沖縄県が提案する「週35時間」就労緩和とは?
留学生・企業双方の視点で読み解く外国人材活用の今後
◆はじめに:留学生アルバイトの現状と課題
日本で学ぶ外国人留学生は、学費や生活費をまかなうためにアルバイトをするケースが多くあります。
しかし現在、入管法に基づくルールでは「週28時間以内」という制限が設けられており、それを超える就労は原則として認められていません。
この規制は「学業を阻害しない範囲での就労」を前提としたもので、1日4時間程度の就労が基準とされています。
ところが今、沖縄県を中心に「週35時間まで」の就労緩和を国に提案する動きが進んでいます。
背景には、県内の深刻な人手不足と外国人材の貴重さがあります。
◆沖縄県の提案:週35時間までの就労を可能に?
沖縄県は、国家戦略特区としての規制緩和メニューにおいて、外国人留学生の就労時間制限の緩和を提案。
2023年には「週36時間」、2024年3月には「週35時間」に再提案しています。
この提案は、現行の「1日4時間(週28時間)」という計算基準を「1日5時間(週35時間)」に見直すもので、アルバイトに頼る多くの業界——特に観光業、飲食業、小売業など——にとっては大きな追い風となる可能性があります。
◆国の反応と留学生の学業への影響
一方、国はこの提案に対し慎重な姿勢を崩していません。
2023年12月には、「学業が本来の活動であり、就労はあくまで補助的なものである」として、制限緩和には否定的な見解を示しました。
その理由は、「労働時間の拡大により学業が疎かになるリスク」への懸念です。
特に日本語学校に通う留学生の場合、授業の理解度や習熟度がアルバイトによって影響を受ける可能性があります。
◆沖縄県と企業側の対応策
こうした国の懸念に対し、沖縄県や地元経済団体は留学生の学習支援体制を強化する案を提示しています。
たとえば:
- 日本語学校での習熟度チェックの実施
- 企業側が日本語能力向上の計画を策定・支援
- 学業と就労のバランスを保つスケジュール管理
これらの取り組みは、制度の形骸化を防ぎつつ、より持続可能な外国人材の活用を目指すものです。
◆企業が押さえるべき実務ポイント
今後、就労時間の規制緩和が実現するかどうかは不透明ですが、外国人留学生を雇用する企業にとって以下の点は押さえておくべきです:
- 現行法では「週28時間以内」が原則であり、超過は在留資格取消などのリスクがある
- 労働条件通知書やシフト管理において、時間超過がないよう厳密に管理が必要
- 学業との両立を意識した労働環境づくり(夜勤・長時間労働の回避など)
- 日本語能力の向上を支援する研修やコミュニケーション環境の整備
- 制度変更に備えた最新情報の収集と対応準備
◆行政書士の立場から見える「現場の声」
私たち行政書士には、日々さまざまなご相談が寄せられます。
「優秀な留学生をもっと雇いたいけど、時間制限が厳しい」「規制に違反しないか不安」——こうした声は珍しくありません。
制度と現場のズレが大きくなれば、結果として「無意識の違法就労」や「過剰な負担」にもつながりかねません。
だからこそ、制度改正に備えて準備を進めることが、企業・留学生双方にとって重要なのです。
◆まとめ:今こそ「外国人雇用のルールと可能性」を見直すタイミング
沖縄県の「週35時間」提案は、単なる就労時間の調整にとどまらず、これからの外国人材活用の在り方を問い直す重要な一歩です。
企業としては、制度の動向を注視するとともに、「学業支援と就労支援の両立」ができる環境づくりが求められます。
外国人材の受け入れに関して、疑問や不安がある企業様は、お気軽にご相談ください。
現場に即した、実践的なアドバイスをお届けします。