■ はじめに:調査結果が示す社会の変化
東京大学社会科学研究所が2026年に実施したパネル調査で、外国人の日本定住をさらに受け入れることに反対する人が前回調査より20.7ポイント増加し、56.3%に達したことが明らかになりました。特に注目すべきは、若い世代で増加幅が大きかったという点です。また、「日本社会には希望がない」という認識を持つ人ほど、外国人受け入れに反対する傾向が見られました。
この調査結果は、ビザ申請や在留資格申請の実務に携わる私たちにとって、非常に重要な意味を持ちます。なぜなら、社会全体の受け入れ意識は、在日外国人の方々の日常生活や、外国人を雇用する企業の経営判断に直接的・間接的な影響を及ぼすからです。
■ 外国人受け入れ反対意識の増加背景
調査を実施した研究所の教授は、増加要因について「外国人の受け入れに関するネガティブな議論に触れる機会が増え、社会に対する不安や不満に後押しされる形で反対意識が強まったのではないか」と分析しています。
この指摘は非常に重要です。外国人受け入れに対する反対意識は、必ずしも外国人そのものへの反感から生まれているのではなく、日本社会全体が抱える閉塞感、将来への不安、経済的な不安定さなどが背景にあると考えられるのです。
特に若い世代で反対意識が高まっている点は、雇用不安、所得格差、社会保障への不信などが複合的に影響している可能性があります。こうした不安が、「外国人が増えることで自分たちの仕事が奪われる」「社会保障が圧迫される」といった懸念につながっているのかもしれません。
■ ビザ申請・在留資格の現場で見る実態
しかし、ビザ申請や在留資格申請の実務に携わる立場から見ると、現実はより複雑で、かつポジティブな側面も多くあります。
まず、多くの企業が深刻な人手不足に直面しており、外国人材なくしては事業継続が困難な状況にあります。製造業、建設業、介護・医療、IT、サービス業など、幅広い業種で外国人材が不可欠な戦力となっています。
また、在日外国人の方々の多くは、日本の法令を遵守し、地域社会に溶け込み、日本人と同様に税金や社会保険料を納め、社会に貢献しています。彼らは決して「社会保障にただ乗りする存在」ではなく、日本経済と地域コミュニティを支える重要なメンバーなのです。
さらに、適切な在留資格を持ち、正規のルートで滞在している外国人の方々は、日本の法制度を理解し、それに従う意識が高い傾向にあります。適切なビザ申請手続きを経ることは、単なる法的手続きではなく、日本社会への誠実な姿勢の表れでもあります。
■ 企業の人事担当者が知っておくべきこと
外国人を雇用する企業の経営者や人事担当者にとって、今回の調査結果は、外国人雇用に対する社会の目がより厳しくなる可能性を示唆しています。だからこそ、以下の点を徹底することが、これまで以上に重要になります。
1. 適切なビザ・在留資格の取得と管理
外国人を雇用する際には、その業務内容に適した在留資格を取得することが法律で義務付けられています。例えば、単純労働は「技術・人文知識・国際業務」ビザでは認められません。不適切な在留資格での雇用は、企業にとっても外国人本人にとってもリスクとなります。
2. 労働条件の適正化
外国人だからといって、日本人より低い賃金や劣悪な労働環境で雇用することは違法です。同一労働同一賃金の原則を守り、適切な労働環境を提供することが、企業の社会的責任であり、優秀な外国人材を確保する条件でもあります。
3. コンプライアンス体制の整備
在留資格の更新手続き、在留カードの確認、雇用時・離職時の届出など、外国人雇用には様々な法的義務があります。これらを適切に履行することで、企業は社会からの信頼を得ることができます。
4. 文化的配慮とコミュニケーション
言語や文化の違いに配慮したコミュニケーション、職場環境の整備も重要です。これは人道的な配慮であるだけでなく、外国人材の能力を最大限に引き出すための投資でもあります。
■ 在日外国人とその家族へのメッセージ
在日外国人の方々とそのご家族にとって、社会の受け入れ意識の変化は不安の種かもしれません。しかし、だからこそ以下の点を大切にしていただきたいと思います。
1. 在留資格の適切な維持
在留資格の更新を怠ったり、在留資格外の活動を行ったりすることは、オーバーステイや不法就労につながり、最悪の場合は強制退去の対象となります。在留資格を適切に維持することが、日本での安定した生活の基盤です。
2. 日本の法令・ルールの理解と遵守
日本の法律、社会ルール、地域の慣習を理解し、尊重することが、地域社会との良好な関係を築く第一歩です。
3. 専門家への相談
在留資格に関する疑問や問題が生じた場合は、早めに専門家に相談することが重要です。問題が大きくなってからでは、解決が困難になることもあります。
4. 積極的なコミュニケーション
言語の壁はありますが、積極的にコミュニケーションを取ろうとする姿勢は、必ず周囲に伝わります。地域のイベントへの参加、日本語学習への取り組みなども、相互理解を深める機会となります。
■ 専門家の役割:橋渡しとしてのビザ申請サポート
ビザ申請や在留資格申請の専門家として、私たちの役割は単なる書類作成代行ではありません。企業と外国人材、そして日本社会全体をつなぐ「橋渡し役」としての役割を担っていると考えています。
具体的には:
- 企業に対して、適法で適切な外国人雇用のあり方を助言すること
- 外国人の方々に、日本の法制度や社会ルールを分かりやすく説明すること
- 複雑な手続きをスムーズに進め、企業・外国人双方の負担を軽減すること
- 変化する法制度や社会状況について、正確な情報を提供すること
今回の調査結果が示すような社会意識の変化があるからこそ、こうした専門家の役割はより重要になっていると感じています。
■ これからの共生社会に向けて
外国人受け入れに対する反対意識の高まりは、確かに懸念すべき傾向です。しかし、それは外国人そのものが問題なのではなく、日本社会全体が抱える不安や課題の表れでもあります。
大切なのは、感情的な反発や根拠のない不安に流されるのではなく、正確な情報に基づいて冷静に考えることです。適切な在留資格管理、法令遵守、相互理解の努力があれば、外国人材の受け入れは、企業にとっても、外国人本人にとっても、そして日本社会にとっても、プラスの成果をもたらすことができます。
私たち専門家は、そのための正確な情報提供と丁寧なサポートを続けていきます。ビザ申請や在留資格に関するご相談がありましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。一人ひとりの状況に合わせた、最適なソリューションをご提案いたします。
共生社会の実現は、一朝一夕には成し遂げられません。しかし、企業、外国人、専門家、そして地域社会が協力し、小さな信頼を積み重ねていくことで、誰もが安心して暮らせる社会に近づいていけるはずです。
参考記事: https://news.yahoo.co.jp/articles/42f5acdad36e6820df296a49ffe6263ecaa43cd7
