1. はじめに|なぜ今、ベトナム人材の割合に注目すべきなのか
日本では少子高齢化により、深刻な労働力不足が社会問題となっています。
こうした状況に対応するため、2019年4月に導入されたのが「特定技能」制度です。
制度開始から約6年が経ち、対象業種や制度設計も徐々に整備されてきました。
現在では特定技能1号に基づく在留外国人が33万人を超え、企業にとって重要な戦力となっています。
これまでこの制度の中心的な存在だったのが「ベトナム人材」ですが、2025年6月時点でそのシェアが初めて50%を下回りました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/72b60a7650626a4921b1db3056b47daaff75e015
本記事では、特定技能制度の背景とともに、今後の外国人採用におけるキーポイントを解説します。
2. 特定技能制度の現状と背景|増える外国人労働者
「特定技能1号」は、一定の技能と日本語能力を有する外国人が、特定の業種で働くことを認める制度です。
対象となるのは、建設、介護、製造業、農業、外食など16分野。いずれも慢性的な人手不足に悩む業種です。
この制度の特徴は、即戦力として就労できる点と、最長5年間の在留が可能である点にあります。
さらに、配属前に日本語や業務に関する試験に合格する必要があるため、一定の質が担保された人材が集まっています。
2025年6月時点では、特定技能1号の在留者は前年から32%増の33万3,123人に達し、今なお増加傾向にあります。
そのうち約56%が、かつての技能実習制度を修了した人々であり、特定技能制度は技能実習の“次のステップ”とも言える位置づけです。
3. ベトナム人材の比率が減少した理由とは
かつて特定技能と言えば「ベトナム人」という印象が強く、制度初期は全体の60%以上を占めていました。
しかし2025年には44%にまで低下。以下のような理由が背景にあります。
1つは、ベトナム国内の経済成長です。
人件費が上昇しており、日本で働くことの経済的メリットが以前ほどではなくなっています。
また、他国の送り出し機関の質の向上も見逃せません。
日本語教育やマッチング精度が改善され、ベトナム以外の国々も競争力を持ち始めています。
4. 増加するインドネシア・フィリピン・ミャンマー人材
ベトナムのシェア減少と対照的に、他国からの人材が急増しています。
- インドネシア:前年比57%増の約6.9万人
- ミャンマー:前年比87%増の約3.5万人
- フィリピン:前年比28%増の約3.2万人
- ネパール:前年比73%増の約9,000人
これらの国々は、語学教育や送出機関の品質向上に力を入れており、日本企業からの評価も上昇しています。
特にミャンマーは、介護・外食業界を中心に注目が高まっているものの、政情不安から出国制限の影響もあり、他国へ求人が流れるリスクも孕んでいます。
5. 日本企業がとるべき次の一手
これまで「外国人採用=ベトナム」という固定観念が強かった企業にとって、今こそ採用方針の見直しが必要です。
今後は多国籍化に対応するための採用ルートの分散や、国ごとの特性理解がカギを握ります。
例えば、フィリピン人材は英語力が高く接客業に向いていますし、インドネシア人材は製造業での需要が高い傾向にあります。
それぞれの国に合った配置と支援体制を整えることが、長期的な人材活用に繋がります。
6. 「台湾就労」との比較が示す課題
現在、日本と同様にベトナム人材を受け入れている台湾との競争も顕著です。
台湾は語学力を重視せず、実務経験を重視する傾向があるため、準備期間が2〜3カ月と短く、就労のハードルが低いのが特徴です。
一方、日本での特定技能取得には、日本語能力試験をクリアするまでの学習機関として、平均的に9カ月以上の期間を要することもあり、候補者にとっては大きな負担になります。
この差が、日本への応募を敬遠させる要因の一つになっているのです。
7. ベトナム人材の魅力はまだ健在
とはいえ、ベトナム人材が完全に魅力を失ったわけではありません。
以下のような強みは、他国にはない競争優位性と言えるでしょう。
- 親日的で真面目な国民性
- 日本文化への高い適応力
- 政府の送り出しに対する前向きな姿勢
実際、飲食料品製造・工業製品・建設分野では、依然としてベトナム人の比率が50%以上を維持しています。
一定の経験値と信頼が蓄積されているからこそ、今後も重要なパートナーであり続けることは間違いありません。
8. 今後の見通し|育成就労制度の影響も視野に
2027年から導入予定の「育成就労制度」は、現行の技能実習に代わる制度として設計されており、
特定技能との移行がスムーズになるよう制度設計が行われています。
この制度により、特定技能人材の供給源が安定化する可能性がありますが、
現時点では急激な影響は少ないと見られており、当面は現行制度に基づく対応が中心となります。
9. 行政書士の立場から見た在留資格の活用と注意点
特定技能の申請手続きは年々整備が進んでいるものの、国によって必要書類や確認項目が異なるため、実務上の負担は軽視できません。
特に多国籍採用を目指す企業にとっては、以下のような対応が求められます:
- 在留資格変更・更新の適切なスケジューリング
- 各国の送り出し機関とのコミュニケーション支援
- 業種ごとの制度理解と運用サポート
行政書士としては、これらの手続きを企業と外国人の双方に寄り添いながら支援することが可能です。
10. まとめ|外国人雇用に多国籍対応力が求められる時代へ
特定技能制度は、外国人雇用の重要な柱として今後も拡大が見込まれます。
ベトナム人材の割合が減少したことで、採用市場は確実に変化しており、企業には柔軟な対応と戦略的な人材確保が求められています。
今後は、国別の特性や背景を踏まえたうえで、多国籍な人材の受け入れ体制を強化することが競争力につながるでしょう。
外国人採用の戦略や在留資格の手続きでお悩みの方は、ぜひニセコビザ申請サポートセンターまでお気軽にご相談ください。