はじめに

2026年7月28日、愛媛県宇和島市の水産養殖会社で、外国人技能実習生を対象にした津波避難訓練が実施されました。この訓練には、ネパールやインドネシア出身の実習生ら約40名が参加し、大津波警報を想定した避難経路の確認が行われました。

訓練を主催した宇和島警察署は、外国人技能実習生を雇用する企業の防災意識を高めることを目的に、こうした取り組みを推進しています。参加した外国人スタッフからは、「日本は地震や津波が多くて怖い。訓練があってとても助かる」との声が聞かれました。

この事例は、外国人を雇用する企業が直面する重要な課題を浮き彫りにしています。それは、「外国人スタッフの安全をどう守るか」という問題です。

本記事では、外国人雇用における防災対策の重要性、企業が果たすべき責任、そしてビザ申請・在留資格管理との関係について、行政書士の視点から詳しく解説します。


1. なぜ外国人スタッフに防災対策が必要なのか?

1-1. 地震・津波の経験がない外国人が多い

日本で働く外国人の多くは、地震や津波の経験がほとんどない国から来ています。例えば、ネパール、インドネシア、フィリピン、ベトナムなどでは、地震が発生する頻度が日本ほど高くありません。

そのため、緊急地震速報の音を聞いても「何が起きているのか」を理解できず、適切な行動がとれないケースが少なくありません。また、「津波」という概念そのものを知らない人も多く、海沿いで働く外国人スタッフにとっては命に関わる問題となります。

1-2. 言葉の壁が避難を妨げる

災害時、日本語での指示や放送が理解できないことは、外国人にとって致命的です。避難所の場所、避難経路、避難のタイミングなど、すべてが日本語で伝えられることが多いため、情報が届かないまま取り残されるリスクがあります。

1-3. 企業の「安全配慮義務」

労働契約法第5条では、企業は労働者の安全に配慮する義務を負うとされています。これは日本人・外国人を問わず適用されます。万が一、災害時に外国人スタッフが避難できずに被害を受けた場合、企業の責任が問われる可能性があります。


2. 在留資格申請・ビザ管理と防災対策の関係

2-1. 入管当局が見る「受入企業の適正性」

外国人を雇用する企業が在留資格(ビザ)の申請や更新を行う際、入管当局は「受入企業が適正な環境を提供できているか」を審査します。

審査のポイントには以下が含まれます。

  • 労働条件(賃金、労働時間、休日など)
  • 住居環境
  • 生活支援体制
  • 安全管理体制

このうち「安全管理体制」には、労働災害の防止だけでなく、自然災害への備えも含まれます。防災訓練の実施記録や、多言語での避難マニュアルの整備などは、企業の適正性を示す重要な証拠となります。

2-2. 技能実習・特定技能における監理団体・登録支援機関の役割

技能実習制度や特定技能制度では、監理団体や登録支援機関が外国人の生活支援を行うことが義務付けられています。その中には、「災害時の対応」も含まれます。

企業単独での対応が難しい場合でも、こうした機関と連携して防災対策を実施することが求められます。


3. 企業が取り組むべき具体的な防災対策

3-1. 定期的な防災訓練の実施

宇和島の事例のように、定期的に避難訓練を実施することが重要です。訓練は、以下のポイントを押さえて行いましょう。

  • 多言語での説明: 日本語だけでなく、英語や母国語での説明を用意する
  • 実際に避難経路を歩く: 避難場所までの距離や時間を体感させる
  • 夜間・休日の訓練: 勤務時間外に災害が発生した場合を想定する

3-2. 多言語での防災マニュアル作成

避難場所、避難経路、緊急連絡先などを記載した防災マニュアルを、外国人スタッフの母国語で作成しましょう。視覚的にわかりやすいイラストや地図を多用することも効果的です。

3-3. 緊急時の連絡体制整備

災害時に誰がどのように外国人スタッフに連絡するか、事前に体制を整えておくことが重要です。LINEやWhatsAppなど、外国人が日常的に使うツールを活用するのも一案です。

3-4. 地域との連携

地域の防災訓練や避難所運営訓練に外国人スタッフを参加させることで、地域住民との顔の見える関係を築くことができます。これは、災害時の相互支援にもつながります。


4. 防災対策がもたらす企業へのメリット

4-1. 外国人スタッフの定着率向上

「この会社は自分たちの安全を真剣に考えてくれている」という信頼感は、外国人スタッフの満足度を高め、離職率の低下につながります。

4-2. 企業イメージの向上

防災対策に積極的な企業は、社会的にも評価されます。採用活動や取引先との関係においても、プラスの影響をもたらします。

4-3. 在留資格申請・更新のスムーズ化

防災訓練の実施記録や多言語マニュアルの整備は、入管当局への申請時に「適正な受入体制」を証明する資料として活用できます。


5. 行政書士ができるサポート

外国人雇用における防災対策は、ビザ申請・在留資格管理と密接に関わっています。当事務所では、以下のようなサポートを提供しています。

  • 在留資格申請・更新のサポート: 防災対策の記録を含めた申請書類の作成
  • 受入体制整備のアドバイス: 企業が取り組むべき防災対策の具体的な提案
  • 多言語マニュアル作成の支援: 外国人スタッフが理解しやすい防災マニュアルの作成支援
  • 監理団体・登録支援機関との連携: 効果的な防災対策の実施に向けた調整

まとめ

宇和島市で実施された外国人技能実習生向けの津波避難訓練は、外国人雇用企業が取り組むべき防災対策の重要性を改めて示す事例でした。

防災対策は、単なる法令遵守にとどまりません。それは、外国人スタッフの命を守り、企業としての信頼を築き、在留資格管理の質を高めるための重要な取り組みです。

あなたの会社では、外国人スタッフの安全対策、できていますか?

もし不安や疑問があれば、ぜひ専門家にご相談ください。私たちは、外国人雇用に関するあらゆる課題を、法的な正確性と実務的な視点からサポートします。

参考記事:
https://news.yahoo.co.jp/articles/d7108e54be0a4c8666bf516ef7fee844fa0e09a7


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