1. はじめに:大阪・西成の事件をきっかけに

2025年5月、大阪市西成区のカラオケ居酒屋で、在留資格で認められていない労働をベトナム人女性にさせていたとして、ベトナム国籍の経営者が逮捕されました。女性たちは「留学」「家族滞在」の在留資格を持っており、本来なら風俗営業に該当する店舗で働くことはできません。

この事件は、外国人雇用に関する制度理解の不足が招いた典型的な事例です。

2. 留学・家族滞在の在留資格とは?

「留学」や「家族滞在」の在留資格は、原則として就労を目的としたものではありません。留学生がアルバイトをする場合は「資格外活動許可」を得る必要があり、その上で以下のような制限が設けられます:

  • 就労時間:週28時間以内(長期休暇中は1日8時間まで)
  • 許可される職種:風俗営業関連は禁止

「家族滞在」も同様に、許可を得れば就労可能ですが、風俗営業関連は禁止されています。

3. 風俗営業に該当する業務とは?

カラオケ居酒屋といっても、接客内容や営業時間などによっては「風俗営業」と判断されます。風営法では、接待行為(お酒を注ぐ、隣に座る、会話で楽しませる等)を行う店舗は、風俗営業の許可が必要とされます。

今回の事件では、この点が在留資格の制限に明確に反していたと見なされたのです。

4. 雇用主のリスクと責任

外国人本人だけでなく、雇用主側にも重大な責任があります。不法就労助長罪は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されることがあり、法人の場合は社会的信用の喪失や行政処分を受ける可能性もあります。

「在留カードがあるから大丈夫」と思っていると、大きなリスクに繋がります。

5. 雇用前のチェックポイント

外国人を雇用する前に、以下の3点を必ず確認しましょう:

  1. 在留資格の種類と有効期限:就労可能な資格かどうか、カードの記載内容を確認。
  2. 資格外活動許可の有無:許可がなければアルバイトすらできません。
  3. 職種の適合性:その仕事内容が在留資格で認められているか。

6. 雇用後の管理体制も重要

採用後も、定期的に以下を見直しましょう:

  • 労働時間の管理(特に留学生は週28時間)
  • 業務内容の変化がないか
  • 在留資格の更新期限管理

適切な管理体制がなければ、知らずに違反を繰り返すことになりかねません。

7. 本人も知らないことが多い

実際に相談を受けていると、「本人が自分の資格で何ができるか理解していない」というケースは非常に多いです。そのため、企業側がしっかりと説明・確認し、トラブルを未然に防ぐ努力が求められます。

8. 行政書士のサポートが活きる場面

行政書士は以下のような支援が可能です:

  • 在留資格の確認・適正診断
  • 資格外活動許可の申請代行
  • 雇用契約書のチェック
  • 管理体制構築のアドバイス

法令違反を防ぐには、専門家の力を借りるのが最も確実です。

9. 問題を防ぐための社内対策

企業としては、以下のような社内対策を講じることが有効です:

  • 外国人雇用に関する社内研修の実施
  • 雇用時マニュアルの整備
  • 定期的な在留カードチェックの習慣化

小規模な店舗や中小企業でも、仕組みづくり次第で大きなリスクを防げます。

10. まとめ:法令順守が信頼と成長を生む

今回の事件は、在留資格に関するちょっとした無理解が、大きな問題に発展することを教えてくれました。

外国人材と共に働く時代だからこそ、制度を知り、適切に対応することが企業の信頼と持続可能な成長を支えます。

「これって大丈夫かな?」と思ったら、ぜひ行政書士など専門家にご相談ください。

未来のトラブルを、今の一歩で防ぐことができます。