1. はじめに:四日市市で起きた画期的な出来事
2025年10月、三重県四日市市で、外国籍の住民6名が「消防団員」として正式に辞令を受けました。
これは県内初の試みであり、外国人住民が地域防災の最前線に立つという、非常に意義深い取り組みです。
地域社会で進む多文化共生と、防災力の強化がリンクしたこの事例は、単なる「多様性推進」にとどまらず、実効性ある地域づくりのモデルとして注目されています。
https://article.yahoo.co.jp/detail/f05874ab2393cfef719dc86a06bbe881d7228ed5
2. 背景:なぜ外国人消防団員が求められているのか?
現在、四日市市には1万3600人を超える外国人住民が暮らしており、その数は年々増加傾向にあります。
しかし、言語や文化の違いから、災害時に行政の情報が伝わらなかったり、避難が遅れたりするリスクが指摘されています。
外国人にとって「日本の災害」は、予測不能で理解しにくいもの。こうした状況下で、情報伝達や避難行動のサポートができる人材が強く求められていました。
3. 外国人防災リーダーから消防団員へ
今回消防団員に任命された6名は、これまで「四日市市外国人防災リーダーズ」としてボランティア活動を行ってきた方々。
出身はペルー、中国、ベトナム、ブラジルと多国籍で、なかには4か国語を話せる人もいます。
彼らは日本で10年以上生活しており、地域との信頼関係も構築済み。通訳や生活支援の経験も豊富で、まさに地域防災の“即戦力”とも言える存在です。
4. 消防団での役割と期待される効果
新たに任命された彼らは「機能別団員訓練指導班」に所属し、救命講習や避難訓練などの実務にも関わります。
これは単なる名誉職ではなく、日本人住民と外国人住民の“架け橋”となる実動部隊としての役割です。
同じ言語・文化背景を持つリーダーがいることで、外国人住民の防災意識は確実に高まります。
5. 情報伝達の課題とSNS時代の防災
防災リーダーのひとり、マリアさん(ペルー出身)は「SNSにはデマや誤情報が多く、正しい情報を自分が届けたい」と語っています。
災害時、多くの外国人がTwitterやFacebook、母国のSNSを通じて情報を得ていますが、そこには必ずしも信頼性の高い情報があるわけではありません。
だからこそ、行政と直接つながり、正確な情報をいち早く自国語で届ける存在は非常に重要です。
6. 企業が学ぶべき視点:職場内防災と多言語対応
外国人を雇用する企業にとって、地域だけでなく職場内での防災対応も大きな課題です。
・避難経路や非常連絡網の多言語化
・外国人社員を含めた避難訓練の実施
・災害時に安心して行動できる体制づくり
これらの取り組みは、外国人社員の安心感を高め、ひいては定着率の向上にもつながります。
7. 行政書士として見た「地域活動」の在留資格への影響
消防団や防災リーダーとしての活動が、直接的に在留資格の更新や変更に影響することはありません。
しかし、永住申請や定住申請においては、こうした「地域貢献活動」はプラス材料として評価される可能性があります。
社会とのつながりを持っていることは、いわば“日本社会に溶け込んでいる証”になるのです。
8. 企業が取り組むべき「地域とのつながり」
外国人社員が地域のボランティアや防災活動に参加できるよう後押しすることは、企業の社会的信頼性を高めるうえでも有効です。
たとえば、地域の防災訓練に社員を送り出す、社内で多言語講習を実施するなど、企業としての“地域貢献の形”が見えると、社外への印象も大きく変わります。
9. 多文化共生時代の新しい防災のかたち
日本の防災は、行政による「公助」だけでなく、地域や個人の「共助」が基本です。
この「共助」の中に外国人住民が加わることで、初めて真の多文化共生が実現されるのではないでしょうか。
外国人が“守られる側”から“守る側”になることで、地域の信頼関係も深まり、災害に強い街づくりへとつながります。
10. まとめ:外国人雇用は“防災”も視野に
外国人を雇用するということは、その人の生活全体をサポートするという視点も必要です。
その中には、災害時の安全・安心も当然含まれます。
企業経営者や人事担当者の皆さまにとって、今回の四日市市の取り組みは、「防災×外国人雇用×地域連携」という未来へのヒントになるはずです。
外国人社員の声に耳を傾け、地域との接点を意識することで、企業もまた一歩先の多文化共生に近づけるのではないでしょうか。