はじめに

2025年9月、埼玉県本庄市で、ベトナム国籍の介護士が医師法違反で逮捕されるという事件が発生しました。この介護士は、医師免許を持たずに妊娠中の女性に対して採血を行い、出生前検査を実施していたとされています。

この事件の背景には、「母国で医療行為の経験があれば、日本でも同じことができる」という大きな誤解がありました。逮捕された方は、「ベトナムにいたころは採血や点滴をやっていた。日本でもやっていいと思っていた」と供述しています。

しかし、日本で医療行為を行うためには、在留資格「医療」の取得と日本の国家資格の保有が必須です。この記事では、在留資格「医療」の要件、母国資格との違い、そして在日外国人の方や外国人を雇用する企業が注意すべきポイントについて詳しく解説します。

在留資格「医療」とは何か?

在留資格「医療」とは、日本において医療行為に従事する外国人に対して与えられる在留資格です。この在留資格がなければ、たとえ母国で医師や看護師として働いていた経験があっても、日本国内で医療行為を行うことはできません。

在留資格「医療」の対象となる職種

在留資格「医療」の対象となる主な職種は以下の通りです:

  • 医師
  • 歯科医師
  • 薬剤師
  • 保健師
  • 助産師
  • 看護師
  • 准看護師
  • 歯科衛生士
  • 診療放射線技師
  • 理学療法士
  • 作業療法士
  • 視能訓練士
  • 臨床工学技士
  • 義肢装具士

これらの職種に共通するのは、すべて日本の国家資格を必要とするという点です。

在留資格「医療」取得の要件

在留資格「医療」を取得するためには、以下の要件を満たす必要があります。

1. 日本の国家資格の保有

最も重要な要件は、日本の医療系国家資格を保有していることです。母国で医師免許や看護師免許を持っていても、日本の国家資格がなければ在留資格「医療」は取得できません。

2. 医療機関等との雇用契約

日本国内の病院、診療所、介護施設などの医療機関と雇用契約を結んでいることが必要です。

3. 日本人と同等以上の報酬

報酬額が日本人の医療従事者と同等以上であることが求められます。これは、外国人労働者の権利を守るための規定です。

なぜ母国の医療資格だけではダメなのか?

今回の事件で逮捕された方は、「ベトナムで採血や点滴をやっていた」という経験がありました。しかし、それでも日本で医療行為を行うことは違法とされました。その理由を詳しく見ていきましょう。

1. 医療制度の違い

各国の医療制度、医療水準、医療技術の基準は異なります。日本の医療制度は非常に厳格で、医療行為を行うためには国が認定した国家資格が必須です。

2. 法律上の規定

日本の医師法、保健師助産師看護師法などの法律では、無資格者による医療行為を厳しく禁じています。これは患者の安全を守るための重要な規定です。

3. 言語と文化の違い

医療現場では、患者とのコミュニケーションが極めて重要です。日本語での正確な意思疎通ができない場合、患者の命に関わる重大な事故につながる可能性があります。

4. 医療過誤のリスク

母国での医療基準と日本の医療基準が異なる場合、無資格者による医療行為は医療過誤を引き起こすリスクが高まります。

在日外国人が日本で医療従事者として働くには

母国で医師や看護師として働いていた外国人の方が、日本で同じ職種に就くためには、以下のステップを踏む必要があります。

ステップ1:日本の国家試験の受験資格を確認

まず、自分が日本の医療系国家試験を受験できるかどうかを確認します。国家試験の受験には、一定の学歴や実務経験が必要な場合があります。

ステップ2:必要な教育・研修を受ける

受験資格を得るために、日本の医療系教育機関で必要な教育や研修を受けることが求められる場合があります。

ステップ3:国家試験に合格

日本語で実施される国家試験に合格する必要があります。医療系の国家試験は専門用語が多く、高度な日本語能力が求められます。

ステップ4:在留資格「医療」を申請

国家資格を取得し、医療機関との雇用契約が決まったら、在留資格「医療」を申請します。

介護と医療の違いに注意

今回逮捕された方は介護士として働いていましたが、介護士の業務範囲と医療行為は明確に区別されています。

介護士ができること

  • 日常生活の支援(食事、入浴、排泄の介助)
  • 生活環境の整備
  • レクリエーション活動の支援

介護士ができないこと(医療行為)

