■はじめに

外国人労働者の受け入れが進む日本において、在留資格の取得をめぐる不正が問題となっています。2025年6月、介護職に就くための日本語試験において「替え玉受験」を仲介したとして、ベトナム国籍の25歳の男性が逮捕されました。この記事では、事件の概要を踏まえながら、企業側が注意すべきポイントと行政書士の視点からの対応策をご紹介します。

■事件の概要

大阪市で行われた「介護日本語評価試験」において、出願者とは別の人物が試験を受ける「替え玉受験」が行われていたことが発覚。仲介役を担っていた容疑者はSNSを通じて依頼者を募り、報酬として数万円から十数万円を得ていたとみられます。過去には他人の在留カードを使った不正受験で有罪判決が出た例もあり、問題は根深いものとなっています。

■在留資格と日本語試験の関係

特定技能や技能実習制度を含む多くの在留資格では、一定の日本語能力の証明が必要とされます。特に介護分野では「介護日本語評価試験」や「国際交流基金日本語基礎テスト」などの合格が求められます。日本語力の証明は、就労の可否に直結するため、不正の温床となりやすいのです。

■不正が生まれる背景

こうした不正の背景には、次のような要因が考えられます。

・在留資格取得のハードルの高さ ・制度の複雑さと情報不足 ・ブローカーやSNSによる甘い誘い ・経済的なプレッシャー

外国人本人だけでなく、仲介業者、さらには企業側にも知らぬ間に関わってしまう可能性があるのがこの問題の怖さです。

■企業が取るべき初期対応

外国人を採用する企業は、以下の点に留意すべきです。

  1. 在留資格とその取得プロセスの確認
  2. 日本語試験の受験履歴や合否証明の真偽確認
  3. 独自の日本語スキルチェック(簡易面談など)
  4. 不審な点があれば速やかに専門家に相談

特に「うちは試験結果を見ただけで信じていた」という対応では、不正があった際に企業責任を問われるリスクがあります。

■行政書士として提案する具体策

行政書士の立場から、企業に提案したい実践的な対策は以下の通りです。

● 採用時の在留カードチェック:顔写真や記載内容に不一致がないかを丁寧に確認。

● 書類の出所確認:合格証明書や試験成績表などの原本確認を徹底。

● 社内教育の実施:人事担当者向けに在留資格や試験制度についての勉強会を開催。

● 定期的な専門家との連携:行政書士や社会保険労務士と顧問契約を結ぶなどして、随時チェック体制を強化。

● 支援制度の導入:外国人社員に対して日本語学習支援を行い、試験合格を正当な手段で目指せるようにする。

■まとめ

外国人材の受け入れは企業にとって大きな力となる一方で、不正に巻き込まれるリスクもあります。特に在留資格や日本語試験に関連する部分は、企業の信頼性を大きく左右しかねません。

行政書士として、私は制度の壁を正しく理解し、企業と外国人の橋渡しをすることを使命としています。今回の事件を他人事とせず、今一度社内体制や採用フローを見直してみてはいかがでしょうか?

万一、不安な点や確認したい点があれば、どうぞお気軽にご相談ください。