はじめに:事件の概要と雇用現場への影響

2025年5月、福岡県直方市に住むインドネシア国籍の介護士の男性(26歳)が、無免許運転および偽造免許証提示の容疑で逮捕されました。

男は、自損事故をきっかけに警察官から免許証の提示を求められ、偽造された運転免許証を提示。しかし、照会の結果「存在しない免許番号」であることが判明し、後日逮捕に至ったと報道されています。

外国人材を雇用する企業にとって、今回の事件は「信頼していたはずの従業員が、実は違法な状態だった」可能性に直面した瞬間でもあります。今回はこの事例をもとに、企業側がとるべき実務的な対応・予防策を詳しく解説します。


1. 外国人従業員と「運転免許」の関係

  • 外国人が日本で車を運転するには、「日本の運転免許証」が必要です。原則としては、次の2通りの方法で取得・運転が可能です。

1)国外免許からの切替(例:インドネシアの免許→日本での切替申請)
2)日本国内で運転免許試験を受け、取得する

  • 偽造免許証を所持・提示する行為は、「有印公文書偽造等」に該当し、刑事罰の対象となります。

2. なぜ偽造に至ったのか?背景と構造的課題

外国人従業員が無免許や偽造に至る背景には、以下のような構造的課題が考えられます。

  • 日本語が読めず、免許取得に困難を感じる
  • 職場での期待に応えたい一心で「車が必要」と判断
  • 不正業者やSNS等で偽造免許が安易に入手できてしまう環境
  • 法制度に関する十分な周知不足

企業側がこれらの背景を「知らなかった」では済まされません。
採用時や業務中の管理体制が不十分であった場合、結果として「企業の管理責任」が問われかねません。


3. 企業が取るべき7つの具体的対策

対策内容
1. 免許証の原本確認と照会提出書類のコピー保管だけでなく、原本の目視確認+番号照会を実施(警察への照会は不可だが、様式と番号形式の整合性でチェック可能)
2. 外国免許からの切替支援必要に応じて、翻訳文取得・公安委員会での手続き支援を行う体制を構築
3. 免許取得状況の明文化雇用契約書や業務委託契約書に「運転業務を行う際の免許保持義務」などを明記
4. 定期的な書類再確認免許証・在留カード・住民票などの情報を半年〜1年ごとに更新確認
5. 啓発研修の実施「偽造書類を提示した場合の法的リスク」について外国人向けに多言語で研修
6. 信頼できる通訳・相談員の配置不安や誤解がある場合に気軽に相談できる窓口の整備
7. 行政書士・社労士等の外部連携体制問題発生時にすぐ対応できるよう、信頼できる専門家と顧問契約または相談ルートを用意

4. 違反時の企業リスク

  • 信用失墜:報道により企業名が明るみに出ると、社会的信用が大きく損なわれます
  • 損害賠償・雇用責任:無免許運転による事故で損害が発生した場合、雇用側が責任を問われる可能性も
  • 監督署・行政対応:労基署・入管・警察などの調査対象になるリスクも存在

5. 今日からできる3つのアクション

  • ✅ 「運転業務を行っている外国人社員」のリストアップ
  • ✅ 全員の免許証の原本を再確認し、様式・番号の整合性を確認
  • ✅ 啓発資料の作成・研修スケジュールの見直しを開始

まとめ

今回の事件は、「善意の労働者」が重大な違法行為に手を染めてしまうリスクが、外国人雇用の現場に存在することを示しています。
企業としての法令順守体制は、外国人材との信頼構築に直結します。

「知らなかった」では済まされない時代。だからこそ、「今できること」から始めてみませんか?

外国人雇用に関する制度相談、書類確認体制の構築支援など、お気軽にご相談ください。行政書士として、現場と制度の間をつなぐ実務的なサポートを行っています。