  • 採血
  • 注射
  • 点滴
  • 創傷処置
  • 診断
  • 処方

介護の現場では、たとえ母国で医療従事者だった方でも、日本の医療資格がなければ医療行為を行ってはいけません。

外国人を雇用する企業が注意すべきポイント

外国人スタッフを雇用する企業、特に医療・介護分野の企業は、以下の点に注意する必要があります。

1. 在留資格の確認

採用時に、その外国人が保有している在留資格で従事予定の業務が可能かどうかを必ず確認してください。在留資格と実際の業務内容が一致していない場合、不法就労となります。

2. 資格の確認

医療行為を伴う業務に従事させる場合は、日本の国家資格を保有しているかを確認してください。母国の資格だけでは不十分です。

3. 業務範囲の明確化

外国人スタッフに対して、どこまでの業務が許可されているのかを明確に伝え、医療行為を行わないよう徹底してください。

4. 定期的な研修

日本の法律や規則について、定期的に研修を実施し、外国人スタッフの理解を深めることが重要です。

5. 在留資格の更新管理

在留資格には期限があります。更新手続きを怠ると、不法滞在となってしまうため、期限管理を徹底してください。

「知らなかった」では済まされない法律違反

今回の事件で逮捕された方は、「日本でもやっていいと思っていた」と供述していますが、法律違反は「知らなかった」では免責されません。

医師法違反の罰則

医師法違反の場合、以下の罰則が科される可能性があります:

  • 3年以下の懲役または100万円以下の罰金
  • 在留資格の取消
  • 強制退去
  • 再入国の拒否

企業側の責任

外国人スタッフが違法行為を行った場合、雇用していた企業も責任を問われる可能性があります。特に、企業が違法行為を黙認していた場合や、適切な管理を怠っていた場合は、より重い責任が問われます。

適切な相談先を持つことの重要性

在留資格やビザ申請は複雑で、専門的な知識が必要です。「インターネットで調べた」「友人に聞いた」という曖昧な情報だけで判断すると、今回のような法律違反につながる可能性があります。

行政書士に相談するメリット

ビザ申請や在留資格の専門家である行政書士に相談することで、以下のメリットがあります:

  • 個別の状況に応じた正確なアドバイス
  • 必要書類の準備サポート
  • 申請手続きの代行
  • 法改正や最新情報の提供
  • トラブル発生時の迅速な対応

早めの相談が重要

在留資格の問題は、「後で何とかなる」というものではありません。問題が発覚してからでは手遅れになることもあります。少しでも不安や疑問がある場合は、早めに専門家に相談することをおすすめします。

まとめ

今回のニュースから学ぶべき重要なポイントは以下の通りです:

  1. 日本で医療行為を行うには、在留資格「医療」と日本の国家資格が必須
  2. 母国での経験や資格だけでは、日本で医療行為はできない
  3. 介護士と医療従事者の業務範囲は明確に区別されている
  4. 「知らなかった」では法律違反は免責されない
  5. 企業は外国人スタッフの在留資格と資格を厳格に確認する義務がある
  6. 不明点は専門家に相談することが重要

在日外国人の方が日本で安心して働き、企業が適切に外国人材を活用するためには、日本の法律や制度を正しく理解することが不可欠です。

ビザ申請や在留資格についてお困りの際は、専門の行政書士にご相談ください。適切なアドバイスとサポートで、皆さまの日本でのキャリアや事業をサポートいたします。

📰 参照記事: https://news.yahoo.co.jp/articles/a1a1e3bbb9b03064e9e280def9881d977d7eb24e