マイナビグローバルが2025年6月10日に発表した「日本在留外国人の日本での就労意欲・特定技能への意識に関する調査」(調査期間:2025年1月31日~2月19日、対象:日本在留外国人704名/インターネット調査)では、日本での就労意欲や「特定技能」への関心が非常に高い結果が浮かび上がりました。外国人材の積極的な意欲を踏まえ、雇用側の経営者・人事担当者が理解すべきポイントを整理します。
1. 日本で働き続けたい外国人が約9割──強い定着志向
在留資格が切れた後も日本で働き続けたいと回答した外国人は 92.3% にのぼります。そのうち 76.3% が「今後5年以上」日本で就労したいと考えており、短期滞在ではなく、長期的なキャリア志向が顕著です。
企業としては、外国人材を単純労働力としてではなく、継続的な戦力として捉えた採用と支援が求められます。
2. 日本で働きたくない理由──制度整備と待遇改善の余地
約7.7%の人は「日本で働きたくない」理由として以下を挙げています:
- 「円安だから」35.5%
- 「給料が低いから」26.3%
- 「母国で家族と住みたいから」25.0%
特に「円安」や「低賃金」など、収入面での不満が大きく、前年調査と比較すると「他の国の方が稼げるから」が 8.4ポイント増。一方、「長時間労働など働く環境が悪いから」とする回答は 17.8ポイント減少し、環境改善の余地はあるものの、賃金面のインセンティブが依然として重要であることが示唆されます。
3. 「特定技能」への認知・理解が大幅上昇──特に技能実習生で
特定技能を「知っている」と答えた在留外国人は 94.8% に達し、昨年比で「よく理解している」と回答した割合が 12.2ポイント増。特に技能実習生層では 20.7ポイント の上昇が見られ、認知拡大と情報伝達が進んでいます。
企業としては、入管制度や制度変更に関する最新情報を共有し、安心して特定技能へ移行できる体制づくりが必要です。
4. 「特定技能1号」で働きたい意欲が急上昇──強い志向を示す者が増加
特定技能以外(留学生・技能実習生・技人国併せて)の中で「特定技能1号で働きたい」とする人は 69.4% に達し、そのうち「強く働きたい」と回答した割合が前年比 18.1ポイント増。在留資格別の詳細では、
- 留学生:13.6ポイント増
- 技能実習生:11.0ポイント増
- 技人国:14.6ポイント増
と、どの資格区分でも強い志向が顕著です。
5. 志望理由は「手続きしやすい」「給料が高い」「勤務地・転職の自由度」
「なぜ特定技能1号で働きたいのか?」という問いでは、前年よりも以下の回答が増加しました:
- 「在留資格を取りやすいから」:+7.3ポイント
- 「給料が高いイメージがあるから/手取りが上がるから」:+6.9ポイント
- 「希望の勤務地で働けるから」:+5.0ポイント
- 「転職できるから」:+3.5ポイント
技能実習には少ない、勤務地選択や転職の自由などキャリアの柔軟性が外国人材に浸透しつつあることがうかがえます。企業はこれらニーズを意識した雇用条件設計が求められます。
6. 「特定技能2号」への移行意欲も急伸
特定技能2号を知っている回答者のうち、84.0% が「2号で働きたい」と回答し、その中で「強く働きたい」が前年比 7.9ポイント増。在留資格別に見ると、次のような伸びがありました:
- 留学生:「強く考えている」23.4ポイント増
- 技人国:「強く考えている」22.1ポイント増
さらに、留学生層では「全く考えていない」が 16.1ポイント減少し、志向が顕著に変化しています。
7. 特定技能で働く理由──業界志向・2号への期待
特定技能資格をもつ外国人にその理由を尋ねたところ、
- 「業界・職種に魅力を感じるから」39.2%
- 「特定技能2号へ移行し長く働けるから」31.4%
と、業務内容や将来展望への意識がうかがえます。特に、2号への移行可能性が選択を後押ししていると言えるでしょう。
🔧 企業に求められる具体的対応策
1. 給与・待遇の見直し
調査では「円安」「低賃金」が離脱理由の上位に挙がっており、「他国と比べて日本の方が稼げる」という魅力づけが急務です。為替リスクを踏まえた手取り増や定期的な見直し制度の導入を検討すべきです。
2. 情報提供と手続き支援の強化
特定技能制度に対する外国人材の理解度は増しているものの、企業側のフォローが重要です。就労後のキャリアパスや制度活用(1号→2号移行)についてのLP・説明会・個別面談等を通じて、不安を払拭し安心感を与えましょう。
3. キャリア志向を捉えた人材戦略
「勤務地選び」「転職自由」といったキャリア柔軟性への期待は高く、技能実習以上の自由度が志向の理由となっています。部署異動・ジョブローテーション・他社とのパートナーシップなど、キャリアパスを描ける体制の整備が有効です。
4. 業務魅力と業界訴求戦略
特定技能1号取得者の 39% は「業界・職種そのものに魅力を感じている」と回答しました。業務内容の魅力を明示した採用広報、OJTの工夫、専門性向上のための教育訓練など、業務そのものがキャリアの原動力になるよう設計すべきです。
5. 長期定着の支援体制
「5年以上働きたい」と答えた外国人が約76%に及ぶ中、長期的な定着支援は不可欠です。ライフプラン相談、家族帯同支援、住居・生活支援、コミュニティ形成など、会社・地域ぐるみで取り組む必要があります。
最後に:採用・定着のカギは“共創パートナー”としての視点
調査から見えるのは、日本で働きたい強い意欲と、制度・待遇への合理的な要望です。企業は単に人手補充としてではなく、強い意欲を持つ外国人材と中長期的に「共に働き、成長するパートナー」として向き合う姿勢が重要です。
特定技能への移行支援、給与・待遇の充実、キャリアの自由度、将来設計の支援を通じて、外国人材が「ここで働いてよかった」と思える環境を目指すことが、中長期的な人材確保の鍵となるでしょう。