行政書士としては、在留資格関連の書類作成はもちろん、外国人受け入れ体制の整備支援や制度・契約内容の翻訳対応、法改正情報の提供などを通じ、企業と外国人の「橋渡し役」として積極的に関与しています。
制度や環境の変化に直面する今こそ、私たちが目指すべきは「安心して共に働き暮らせる社会」の実現です。変化を前向きに捉え、必要な整備と対話を進めることで、「秩序ある共生社会」の実現に一歩近づくことができます。
外国人の雇用や住環境整備に関するお悩みがございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。行政書士として、安心できる制度運用のお手伝いをいたします。