はじめに:外国人関連予算の倍増が意味するもの
2026年8月26日、法務省が2027年度予算の概算要求を発表しました。その中で特に注目すべきは、外国人の出入国・在留管理関連予算が前年度比約2倍の807億円に増額されるという点です。この大幅な予算増額は、日本政府が外国人材の受入れと共生社会の実現を本格的な国家戦略として位置づけたことを示しています。
本記事では、在日外国人とそのご家族、そして外国人を雇用する企業の経営者・人事担当者の視点から、この予算要求が持つ意味と今後予想される変化について詳しく解説します。
予算増額の全体像:法務省2027年度概算要求
法務省が2027年度予算概算要求で求める総額は9,856億円で、2026年度当初予算から15%の増額となります。この中で外国人の出入国・在留管理関連が807億円と、前年度の約2倍の規模に拡大しました。
この予算配分から読み取れるのは、日本が直面する人口減少と労働力不足という構造的課題に対し、外国人材の戦略的受入れで対応しようとする政府の明確な意志です。
注目すべき3つの重点施策
1. JESTA(電子渡航認証制度)システム開発:263億円
JESTAとは何か
JESTA(ジェスタ)は「Japan Electronic System for Travel Authorization」の略で、外国人の入国可否を事前にオンラインで審査する電子渡航認証制度です。米国のESTAや欧州のETIASと同様の仕組みで、入国前に渡航者の適格性をスクリーニングします。
ビザ申請への影響
このシステム導入により、短期滞在や特定の在留資格での入国手続きが大幅に効率化されると予想されます。従来は空港到着時に行われていた審査の一部が事前にデジタル処理されるため、入国審査の待ち時間短縮やスムーズな入国が期待できます。
企業の採用活動への影響
外国人材を採用する企業にとって、このシステムは採用スケジュールの予測可能性を高めます。事前審査により入国可否が明確になるため、入社時期の調整やオンボーディングの準備が計画的に進められます。特に複数の外国人材を同時期に受け入れる企業にとっては、大きなメリットとなるでしょう。
留意点
JESTA導入に伴い、個人情報の取扱いやプライバシー保護の観点から、新たな申請手続きや情報提供義務が発生する可能性があります。制度の詳細が明らかになり次第、適切な対応準備が必要です。
2. 出入国管理のDX推進:44億円
顔認証ゲートの拡充
すでに主要空港では顔認証ゲートが導入されていますが、さらなる拡充と精度向上に44億円が投じられます。これにより、日本への入出国がより迅速かつ正確に処理されるようになります。
在留外国人にとってのメリット
頻繁に海外出張や一時帰国をする在留外国人にとって、入出国手続きの時間短縮は大きな利便性向上です。特に再入国許可を持つ永住者や長期在留者は、空港での待機時間が削減され、ビジネスやプライベートの移動がよりストレスフリーになります。
デジタル化が進む在留管理
出入国のDX化は、将来的に在留カードのデジタル化や各種申請のオンライン化につながる可能性があります。企業の人事担当者にとっても、外国人従業員の在留資格管理がより効率的になることが期待されます。
3. 日本語・生活学習プログラム開発:155億円
「秩序ある共生社会の実現」への投資
最も注目すべきは、在留外国人の日本語習得と日本社会への適応を支援する「日本語・生活学習プログラム(仮称)」開発に155億円が計上された点です。これは単なる言語教育ではなく、日本の法制度、社会システム、文化への理解を深める包括的なプログラムと見られます。
在留外国人とその家族にとっての意味
日本での生活において、言語の壁は最も大きな課題の一つです。公的な支援プログラムの充実により、日本語学習へのアクセスが改善され、日常生活や職場でのコミュニケーションがスムーズになることが期待されます。
また、家族帯同で来日した配偶者や子どもにとっても、学習機会の拡大は適応を大きく助けるでしょう。
企業にとってのメリット
外国人従業員の日本語能力向上は、企業にとっても大きなメリットです。職場でのコミュニケーションが円滑になり、業務効率が向上します。また、公的プログラムの活用により、企業が独自に行う語学研修のコスト削減も期待できます。
