日本での起業を目指す外国人にとって、「経営・管理ビザ(Business Manager Visa)」は不可欠な在留資格です。このビザは、一定の条件を満たすことで、日本国内で会社を設立・運営し、継続的に在留することを認める制度です。

現在(2025年6月時点)の経営・管理ビザの主な要件は以下の通りです:

・500万円以上の資本金(またはそれに相当する出資) ・日本国内に事業所(オフィス、店舗等)が存在すること ・常勤職員2名以上の雇用、または同等の経営規模があること ・事業の継続性・安定性が認められること(事業計画書の提出を含む)

これらの要件のうち、特に注目されているのが「資本金500万円以上」という基準です。他国と比較して相対的に低水準であることから、比較的“手軽”にビザを取得できるルートとみなされてきました。

しかし、最近の傾向として、中国を中心とする外国人によるビザ取得数の増加が目立っています。2024年6月のデータによると、経営・管理ビザで在留している外国人のうち、半数以上が中国籍であり、その多くが民泊や小規模飲食店など、初期投資の少ない業態を通じてビザを取得しています。

これにより、制度本来の目的である「日本における健全な事業運営の推進」との乖離が指摘され、国会でも「実質的な移住目的の手段」となっているとの懸念が示されました。結果として、以下のような制度見直しの方向性が出入国在留管理庁により検討されています:

【見直しが検討されている主なポイント】

  1. 資本金の最低額を500万円から1,000万円〜3,000万円程度に引き上げる可能性
  2. 「事業の実態」に対する審査の強化(形だけの登記や名義貸しの排除)
  3. 事業所の実体確認や従業員雇用の実績を重視
  4. 一定期間ごとのフォローアップ調査(更新時の実地確認強化)

たとえば、韓国では起業ビザ取得に約3,000万円の資本金が必要であり、日本も同様の水準へと段階的に近づいていくことが考えられます。これにより、日本で真剣にビジネスを展開しようとする外国人にとっては、資金面での大きなハードルが課されることになります。

私はこれまで、外国人の起業サポートやビザ取得支援を数多く手がけてきました。制度が変更されてからでは間に合わない場合もあるため、以下のような準備を「今のうちに」進めておくことが極めて重要です。

✅ 資本金の調達:ビザ取得後の事業運転資金も含め、最低1,000万円以上を想定した資金計画の策定

✅ 事業計画書の見直し:事業の持続性・収益性・社会的意義を明確に説明できる内容へとブラッシュアップ

✅ 不動産契約:実態ある事業所を確保するための物件選定・契約書類の整備

✅ 従業員採用計画:形式的でない雇用体制の構築と人材採用のスケジュール

✅ タイミングの見極め:制度変更前にビザ申請を完了させるためのスケジューリング

将来的な制度変更は、決して外国人を排除するものではなく、「本気の起業家」と「制度の信頼性維持」の両立を目的としています。しかし、制度の移行期には混乱や審査の厳格化が起こりがちです。だからこそ、早めの準備と専門家の支援が不可欠です。

制度変更に不安を抱えている方、今後の申請の可能性を検討されている方は、ぜひお早めにご相談ください。行政書士として、最適なタイミングと方法でのご支援をお約束いたします。