さらに、日本の労働法制や社会保障制度への理解が深まることで、労務管理上のトラブル予防にもつながります。
企業の経営者・人事担当者が今すべきこと
1. 最新の制度変更情報のキャッチアップ体制構築
2027年度に向けて、ビザ制度や在留管理に関する法改正や運用変更が順次行われると予想されます。人事部門に外国人雇用の専任担当者を置く、あるいは専門家との定期的な情報交換体制を構築することが重要です。
2. 外国人材受入れ体制の見直し
JESTA導入やDX推進により、入国手続きは効率化されますが、企業側の受入れ準備も同様に効率化する必要があります。
- 在留資格認定証明書交付申請の電子化対応
- 在留カード情報の適切な管理体制
- 外国人従業員向けオンボーディングプログラムの整備
3. 日本語学習支援の活用
新たに開発される公的な日本語・生活学習プログラムを積極的に活用しましょう。企業独自の研修と組み合わせることで、より効果的な人材育成が可能になります。
4. 共生社会実現への積極的参画
政府が「秩序ある共生社会」を掲げる今、企業も社会的責任として外国人材が働きやすい職場環境づくりに取り組むべきです。
- 多言語対応の社内規程整備
- 異文化理解研修の実施
- メンター制度の導入
- 宗教的配慮や柔軟な休暇制度
在日外国人とそのご家族が知っておくべきこと
1. ビザ申請・在留資格更新の効率化
JESTAシステムやDX推進により、今後ビザ申請や在留資格更新の手続きがオンライン化・効率化されることが予想されます。デジタル申請に備え、必要書類のデジタル化(スキャンやPDF化)を進めておくとスムーズです。
2. 日本語学習機会の拡大
155億円規模の学習プログラムが開発されることで、これまで以上に充実した日本語学習機会が提供されるでしょう。積極的に活用し、日本での生活の質を向上させましょう。
3. 制度理解の重要性
在留資格、社会保障、税制、労働法など、日本の制度は複雑です。新しい学習プログラムを通じて正しい知識を身につけることで、トラブル回避や権利の適切な行使が可能になります。
4. 専門家への相談
ビザ申請や在留資格に関する疑問や不安があれば、早めに専門家に相談することをお勧めします。制度変更期には特に、正確な情報に基づいた判断が重要です。
予想される今後の展開
短期的展開(2026-2027年)
- JESTAシステムの段階的導入開始
- 主要空港での顔認証ゲートのさらなる拡充
- 日本語・生活学習プログラムのパイロット実施
中期的展開(2027年以降)
- オンラインビザ申請システムの本格稼働
- 在留カードのデジタル化
- AI活用による審査プロセスの迅速化
- 全国規模での学習プログラム展開
長期的ビジョン
日本は「選ばれる国」になることを目指しています。外国人材が安心して長期的に働き、生活できる環境整備が進むことで、優秀な人材の獲得競争において日本の競争力が高まるでしょう。
まとめ:変化をチャンスに変える
法務省の2027年度予算概算要求における外国人関連予算の倍増は、日本の外国人受入れ政策が新たなステージに入ったことを示しています。
在日外国人とそのご家族にとっては、より住みやすく、働きやすい日本が実現する大きなチャンスです。新しい制度やプログラムを積極的に活用し、日本での生活をより豊かなものにしていきましょう。
企業の経営者・人事担当者にとっては、外国人材の戦略的活用を進める絶好の機会です。制度変更を先取りし、受入れ体制を整備することで、人材獲得競争における優位性を築くことができます。
私たちは、これからも最新の法改正情報や実務上の留意点について、わかりやすく発信してまいります。ビザ申請、在留資格に関するご相談がありましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。
共に、より良い共生社会の実現を目指しましょう。
参考情報
出典:法務省2027年度概算要求(2024年8月26日発表)
https://news.yahoo.co.jp/articles/b817ae31d316af7892c1c2fb5cf06c85c81dc266
